写真:中国卓球はなぜ強いのか、石田眞行(石田卓球クラブ)編/画像:ラリーズ編集部

「なぜ中国は卓球が強いのか?」

そんな卓球の原点とも言える質問を専門家たちにぶつけ、中国超えのヒントを得ようという本企画。

第3回となる今回は、岸川聖也や早田ひなら、世界で活躍するトップアスリートを育成してきた名指導者、石田卓球クラブ代表の石田眞行氏(66)に中国卓球の強さについて伺った。




写真:石田卓球クラブ出身の早田ひな(日本生命)/撮影:ラリーズ編集部

現在、小学生以下から高校生まで幅広いカテゴリでジュニア世代の育成に注力する同氏は中国をどう見るのか?

中国は“別格”

――石田さんは長年、小学生以下から高校生まで幅広いカテゴリで卓球アスリートを育成されてきました。指導者の目から見て、どうして中国は強いのでしょうか?
石田眞行氏(以下、石田):「どうやったら日本は中国に勝てるか」という話は指導者の間でも良く話してきました。

ただ中国は“別格”です。

スポット的に勝つことはある。でも年齢別のカテゴリを作ってきちんと強化して、仕組みで勝てるようにするには100年かかる。

20年前ぐらいからそんな話をしています。

――中国のどのような点が日本と違うのでしょうか?
石田:ナショナルチームの監督は元世界チャンピオンで2ヶ国語が話せる。国でも省でも年齢のカテゴリ毎で組織的に強化がされている。ナショナルチームのスタッフは専従だし、仕組みが出来ているんですね。日本は未だに母体と兼任のスタッフが多いですから。

特に印象的なのは20年前ぐらい、鄧亜萍(デンヤーピン。’92バルセロナ五輪、’96アトランタ五輪で単複連覇)が活躍していた頃は、中国は年齢で区切ってふるいをかけていた。




写真:鄧亜萍/提供:ロイター・アフロ

イメージ的には14歳で1000人の全国選手の中から100人に絞る。汚いフォーム、弱い奴もいっぱいいたけど、ここで脱落するわけです。

そして17歳ではその100人の中でも80人は「お前はもう卓球やめて背が高いからバレーボールに行け。お前は卓球じゃなくて勉強しろ」という時代でした。

でも今は変わってきている。

――中国にどのような変化が?
石田:世界チャンピオンの年齢を見て下さい。馬龍(マロン)は30。(石田氏の教え子の岸川)聖也と同級生でしょ。丁寧(ディンニン)は28歳。この時点で今の中国はおかしい。

2人を追い越す選手が出てきていないということで、中国も相当危機感があるはずですよ。




写真:世界チャンピオンの馬龍(中国)/撮影:ラリーズ編集部

――中国の若手が育っていないということでしょうか、その原因は?
石田:やっぱり国民が裕福になったからでしょう。裕福になると卓球で勝たなくても食える。

昔は世界チャンピオンになれば、すごい生活が出来るし、テレビにも出るし、タレントにもなれる。中国の卓球のチャンピオンは日本でいう長嶋、王のような存在だったんですよね。

日本が中国を倒すには?

――日本にとってはチャンスということでしょうか?
石田:今がチャンスで、卓球にお金が集まっている時期だからこそ育成の仕組みを作らないといけません。日本はクラブや学校など母体が中心の強化ですが、その指導者のレベルも上がってきていて、世界の技術を勉強して、練習している。

転換点は17年前。(岸川)聖也が14歳の頃、日本にマリオ(アミズィッチ氏・クロアチア)が来て、一緒に世界を周った。




写真:左からマリオ・アミズィッチ氏、水谷隼、岸川聖也/提供:アフロ

当時は日本チャンピオンでもラリーとフットワークと切り返しの練習ばかり。世界が当たり前に使っていたストップやブロックやカウンターが出来なかった。

聖也がそれを覚えたらすぐに国内で勝てるようになって、国内でもそういう技術が広まっていった。それまで「攻めるだけ」だった日本の卓球が変わっていった。マリオが流れを変えましたね。そして宮崎さん(義仁 日本卓球協会 強化本部長)がその流れを引き継いで、更に日本代表が強くなった。

――さらに強くして中国を倒すには?
石田:日本でも卓球のチャンピオンになれば将来が約束されるという風になれば、もっと強くなると思いますよ。

例えばうちのクラブに関しても、まだ月謝何千円が高いと感じて入らない親もいる。これがその結果、一生食えるようになるのであれば変わるでしょう。

あとはやっぱり青森山田があった時はカデット(中学生)の強化がとてもうまくいっていた。(愛工大)名電、野田(学園)、うち(石田卓球クラブ、中間東中)も頑張っているけど、山田のレベルには達していない。

今は卓球に対して、世の中の関心が向いていてお金がある時期。東京五輪が終わってもいい流れが続くように、今、日本ならでは強化システムを作らないと。

文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)