迎えた全日本大学選手権(インカレ)最終日。早大は舵手付きフォアの順位決定戦と4種目の決勝に臨んだ。下級生クルーの舵手付きフォアがまず5~8位を決める順位決定戦に臨んだ。スタートから飛び出すと、他艇の追随を許さず、1着でフィニッシュ。総合5…

 迎えた全日本大学選手権(インカレ)最終日。早大は舵手付きフォアの順位決定戦と4種目の決勝に臨んだ。下級生クルーの舵手付きフォアがまず5~8位を決める順位決定戦に臨んだ。スタートから飛び出すと、他艇の追随を許さず、1着でフィニッシュ。総合5位に入り、早大に勢いをもたらすとともに、1年生が多いこのクルーだが、まだ慣れないスイープ種目で健闘したことは今後にも期待が持てる結果となった。

 最初の決勝種目である舵手なしペアが悲願の優勝を果たした。予選ではスタートから飛ばしすぎ、後半に失速してしまった反省を生かし、序盤は立命大に先行を許す。しかし、想定内であったこの展開に焦ることなく、コンスタントで艇を伸ばして先頭に立つ。ラストは富山国際大の猛追を受けるも退け、見事金メダルを勝ち取った。昨年のインカレではともにメダルに届かなかった三浦彩朱佳(文3=青森)と尾嶋歩美(スポ3=埼玉・南稜)の二人。「同期が金メダルを取っているのを見てすごく悔しかった」(三浦)と、悔しさを力に変え、栄光をつかんだ。


悲願のインカレ初優勝を果たした舵手なしペア

 続いて登場したのはシングルスカルの松井友理乃(スポ3=愛媛・今治西)だ。U23日本代表に選出された経験もある高島(明大)にスタートから大きくリードを奪われる。松井は2番手でレースを進める。ラストは菅沼(龍谷大)の迫られるものの、振り切り、銀メダルに輝いた。早大がメダルラッシュを見せる中、出漕したダブルスカル。「絶対に弥桜さん(木下弥桜女子主将、スポ4=和歌山北)の首にメダルをかけたい」(宇都宮沙紀、商3=愛媛・今治西)と意気込んで臨んだ決勝だったが、序盤から他艇に後れを取る厳しい展開に。得意のラストスパートで粘りを見せたものの、メダル獲得にはわずかに及ばず。表彰台に上ることはかなわなかったが、実力のある他大学相手に善戦し、「自分たちとしてはいいレースができた」(木下)と前向きにレースを振り返った。

 そして最後に、女子の花形種目・舵手付きクォドルプルで早大が決勝に挑んだ。スタートに強い中大にリードされるが、コンスタントで追い抜くことに成功。その後は着実に差を広げると、1着でゴールに飛び込み、昨年に引き続き学生の頂点に立った。また、この種目での優勝により、早大は2年連続となる総合優勝をつかんだ。「総合優勝のためにもクォドルプルで優勝して、引退する先輩方に花道をつくりたい」(奈良岡寛子、教3=青森)という事前の言葉どおり、4年生の引退に花を添える結果となった。


連覇を達成した舵手付きクォドルプル

 全てのクルーが表彰台に上るという目標こそ達成できなかったものの、それぞれのクルーがベストを尽くし、「みんなで勝ち取った総合優勝だと感じている」と木下はインカレを振り返った。早慶レガッタでは節目となる30連覇を達成したが、5月の全日本選手権ではメダルなしに終わった女子部。その悔しさをインカレにぶつけ、早稲女の強さを示す結果で現体制を終えた。「来年も総合優勝を果たし三連覇を達成したい」(三浦)。これからも躍動し続けるであろう『女王早稲田』に注目だ。


2年連続となる総合優勝を果たした女子部

(記事 加藤千咲、写真 平林幹太、石井尚紀、小松純也)

結果

【総合】

14点 優勝

【順位決定戦】

【舵手付きフォア】

C:勝又真央(スポ1=東京・小松川)
S:中尾咲月(スポ1=三重・津)
3:大崎未稀(スポ2=福井・美方)
2:茂内さくら(社1=秋田)
B:髙田涼花(社1=静岡・浜松西)
7分43秒18 【1着 総合5位】

【決勝】

【舵手なしペア】

S:三浦彩朱佳(文3=青森)
B:尾嶋歩美(スポ3=埼玉・南稜)

8分13秒07 【1着 総合1位】

【シングルスカル】

松井友理乃(スポ3=愛媛・今治西)

8分28秒14 【2着 総合2位】

【ダブルスカル】

S:宇都宮沙紀(商3=愛媛・今治西)
B:木下弥桜女子主将(スポ4=和歌山北)

7分28秒77 【4着 総合4位】

【舵手付きクォドルプル】

C:奈良岡寛子(教3=青森)
S:安井咲智(スポ3=東京・小松川)
3:南菜月女子副将(教4=新潟南)
2:宇野聡恵(スポ2=大分・日田)
B:藤田彩也香(スポ3=東京・小松川)

6分54秒52 【1着 総合1位】






コメント

【ダブルスカル】

B:木下弥桜女子主将(スポ4=和歌山北)

――まず個人として、4位で終えたきょうのレースを振り返っていただけますか

予選から、首位の立教大とは10秒、2位の富山国際大とは5秒以上離されたうえでの決勝となりました。ですが予選からの課題を準決勝、決勝とクリアして漕ぎを改善して立教大との差を10秒からの4秒に縮めることができ、他校との差も縮められたので自分たちとしてはいいレースができたと思っています。

――大学生としての最後のレースとなったと思うのですが、ゴールした瞬間はどのようなことを感じましたか

終わったなあと思いました(笑)。

――今大会のインタビューの際、木下選手のために頑張りたいと話してくれていたペアの宇都宮沙紀選手(商3=愛媛・今治西)には何かかけたい言葉はありますか

終わってからのミーティングでも言ったのですが、二人で漕いできた練習や今回のレースで、悔しさもあったと思うのですが彼女自身の課題や改善すべきところも見えたと思うのでそれをしっかり次に生かしてほしいと思います。またここまで連れてきてくれてありがとうという感謝の気持ちも伝えたいです。

――今度は女子の主将として、女子総合優勝という形で終わった今回の大会を振り返っていただけますか

女子の本当の目標は総合優勝するために舵手付きクォドルプル優勝、ほか一種目優勝、そのほかの全ての種目で表彰台というものでした。ダブルスカルと舵手付きフォアで表彰台に上がれずその全てを達成することはできなかったのですが、上がれなかった2つのクルーもベストを尽くした上での結果だったと思うので、みんなで勝ち取った総合優勝だと感じています。

――これまでのボート人生を振り返っていかがですか

中学校から10年間漕艇をやってきたのですが、ほとんどがしんどいことばかりでした。ですが今終わってみて、ここまでボートを続けていなかったら味わえていなかった感情があり、出会えていなかった人も多くいたのだろうと感じています。色々なものを自分の中に吸収できた10年間だったという実感が大きいです。現役として練習をしている中ではしんどいことばかりで、大学1年生の時に優勝して以来ずっと優勝もできませんでした。結果の出ない期間が長く、苦しくてつらかったですが、最後に全てを出しきることができたのでよかったと思います。

――同期や後輩に伝えたいことがあればお願いします

ボートが好きで、ボートで勝つことを目標にしてやっている部員がほとんどだと思います。4年間は本当につらく、辞めたくなることもあると思うのですが、自分のやりたいことをしっかりとやりきって終わることが一番いいことかなと思います。後輩たちは本当に意識が高い選手が多いので言わなくてもやってくれるとは思うのですが、自分の軸をもって、目標を見据えてやってほしいなと思います。

【舵手付きクォドルプル】

3:南菜月女子副将(教4=新潟南)

――最終種目の舵手付きクォドルプルで優勝し、2年連続の総合優勝も達成しました

うれしいというのが率直な感想です。自分がインカレの決勝に残って表彰台に上るのが初めてでしたし、総合優勝をする代もあって、その時はうれしいはずなのに素直に喜ぶことができない自分もいて、そういう苦しい時期もあったんですけど、最後は自分もしっかりと優勝ができて総合優勝も成し遂げられて、心からうれしいといのがあります。

――他のクルーが表彰台に上っていましたが、プレッシャーは感じていましたか

プレッシャーというより、むしろうれしかったです。後輩たちが優勝をしたりした姿に勇気づけられて、自分たちも喜びを分かち合えるようになりたいという気持ちになりましたし、力になりました。

――Facebookの引退ブログには、「対校艇に乗ることは自分でさえ想像していませんでした」というお言葉がありました

引退ブログで今までの四年間を振り返った時に、入学した頃には絶対にこのクォドに乗れるというのは想像ができなくて、今よりも小柄だったので、小艇とかで戦う選手になるのかなと勝手に思っていたんですけど、最後4年目でやっと凡人の自分でもしっかりと対校艇に乗れたということがうれしかったですし、頼もしい後輩がいてくれたおかげで、きょうこの最高の舞台にいけたので思い入れも深いです。

――南選手以外は後輩の選手でしたが、どのようなことを意識されていましか

最上級生でクルーキャップはやっていたんですけど、今までで一番クルーキャプテンらしくないことばかりだったなというのはありました。でも自分がボート競技をやっている中で、練習から楽しいクルーは絶対に勝つというのはすごく感じていて、そういったクルーメークをしたいと思った時に、変に上から縛り付けるよりは、みんながイキイキとできるようなクルーメークをした方がいいんじゃないかという考えになりました。みんなにどんどん意見を聞いて、場合によっては後輩たちがまとめるようなかたちにはなっていたんですけど、それは今のクルーに合っていたので良かったと思います。

――3日目のインタビューでS:安井咲智選手(スポ3=東京・小松川)が「スタートは中大が速い」と仰っていました。決勝で中大がスタートから出てきたことは想定内でしたか

想定はしていて、出てくるから私たちが先に出るというプランだったんですけど、それが思うようにはまらなかったので若干焦りました。

――コンスタントで抜くことができた要因はどのような点ですか

コックスの寛子(奈良岡、教3=青森)だったり、バウの藤田(彩也香、スポ3=東京・小松川)が中央との距離感やクルーの様子を適宜伝えてくれて、中央もコンスタントで結構へばっていく様子がうかがえたので、これは自分たちのコンスタントの強みを生かすことができれば追い付けるのではないかなと思って、そこで一気に突き放せました。

――早大で過ごした四年間はどのような時間でしたか

本当にきょうここまでくることができたというのが奇跡かなと思っています。ブログにも書いた通り、何回も辞めようかなと思っていたんですけど、最後の最後に日本一になれましたし、きょうここまでボートと向き合ってきた中でいろいろな人の支えがあったり、自分もどんどん成長することができたりして、そういう楽しさの方が今は上回っています。四年間、早稲田のボート部で過ごせて良かったなと心から思います。

――早慶レガッタやインカレで連覇を目指す後輩の皆さんにはどのようなことを伝えたいですか

早慶戦に関しては、インカレよりも連覇が続いている分、何かよく分からない別のプレッシャーがかかってくると思うんですけど、それに負けずにしっかりと準備を重ねて、8人のクルーでしっかりと切磋琢磨(せっさたくま)し合って、最高の仕上がりを見せてほしいなと思います。インカレに関しては、今年のようにこの人が秀でているといった選手がいない中で、みんなが自覚を持って一人一人が勝ちにいくという気持ちを持って臨んでいくためには、女子部全体としての一体感が必要になってくると思うので、もちろん個人として成長するのもそうなんですけど、仲間を大切にしてほしいなと思います。

――同期の木下弥桜女子主将(スポ4=和歌山北)と鈴木美和マネジャー(商4=長野日大)に対してはどのような思いがありますか

弥桜に関しては、本当にずっと一緒にいて、数少ない漕手としての同期だったので、一緒に練習をしたり、過ごすことが多い中で、2年生から3年生の間に部からいなくなってしまった時に、自分は生きた心地がしなかったというか、なんのために部活をしているんだろうと思い悩んで、彼女の存在は大きかったなと思っていたので、帰ってきてうれしかったですし、最後までやり切れたのはうれしいです。美和ちゃんに関しては、マネジャーという違うポジションではあったんですけど、明るいキャラクターなので、いろいろあったことを彼女に話したりして、自分も発散したりすることがありました。そういうたくさん、気楽に喋ってくれるような存在がいたから、ちょっと落ち込んでいるときでも、なんでこんなことで落ち込んでいるんだろうと思って、前向きになれたり、切り替えられたりしたことは良かったなと思います。彼女も悩んでいる時期もあったと思うんですけど、四年間ずっと一緒にやってこれたのは良かったです。

――国体ではどちらの種目に出場されますか

シングルスカルに出ます。

――調整方法も変わってきますか

そうですね。確かに4人乗りになれてしまっているので、1人乗りの感覚に戻すというのはあると思うんですけど、やっぱり今乗っているメンバーで得たことはすごく大きくて、4年生ながら勉強になることがあったので、それを生かして自分の競技人生をしっかりとやり切りたいです。

※表彰式後インタビューより抜粋

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください

うれしいの一言に尽きるかなと思います。クルーを組んで2ヵ月という短い期間だったんですけど、最初から漕ぎがあっていて、合宿や練習を積んで一体感や統一感が出てきたので、自分はこの日まで勝つことしか想像できないくらい頼もしいクルーで、このクルーで漕げて本当に幸せです。

――応援してくれたみなさんに一言お願いします

自分たちがやりたいことをやらせてもらえるのはOBOGのみなさんをはじめ、多くの人に支えてもらっているおかげだと感じております。優勝というかたちで少しでも恩返しができたらなと思っていますが、これからも早稲女として女王の座を守り続けていきたいと思いますので、今後もよろしくお願いします。

【舵手なしペア】

S:三浦彩朱佳(文3=青森)

――きょうのレースプランを教えていただけますか

きょうは逆風が吹いていたのでスタートは抑えて飛ばしすぎず、後半に向けて徐々にペースを上げていくというプランでした。実際のレースも目標としていたプラン通り、予選以上に後半のペースを上げることができました。

――では序盤に立命館大に前に出られたのも想定内でしたか

はい。前に出られるのは想定内でした。そのような状況を想像して練習もしていたので、練習が生きたかなと思います。

――終盤には富山国際大の追い上げがありましたが、追いかけられる中ではどんなことを考えていましたか

とにかく優勝したいという思いが強く、優勝することしか頭にありませんでした。そのため富山国際大が追い上げてきているのは分かったのですが、自分たちの漕ぎに集中しようという気持ちだけでした。

――予選のレースから改善できたのはどんな部分ですか

予選では序盤からハイペースで入りすぎてしまい、後半に失速してしまいましたがそこを改善できました。またボートの進む方向から、リズムよく水をもってくるように漕ぐということを予選に比べてできたかなと思います。

――女子は総合優勝を果たしましたが、4日間チームの雰囲気はいかがでしたか

自分たちのクルーはこの大会に向けてやるべきことをやってきた実感があったので落ち着いて予選から漕いでくることができたのですが、ほかのクルーも同じように自信をもって臨んでいる印象を受けました。そのため女子全体としていい雰囲気で最終日までくることができたと思います。

――引退する4年生への思いや、かけたい言葉があればお願いします

先輩の背中を追ってここまでやってきました。下級生たちの指標となり、さらに成績でもすごさを見せてくださったことに感謝の気持ちがあります。自分自身も下級生にそう思わせることができる先輩になれるように頑張ります、と伝えたいです。

――大学でボート競技に取り組むのは残り1年となりました。今後の意気込みや目標を聞かせていただけますか

今回優勝することができたのですが、ここがゴールではないと思います。来年も必ず優勝、かつ女子の総合優勝を果たし三連覇を達成したいです。そのために日々の練習を積み重ねていきます。

三浦彩朱佳(文3=青森)・尾嶋歩美(スポ3=埼玉・南稜)※表彰式後インタビューより抜粋

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください

尾嶋 昨年は二人で悔し涙を流して、「絶対来年(今年)は金メダルを取ろう」と二人で誓いあっていたので、有言実行できてとてもうれしいです。

三浦 私もバウの尾嶋と一緒で、1、2年生はずっと悔し涙を流してきて、同期が金メダルを取っているのを見てすごく悔しくて、やっと今年自分が金メダルを取れて今すごいうれしいです。

――決勝レースの運びはいかがでしたか

尾嶋 前半から焦らずに自分たちのレースをすることはできたと思います。後半、少し詰められた部分もあったんですけど、最後まで絶対勝ちたいという気持ちで漕ぎ切れました。

三浦 初めは抑え目で、出られてもいいからコンスタントで伸ばしていこうことだったので、そのレース展開がしっかりできてよかったです。

――優勝までどんな苦労がありましたか

尾嶋 練習はうまくいかない時も多々あったんですけど、この大会で金メダルを取るということをずっと二人で心に置きながら練習してきたので、最後まで頑張れました。

三浦 戸田ボートコースは藻がすごくて、引っかかってまっすぐ進まないことがあって苦労したんですけど、最終的にはいいかたちで終えることができてよかったなと思います。