文=丸山素行 写真=野口岳彦

「自分の中ではいろいろ大変な時期かもしれません」

バスケワールドカップは大会6日目。いよいよ今夜、日本はアメリカと対戦する。トルコとチェコに連敗した日本は、すでに1次リーグ突破の可能性が潰え、この後は順位決定戦に進むが、比江島慎はこのアメリカ戦を「違うステップに進むための大事な試合」と位置付ける。

比江島は初戦のトルコ戦でわずか1本のシュートしか打てず無得点に終わったが、チェコ戦ではベンチスタートに回るも意地の10得点を記録した。これは5得点に終わったアルゼンチン戦の翌日、ドイツ戦で10得点を挙げた強化試合のシチュエーションと酷似している。その時は「ラストチャンス」との思いで戦いに臨み、翌日のチュニジア戦でも12得点を挙げて存在感を見せた。

誰よりも負けず嫌い、内面に強い気持ちを持つ比江島だけに、不甲斐ない結果の後に奮起するのは当然であり、言わば結果を出した後の次の試合こそ真価が問われる。

比江島は「昨日も正直、そんなに納得できるプレーができたわけではないです」とチェコ戦の10得点を振り返る。「点は決められたけど、ミスも多くしてしまった。ディフェンスでもっと身体を張らないといけないですし、改善の余地はまだまだあります。リバウンドに行く意識だったり、細かいところも含めてやっていきたいと思います」

「頑張っている姿を見てもらって、一丸となって」

もちろん、2試合で86失点、89失点を喫している守備の立て直しは急務であり、フリオ・ラマスヘッドコーチからもディフェンスについての指示があったという。それでも八村塁や渡邊雄太がいないアジア予選で、得点面で日本を牽引してきたのは比江島だ。ヘッドコーチからディフェンスだけを指摘されることで、どこにフォーカスすべきか困惑する部分もある。

「もっと打てみたいな感じで言われましたが、オフェンスについてはそれ以上のことは言われません。世界で勝つためにはディフェンスで完璧を求められます。もちろん、オフェンスもアグレッシブに行かないといけないとは自分の中では第一に思っています」

二兎を追う者は一兎をも得ず。それでも日本が今の実力を認め、それでも世界と渡り合うには、二兎を追うしかない。アグレッシブに行かなければ何も生まれない。「自分の中ではいろいろ大変な時期かもしれません」と比江島は言う。曖昧な言葉でやりすごすのではなく、葛藤をそのまま言葉にするのは『比江島らしさ』だ。それでも、悩みに悩んで吹っ切れたところで、コート上ですさまじいパフォーマンスを発揮するのもまた『比江島らしさ』のはずだ。

「僕らはファンを失望させてしまったわけで、それでもこうやって応援してくれます。ファンのためにも頑張っている姿を見てもらって、一丸となって。違うステップに進むために、僕らにも大事な試合になります」。そう語る比江島が、何かすごいことを起こすのを待ちたい。