女性審判員の佐藤加奈さん、過去に女子アジア杯とW杯で世界大会を経験

「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」を戦っていた日本人は野球日本代表「侍ジャパン」だけではなかった。女性審判員の佐藤加奈さんも韓国・機張現代車ドリームボールパークの舞台に立った。5日には日本-カナダが行われた裏で中国ースペイン戦の主審、決勝の米国-台湾戦でも左翼の線審を務めた佐藤さん。今大会で約10試合、ジャッジした。佐藤さんにとって3度目の国際大会で、初めての男子の大会だ。

“決勝の舞台”に佐藤さんは立っていた。8日夜、米国-台湾の頂点を決める戦いで線審を務めた。日本の女性審判員として、輝かしい足跡だ。これまで“出場”した国際大会は2017年に香港で行われた女子野球のアジアカップ、2018年に米国・フロリダで行われた女子野球W杯の2回。初めて裁く男子の野球は迫力が違うようだ。

「海外の選手は18歳と思えないくらい体も大きいですし、プレーだけでなく、言葉の迫力も違います。言語がわからない中、『なんで今のがストライクなんだ!』みたいな感じで言われると自信がなくなってしまう瞬間もありますね」

 佐藤さんの本職は中学校の教員。特別に許可を得て、今、韓国での国際大会をジャッジしている。学生時代は日体大の野球部でもプレー。夏の高校野球の大阪大会で初の女性審判を務め、阪神大学野球リーグでも試合を裁いた実績がある。それでも、まだ慣れない世界大会。心が折れそうになっても、ぶれないポリシーがある。

「アジア審判長の小山さんと出会い、私の人生は変わりました。大きなチャンスを与えてくださり、前回の女子野球ワールドカップに参加することができました。また、私をこの大会に推薦してくれたのは(主催のWBSCの)ガス審判長なのですが、その方から『Have Fun』(楽しめ)と言われています。ナーバスになっていると、メールや言葉でそう言ってくださいます。それだけでなく、今日のこのジャッジが良かった、改善した方がいいなど、試合後に指摘もしてくださるので、その期待に応えたいという思いがあります。私は一人じゃないって思えるんです」

「『そういえば、今日の審判、女性だったな』と気づかないような試合になれば一番」

 昨年の女子野球のW杯のジャッジを高く評価してくれた審判長が主催のWBSCに推薦し、佐藤さんの今大会の参加が決まった。これまでの経験を信じて、見たものをしっかり、公平に裁いていくと決めている。

「選手たちがグラウンドに立った時、『なんだ、女性審判か……』と見られているなと思う時があるんです。でも、終わった時に『そういえば、今日の審判、女性だったな』と気づかないような試合になることが私にとって一番いい。威厳を持って、毅然とした態度で公平にジャッジしていきます」

 佐々木朗希投手や奥川恭伸投手ら、日本代表の注目度は高かったが、試合を裁くこともなければ、スケジュール的にも試合をゆっくり見ることもできない。もっぱら、宿舎に戻り、翌日の準備をしながら公式YouTubeチャンネルで観戦していたという。

「日本の高校生たちにはフェアプレーの精神を忘れずに野球をやってほしいと思います。日本の野球は世界ランキングが上位。他の国から見られている部分も多いと思います。自分も日の丸を背負っているつもりで頑張りますし、女性でもこういう仕事ができるんだって思ってもらえるとうれしいです」

 夢はプレミア12やWBCの舞台に立つこと。まだまだ、挑戦は続いていく。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)