今夏の移籍マーケットで最大のトピックスとなったネイマールのバルセロナ復帰騒動は、パリ・サンジェルマン(PSG)残留…
今夏の移籍マーケットで最大のトピックスとなったネイマールのバルセロナ復帰騒動は、パリ・サンジェルマン(PSG)残留という大方の予想を覆す格好で幕を閉じた。だが、フランス国内では、まだその騒動が収まりそうな気配はない。

ネイマールの希望は叶わず、バルセロナへの復帰はご破算となった
2億2000万ユーロ(約262億円)という法外な移籍金によって三顧の礼で迎えられ、これまで特別待遇を受けてきたにもかかわらず、自ら移籍希望を申し出たのだから当然だ。ネイマールのPSGに対する裏切り行為を、クラブ首脳陣やサポーターがすぐに忘れることはないだろう。
しかも当の本人は、バルサ移籍を断念するやいなや、逆風が吹き荒れるパリから逃げるようにマイアミに直行し、ブラジル代表のカナリア色のユニフォームを着てコロンビア戦に出場。5月11日のアンジェ戦以来の実戦復帰を果たすと、1ゴール1アシストの活躍を見せたのだから、もはやパリジャンの怒りが収まるはずもない。
果たして、ネイマールとパリの関係は修復可能なのか? ネイマール残留が決まった今、最大の焦点はそこになる。
問題解決に向けた最大の懸念は、今回の騒動が白日の下にさらされてしまっていることだ。
これにより、バルサ復帰をあきらめてPSGに残る意志を固めたネイマールにとっても、結果的に選手の希望を叶えなかったことでヒール役の印象がつきまとうクラブにとっても、イメージ挽回は容易ではなくなった。
まず、強い逆風にさらされながらのプレーを強いられるネイマールが心配だ。
その移籍金は異常だとしても、プレーヤーとしてのネイマールは、少なくともピッチの上ではクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシという2大スターの後継者にふさわしい、傑出した才能の持ち主であることは誰もが認めるところ。
PSGでは2年連続でシーズンの約半分しか稼働していないにせよ、公式戦58試合で51得点を記録。とくにチャンピオンズリーグ(CL)王者リバプールをホームで撃破した昨年11月28日の試合では、PSGが悲願達成の切り札を手にするために、清水の舞台から飛び降りたことを納得させるだけの輝きを放ち、特別なプレーヤーであることをあらためて証明してみせた。
にもかかわらず、ネイマールがメディアやサポーターから愛されないのは、ピッチ外での子どもじみた振る舞いや、わがままな行動に多くの原因がある。
今回の移籍騒動がネイマール本人の希望に始まったことが報道された時、意外にも周囲の反応は冷たかった。そこからは、「去る者は追わず」というよりも、「わがままなスターに振り回されるのはもう御免」という本音が透けて見えた。
実際、本拠地パルク・デ・プランスで行なわれたリーグ開幕戦では、スタンドにもいないネイマールを罵るチャントがスタジアムに響き、「ネイマールは出て行け!」と書かれたバナーも掲げられた。
愛するクラブを軽く見るかのような自分本位の言動を続けるスター選手に対し、もうとっくに堪忍袋の緒が切れているゴール裏サポーターとネイマールの関係は、もはや修復不可能なレベルにある。
おそらく、トーマス・トゥヘル監督やチームメイトは残留を歓迎してくれるだろうが、憎悪に満ちたサポーターたちはそうはいかないだろう。大ブーイングでネイマールを迎えることは必至で、ネイマールもそれを覚悟のうえでピッチに立たなければならない。
そんな状況のなか、果たしてネイマールは何のために戦うのか――。自分のためか、クラブのためか、チームメイトのためか、それともファンのためか?
本音は別として、少なくともファンのために戦う姿勢を見せ続けることが、関係修復の唯一の解決策になるはずだ。
そして、クラブ側のネイマールの扱い方も重要になる。
これまでのような特別待遇を続けるようであれば、ネイマールとファンの関係悪化に拍車がかかる。従って、ネイマールも他の選手と同じであることを強い姿勢で示し続け、ファンがネイマールをサポートしたくなるような環境作りを行なう必要がある。それこそが、クラブのプライドを保ち、下がったイメージを回復する近道となるだろう。
ネイマール移籍騒動に揺れた8月のPSGは、昨シーズン開幕から見せていた野心が失われ、ただうまい選手たちがプレーしているだけの”志の低いチーム”に成り下がっていた。細かな戦術を突き詰めるサッカーを標榜するトゥヘル監督も、騒動に揺れるなかでチームをコントロールできず、チーム作りを中断させているかのようにも見えた。
「彼も自分が犯した過ちは理解しているはず。今シーズン、PSGは50周年を迎えるが、彼がその記念すべきシーズンをすばらしいものにしてくれると思う」
スタッフと選手の架け橋となるキャプテンのチアゴ・シウバは、そのように語って同胞の弟分に助け舟を出した。かつてブラジル人天国だったPSGも、気づけばマルキーニョスを含めてわずか3人に減ってしまっただけに、彼らふたりがネイマール復帰のキーパーソンになるはずだ。
おそらく、ネイマールが再びパルク・デ・プランスのピッチに立つのは、9月14日のストラスブール戦になる。
本当の意味で今シーズンのPSGの船出となるこの試合は、ネイマールの振る舞いやゴール裏サポーターたちの反応を含め、いろいろな意味で注目を集める試合になるだろう。