文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

ロースコアの展開で大苦戦、最後に勝敗を分けたのは……

NBAを見ると、レギュラーシーズンとプレーオフではどのチームもプレースタイルがガラリと変わる。ディフェンスが強調され、相手のプレーを研究し、相手のゲームプランを上回る策の多さとその遂行力が問われる。その結果、ハイスコアリングゲームが激減し、一つひとつのプレーの重みが増す。昨日から2次リーグが始まったワールドカップでも同じことが起こっている。スペインが67-60でイタリアを下したゲームがその象徴だった。

先手を取ったのはイタリア。シュートを打つのは確率の高いゴール下か3ポイントシュート、という定石を踏まずに、それぞれがフリーで動いて場所よりも自分のリズムを優先してペリメーターシュートを打つ作戦でスペインの意表を突き、15-5と最高のスタートを切る。

ヨーロッパ屈指の強豪であるスペインと、13年ぶりにワールドカップ出場を果たしたイタリア。フィジカルとプレーの引き出しの多さでは格上のスペインがやはり上。それでもイタリアは抜け目ないディフェンスを遂行してイージーシュートを簡単に打たせず、奇襲攻撃で得た10点のリードを失って逆転された後も粘りのバスケを展開。ロースコアの展開でスペインに食らい付く。

第3クォーター終盤、一度はスペインに突き放されるも、相手のダンク失敗から速攻に持ち込んだダニーロ・ガリナリが強引に仕掛けてバスケット・カウントをもぎ取り、続いてガリナリからアメデオ・デッラ・ヴァッレのイージーレイアップに持ち込む連続得点で流れを引き戻す。最終クォーター残り4分20秒、エースのガリナリがシンプルなスクリーンから一瞬フリーになった隙を見逃さずに3ポイントシュートを決めて、イタリアが56-52と抜け出した。

粘りのディフェンスからガリナリの爆発力に託すイタリアのバスケットはスペインを大いに苦しめたが、ここからイタリアは失速してしまう。勝負どころで明暗を分けたのはチームの総合力、選手層の差だった。特定の選手にプレータイムが偏るイタリアは、足こそ動いているもののインテンシティとボールへの執着心を維持できない。

「苦しい状況で全員が歯を食いしばって戦った結果」

これでスペインは息を吹き返す。残り3分を切り、完璧なタッチダウンパスを受けたリッキー・ルビオの速攻が決まって逆転に成功。一つひとつのポゼッションの重みが最も高まる勝負どころでさらにギアを一つ上げた。自分に触れてコート外に出ようとしたボールにルビオが飛び込む。マイボールにはできなくても、勝利への意欲をむき出しにするプレーはチームを盛り立てた。

マルコ・ベリネッリの3ポイントシュートが外れたオフェンスリバウンドを押さえたルイージ・ダトメを即座に3人で囲い込み、イタリアの得点を許さない。そこから転じての攻めでは、マルク・ガソルがポストプレーから押し込み、ターンアラウンドジャンパーをねじ込む。こうして粘るイタリアを振り切ったスペインが、最終スコア67-60で勝利を収めた。

リッキー・ルビオは苦しんだ末の勝利をこう振り返る。「オフェンスでは苦労したけど、大会を勝ち抜くにはディフェンスが大事だし、僕らはそれができるチームだと示すことができた。立ち上がりのマズさは課題だけど、苦しい状況で全員が歯を食いしばって戦った結果だ」

スペイン代表を率いるセルジョ・スカリオーロはイタリア人。母国の粘り強い戦いぶりを称えながらも、勝ち切ったことにホッとした表情でこう語る。「ガリナリの3ポイントシュートは痛恨の一撃だった。ロースコアの展開で終盤の4点差は大きく、あそこから逆転するのは簡単ではない。直後のタイムアウトで立て直し、ディフェンスを引き締めることができて良かった。NBAやユーロリーグで高いレベルを経験している選手たちが底力を出してくれた」

スペインは無敗の4連勝。イタリアは1試合を残し、2次リーグ敗退が決定している。