売り子デビューは「台風の日」 びしょ濡れで売上げ30杯でも辞めなかったのは…  ロッテは今季も、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。現在は、厳選メンバー5人が、ハイレベルな決勝ラウンドで白…

売り子デビューは「台風の日」 びしょ濡れで売上げ30杯でも辞めなかったのは…

 ロッテは今季も、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。現在は、厳選メンバー5人が、ハイレベルな決勝ラウンドで白熱したを繰り広げている。

 昨年はドリンクメニュー(ソフトドリンクも含む)の立ち売り販売をする売り子経験5年以内のメンバーが参加対象となったが、2年目の今年はハンデをつける形で売り子経験年数に関わらず参加が可能となった。勤続年数に応じて、日々の売上げ杯数にボーナスを加算。1年目は1日の売上杯数の150%、2年目は140%、3年目は130%、4年目は120%で、5年目以上はボーナスなしとなり、ソフトドリンク・日本酒の売上げは勤続年数に関わらず200%に設定された。

 さらに、月ごとの売上杯数1位の売り子が、9月からの決勝ラウンドに進出する新方式を採用。昨年の88名から一気に110名までアップした参加者の中から、各月の頂点に立った精鋭5人が9月1日から新たな戦いに臨んでいる。「Full-Count」では決勝ラウンドに進出した5人に直撃インタビューし、売り子という仕事に対する思いや情熱を語ってもらった。

 第1回は8月チャンピオンの、ななさん(アサヒビール)だ。

「野球が好きなのと、人と接するのも好きなので」と、昨年の8月初旬から売り子を始めた。働き始めてまだ約1年ながら、決勝ラウンドに進出した実力の持ち主。しかし、初日は順調なスタートではなかったという。

「台風の日でお客様も少なくて、雨に濡れてびしょびしょになりながら、3時間、4時間でやっと30杯でした」

 それでも売り子を辞めなかったのには理由がある。地元・千葉県の出身で、高校時代は野球部のマネージャー。子供の頃から家族と一緒に何度もマリンスタジアムを訪れた。両親が笑顔の売り子から飲み物を買う様子を見ながら、「野球を観るだけじゃなくて、売り子さんの接し方ひとつで観戦しに来ている人たちの気持ちがより高まるんだな」と密かな憧れを抱いていた。

 マネージャー経験もあり、「体力には自信がある方。売り子も大丈夫だろうなと思っていた」と高を括っていたが、ビール樽の重さは約20キロ。これを背負ったまま、5、6時間も客席の階段を上り下りする重労働は想像以上で「やっぱり売り子のほうが大変でした」と苦笑いする。最初はこまめに挟んだ休憩も、今では体力がついて減ってきた。それに合わせて、売上げも徐々にアップ。ビール半額デーには1日で487杯を売上げ、決勝ラウンド初日だった9月1日には過去最高となる351杯を記録した。

2軍戦も観戦する筋金入りのロッテファン 接客中にファンから「あれ? 君、このあいだ…」

「休みの日は2軍の試合を観に行ったり、ロッテのビジターゲームを観に行っています」と話すほどのマリーンズファン。ロッテ浦和球場だけではなく、日本ハムの鎌ケ谷スタジアムにも足を運ぶ。溢れるマリーンズ愛をファンが見逃すはずもない。接客中のスタンドで「あれ? 君、このあいだ2軍の試合に来てたよね?」と声を掛けられ、ビールを買ってもらえたこともあるという。

 好きな選手は岡大海外野手。昨年、ななさんより数日早い7月26日に日本ハムからトレード移籍してきた。「ここぞという時に見せてくれるホームランだったり、ロッテが負けている時でも最後まで粘り強くプレーしているところ」に惹かれた。

 8月に3640杯(ハンデつき5096杯)で優勝し、決勝ラウンド進出の最後の1枠を勝ち取った。決勝ラウンドを戦う5人の中では一番経験が浅い。先輩たちよりも常連の数も少ないため、「誰よりも歩くこと、誰よりも笑顔」をモットーに接客をしている。

「視野を広げてお客様が手を挙げていることに気付かないことがないようにということ、きちんと目を見て接客をするということは、特に意識しています。最後までお客様の目を見て接することは一番大切にしています」

 そんな細やかな接客は、ファンにもしっかり伝わっている。「ななちゃんの笑顔がすごく素敵だから、また買いたくなった」「今まで野球観戦だけを楽しみにマリンスタジアムに来ていたけど、ななちゃんと接することでもっと楽しくなった」といった声が届き、「やり甲斐を感じました。大変さをはねのけてくれます」と満面の笑みだ。

 所属するアサヒビールには、売り子アイドル「カンパイガールズ」として活躍し、現在は台湾プロ野球ラミゴ・モンキーズの公式チアガール「LamiGirls」のメンバーとしても活動する今井さやかさんがいる。誰もが認める“レジェンド”だが気さくな先輩で、入りたての頃には売り子のイロハを優しく教えてもらった。そんな先輩の姿に感化され、「さやかさんみたいな、みんなに愛される売り子になるのが目標です」と話す。

 現在、開催中の決勝ラウンドでは「断然ビリはちょっと恥ずかしいなと思うので、競ってビリか4位タイくらいに入れればいいなと思います」の言葉とは裏腹に、密かな“野望”も抱いている。

「できることなら、さやかさんと一緒に頑張れたらいいなと思います。さやかさんの次に、1位と2位で来られたらうれしいなと思っています」

 目指すは憧れのレジェンドとのワンツーフィニッシュ。「9月も一生懸命、笑顔で最後まで頑張ります」と、クライマックスシリーズ出場を目指すチームとともに突っ走る。(Full-Count編集部)