若いメンバー構成のなか、”オーバーエイジ”として招集された6月のコパ・アメリカで森保一監督の信頼を掴み取り、日本代表に返り咲いたGK川島永嗣(ストラスブール)が感慨深げに言う。

「時間が経つのは、本当に早いですね」

 ベルギーとの激闘の末、ベスト16で散ったロシア・ワールドカップから約1年。早くも2022年のカタール・ワールドカップに向けた戦いの幕が、9月10日に切って落とされる。



帰国日を前倒しして日本代表に合流した堂安律

 初戦の相手は、FIFAランク135位のミャンマーだ。日本代表にとってアジア予選がアウェーで開幕するのは、1998年フランス・ワールドカップの予選以来となる。

 その開幕戦の前に組まれているのが、9月5日のパラグアイとの親善試合だ。

 4年前の2015年6月、ロシア・ワールドカップのアジア2次予選初戦・シンガポール戦の前には、イラクとの親善試合が設定されていた。もちろん、シンガポールとイラクとではタイプがまるで異なるが、イラク戦は多少なりとも”対アジア”を意識したマッチメイクと言えた。

 しかし、今回はタイプも実力も大きく異なる相手とのテストマッチが組まれている。そこにはいったい、どんな意味があるのか。

「パラグアイは世界でも強豪と言われるチーム。まずは我々が強ければ、アジアでより確実に勝てると思いますし、世界の強豪と対戦しても勝利の確率が高くなる。ミャンマー戦の準備がどうだっていうところもありますが、まずはパラグアイでいい戦いをして、自信を持って戦えるようにできれば」

 こうした森保監督の言葉を聞くと、パラグアイ戦はミャンマー対策ではなく、より強くなるための強化の一貫と捉えていいだろう。

 昨年9月に発足して以来、森保ジャパンはこれまで親善試合を9試合こなしてきたが、その相手にヨーロッパ勢はまったく含まれていない。UEFAネーションズリーグが発足したため、欧州のチームとテストマッチを組むのが困難になったためだが、その分、日本が苦手とする南米勢と4試合の強化マッチを組んできた。

 さらに、コパ・アメリカにも出場したため、森保ジャパンはこれまで南米勢6チーム(ベネズエラ、ウルグアイ、コロンビア、ボリビア、チリ、エクアドル)と7試合(ウルグアイと2度対戦)を戦った。

 つまり、森保ジャパンの南米チャレンジ第8弾――。それが、パラグアイと言っていい。

 日本がグループステージで敗退したコパ・アメリカで、パラグアイはカタールと2−2、アルゼンチンと1−1、コロンビアには0−1で敗れ、3位でノックアウトステージに進出。ベスト8で開催国のブラジルと対戦し、0−0からPK戦の末に敗れている。

 今回来日を果たした23人のうち、コパ・アメリカの参加メンバーは9人。なかでも警戒すべきが、同大会で4試合ともトップ下で先発したミゲル・アルミロンだろう。

 アメリカのアトランタ・ユナイテッドで評価を高め、今年1月にプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドにクラブ史上最高額となる移籍金2000万ポンド(約29億円)で加入した左利きのアタッカーだ。ニューカッスルでは、武藤嘉紀のチームメイトでもある。

 チームを率いるのは、アルゼンチン人のエドゥアルド・ベリッソ。同国屈指の戦術家であるマルセロ・ビエルサの弟子として知られるベリッソは、マンツーマンとプレッシングを融合させたディフェンスと、ワイドアタックを武器にパラグアイ代表を強化している。

 基本システムは4−1−4−1だが、相手に合わせて中盤の中央の形を柔軟に変え、4−2−3−1で戦うこともある。「修正能力を発揮して、柔軟に戦えるようにしたい」という森保監督にとって、格好の対戦相手と言えるだろう。

 南米から長距離移動を強いられるパラグアイもコンディション的に厳しいが、23人中19人が海外組となった日本代表もコンディションへの不安が少なくない。

 9月2日の集合日に全選手が集まれたわけではなく、原口元気(ハノーファー)や久保建英(マジョルカ)、酒井宏樹(マルセイユ)といった選手たちは9月3日のトレーニングから合流。遠藤航(シュツットガルト)は試合前日となる9月4日の合流となった。それゆえ、「今日(試合前日)の練習を見て決める」と森保監督も語ったように、パラグアイ戦はコンディションを重視したメンバー選考になるだろう。

 そのなかで期待したいのが、堂安律(PSV)だ。本来は9月3日の帰国予定だったが、PSVに移籍したばかり。手続き上の問題で9月1日のワールワイク戦に出られなかった。そのため、帰国を前倒ししたのだ。

「1日でも早く帰ったほうがコンディションはいい。それはPSVにとってもいいことだと思ったから、監督と話をさせてもらい、理解してくれました。代表を断る理由はない。この場所にはリスペクトしかない」

 その言葉には、代表にかける並々ならぬ覚悟が感じられた。

 森保ジャパン発足時には強烈なインパクトを放った堂安だったが、今年1月のアジアカップでは彼自身が「自分に対して腹立たしい」と語ったように、輝きを放つことができず、3月、6月の親善試合でもインパクトを残せなかった。

 一方、同じレフティで3歳年下の久保建英が代表の常連になりつつあり、レギュラーの座も安泰ではない。こうした状況で。ひと足早く帰国した堂安が再び、右サイドハーフのポジションを力強く手繰り寄せることができるだろうか。

 指揮官はパラグアイ戦に向けて、「4バックでスタートしたい」と名言した。4−1−4−1のパラグアイに対して4−2−3−1でマークをはっきりさせ、真っ向勝負を挑むことになる。戦術的に長けたチーム相手に柔軟に臨機応変に戦うことができるかどうか。攻撃陣の連係構築も含め、見届けたい。