今回はエイトに乗る三人の4年生、藤井拓弥主将(社4=山梨・吉田)、坂本英皓副将(スポ4=静岡・浜松北)、徐銘辰チーフコックス(政経4=カナダ・セントアンドリューズ)が登場。最終学年になり、役職に就いて変わった部分や最後の全日本大学選手権(…

 今回はエイトに乗る三人の4年生、藤井拓弥主将(社4=山梨・吉田)、坂本英皓副将(スポ4=静岡・浜松北)、徐銘辰チーフコックス(政経4=カナダ・セントアンドリューズ)が登場。最終学年になり、役職に就いて変わった部分や最後の全日本大学選手権(インカレ)に臨むにあたっての思いを語っていただいた。

※この取材は8月8日に行われたものです。

「ギリギリのところを拾ったレースだった」(藤井)


早慶レガッタを振り返る藤井

――今年の早慶レガッタを振り返っていかがでしょうか

坂本 非常に苦しい期間だったなと今でも思います。大体70日間くらいだったんですけど、ずっと調子にむらがあって、ちょうど悪い時が2週間くらい続いて本番を迎えたので、観漕会では慶應のセカンド(第二エイト)にコンマ差だったりして、やばいんじゃないのという感じで、結構苦しかったです。

藤井 早慶レガッタに関しては我々が絶対勝てるかというと、ふたを開けてみないと本当にわからなかったんですけど、調子の波で言えば、絶好調の時に早慶レガッタ当日を迎えたわけではなかったなと。最終的に早慶レガッタの結果も競り勝ったんですけど、10回やって10回勝てたかと言えばそういうレースではなかったので、そういうところで言えば本当にギリギリのところを拾ったレースでした。その後の全日本選手権(全日本)も手を変えいろいろやってきたんですけど、早慶レガッタで3750メートル漕いだのを2000メートルに昇華させるところは詰め切れずに来てしまって、セカンドエイトに乗っていたクルーがフォアとかになって、エイトで培ってきた体力や技術を他の艇種で生かすところも詰め切れず、苦しい展開ではあったんですけど、インカレまで時間が空いたので着実に力を付けられているかなと思います。

 乗っていなかったので、全然違う観点になってしまうんですけど、早慶戦の時はコーチングのような立場で初めての経験だったので、みんなが落ち込まないでほしい、練習が毎日うまくいってほしいという気持ちがあって、そういう気持ちでコーチングをやり続けただけという感じですね。結果としてはギリギリだったんですけど、勝てたので純粋にうれしかったです。

――今シーズンを通して成長を感じる部分はありますか

坂本 僕はエルゴのベスト記録を更新しました。いつも測定の時にこれまでのベスト記録よりもマイナス2秒とか3秒の時が多かったんですけど、今回ちょっとだけではあるんですけどベストを更新できて、一番調子がいい時と同じくらいに持っていけているという意味では成長というか、体は今一番いい状態です。

藤井 坂本みたいに身体的に成長があったかというとわからないんですけど、テクニックとか精神的なところで早慶戦が終わってからかなり洗練されてきてシンプルにまとまってきてるかなと思います。船がどうやったら走るのかをシンプルに2つ3つのことに重点を置いて、それだけを突き詰めるかたちになっていて、4年目にしてようやく簡単だけれども効率がいい、そういうところにきているかなと思います。特に、今1年生と一緒に船に乗っているので、技術とか知識が少ない人たちにどうやったら伝わるかなというところを考えると、やっぱり細かいことを言ってもわからないので、シンプルにシンプルにというところに帰結して、それが自分にもはまってきて、頭で考えていることと体でやろうとしていることがはまってきているかなと思います。

 自分の場合は司令塔で、自分がわかっているつもりでみんなを導かないと不安になると思うので、これで合ってると思うとみんなでそれに向かってやっていくんですけど、反対にみんなが間違った方向に向かっていくこともなくはなかったのかなと思います。いつも自分では全部わかっているつもりでやっていたんですけど、その中でも成長はあって、今も新しいことがわかってきて。自分の中では本当にこれが合っているのかなと疑問に思うこともあったんですけど、そういうことがほぼなくなって、間違った方向に導いてしまうことも少なくなったかなと思います。今は何をすればうまくいくのかがわかるようになって、さっき早慶戦前2週間調子が悪かったという話があったんですけど、自分が乗ればそういうことはないかなという自信はあります。

――早慶レガッタ前の対談ではクロアチアのコーチから漕法を教わっているとお聞きしました。現在の状況はいかがですか

藤井 船によってまちまちだと思うんですけど、今自分たちが乗っているエイトはわかってきてるんじゃないかなというところはあります。異国後を介していろいろな表現で「ここはこうした方がいい」などを聞いていて、言葉が一人歩きして細かい表現にフォーカスしていたのが、最終的に自分たちの感覚で「これを言いたかったんだろうな」というのがわかってきて、それに対してシンプルにみんなの感覚がそろってきたかなと思います。とにかく速く船を速く動かすために全部逆算しているというところに行きついたかなと思います。

坂本 結局はボートを速く進めるバリエーションってそんなにパターンがあるわけではないので、基礎的なことをクロアチアの方がわかりやすく整理してくれたというところで、新しい言葉が頭に入ってきて、その言葉だけが先行していたところを自分たちは何ができなくて何を教えられているのかというのを整理できたと思います。

 テクニカルの理解度で言うと今までで一番高いのはあって、いろいろな試行錯誤を経て、こういう漕ぎを再現したかったんだろうなというのがみんなの中で明確にイメージができるくらい身についているので、あとはレース本番でそれが出せればいいなと思います。

――みなさんは今年、主将や副将、チーフコックスなど役職に就いていらっしゃいますが、そのことによって変わった点はありますか

坂本 自分では変わったつもりはないんですけど、特に先輩とかから「坂本は変わったね」と言われますね。なんか落ち着いたらしいです。どう?

藤井 今も落ち着きはないけど、それをコントロールするようにはなったよね。

 1、2年の時と比べるとだいぶ大人になったと思うよ。

藤井 僕は主将になってから全体を見なくてはいけないというのは変わらないんですけど、ここ1、2ヵ月の中で思うのはやったことをちゃんと次の代に引き継がなきゃいけない。クロアチアからもらった疑問などをきちんとかたちに残して次の代に引き継ぐことを大事にしていますね。あと1ヵ月して今の3年生がちゃんと引っ張っていけるように3年生のことを育てていく。技術もそうですし、運営体制についても任せられるようにというのを考えています。

坂本 (藤井は)こういうふうに責任感が強いんで、最近熱くなりやすくなっています。それが主将になって変わったところだと思います。

 こういうタイプの人も必要なので、熱くなりすぎたら文句を言ってとバランスが取れるので。僕の場合は自分が部活だけに集中できない期間もあったので、チーフコックスという立場について申し訳ないと思っていて、チーフコックスという役職に就いて変わったことは何もなくて、自分のやるべきことに集中してやろうと思っていて。チーフコックスになったからだけではなくて早慶戦のコーチングの経験もあって、もちろん自分のクルーが優先順位として高いんですけど、他のクルーにも速くなってほしいなと思っていて、他のクルーにもアドバイスしようとすることは多くなったかなと思います。(インカレで)引退するんですけど、今回結果が出せたら今後もチームのために貢献していきたいなと思います。

――他のお二人は引退後の部とのつながりはどうなっていくのですか

坂本 毎年会費を部に納め続ける役割が一番大きいんじゃないかなと個人的には思います。

一同 (笑)

藤井 しばらくは何もボートのことを考えないで過ごしてみたいですね。

「4年間でみんな成長してるんだというのはすごく感じている」(徐)


お互いの変化について語る徐

――4年間一緒に過ごしてきてお互いの印象は変わったりしましたか

坂本 ジン(徐)に関しては全く変わらないですね。年齢は離れてるけど、結構性格は若いんですよ。学年で話し合いがある時は大人の目線から本質を突いてくるんですけど、その裏ではしてること言ってることがすごく若いです(笑)。

 それは男子同士での生活に慣れていて、盛り上げたいなと思っているからです。

藤井 4年間通してジンに関してはちょっと年上のお兄ちゃんみたいな感じです。さっき坂本からもあったように、学生の中で話し合いをするときはちょっと俯瞰的に見てくれたりと落ち着いているし、でもみんなでワイワイしている時は一人浮いてしまうことなく、一緒にワイワイしているので、すごく守備範囲が広いなっていうのは前から感じています。ナイスキャラという感じです。

 4年間でみんな成長してるんだというのはすごく感じていて、坂本は1、2年生の時は問題児扱いされていたんですけど。

坂本 大問題児でした。

 前は思いついたことをパッと言っていたんですけど、今は言って反省したり、考えてから言ったりという感じです。

坂本 小学生の段階でそれができれば良かったですね。

 こうやってみんな大人になるんだなと、坂本を見ながら感じました。藤井くんもリーダーの役割を4年生になってからある程度優しさを諦めながらもちゃんとリーダーとしてやるべきことをやっているなと思います。すごくそういうのは難しいと思うんですけど、同期と仲良くなくなる可能性もある中で、頑張ってくれたなと思って、その過程で成長した部分もあると思います。

坂本  藤井さんに関しては1年生の頃からいいやつだったんですけど、3年生で藤井が主将になるんだろうなって雰囲気になってから、ただのいいやつじゃなくて、部とか学年がいい方向に進むようにあえて悪者になろうとする傾向が強いというか。周りのことを考えて好感度を犠牲にしてでもみたいなところをここ1年は感じます。ただのいいやつじゃなくなったっていう(笑)。

藤井 いいやつっていうか、周りに干渉しなかっただけだよ。それが周りに口出しせざるを得なくなった。

――意識して厳しさを持って接するようにしているのですか

藤井 そうですね。駄目なものは駄目って言わないと、組織が良くならないというか。自分が今まで「上の人もいるしいっか」みたいなところをちゃんと言うようになったところが、みんなが言う悪者になったということなのかなと思います。

 いやでも必要だと思うよ。そういうキャラクターは必要だと思うんですけど、自分の場合は年齢も上で、艇庫にいない時も多かったので、自分がそういうキャラクターになっても責任が取れずに、ただのうるさいおじさんになってしまうので。

一同 (笑)

坂本 気にしてるな(笑)。

 だから何も言わなかったんですけど、こういうのは部活において必要だと思います。

坂本 主将が終わったら戻るんですか?

藤井 戻るんじゃない?わかんないけど、責任がなくなるわけじゃん。

坂本 俺個人は1、2年生の頃の方が好きだったからね。だから戻ってほしい。

――夏休みにやりたいことはありますか

坂本 就職活動です。引退したらアルバイトをしたいので、アルバイトをするための就職活動をしたいです(笑)。

藤井 そんな暇はないけどな。

坂本 そうなんだよね。合宿が始まると1週間に1回くらいしか動けないので。だからやることはないんですよ。夏休みは合宿があるのでやれることはありません。

――では夏休みはインカレに向けて練習という感じですか

藤井 そうですね。たまの息抜きが週に1回とかで、合宿中も相模湖に缶詰めなんですけど、月曜日は相模湖の練習場が休みなのでこっちに戻ってこないといけないので、そのタイミングでクルーのみんなでご飯に行こうと言ってるんですけど。それくらいですかね。

坂本 どうせ1ヵ月後にはボートをやろうと思ってもできないからね。

 

 内定を頂いた会社で内定者バイトを最近やっていて、かなりハードなスケジュールで部活と並行していたので、その分合宿はみんなはトレーニングのつもりで行くと思いますけど、僕はボートを楽しもうというつもりで行こうとしています。

――今部内で流行していることはありますか

坂本 なんだろう。自炊?

藤井 最近4年生も自炊してるもんね。今までは近くに大盛りで安い定食屋さんとかがあったので、そこに食べに行ったり、ご飯が出ない時みんな外に食べに行ってたんですけど、最近あまりにも暑いのでここの厨房で自炊してるのは流行りというか流れです。あと何かある?

坂本 流行ってること…。あとは特にないですね。

――マイブームなどはありますか

坂本 これちゃんと答えないと駄目だよ。ボートしかやってない人になっちゃうから(笑)。

藤井 でも俺は今自炊だな。

坂本 やっぱり艇庫で自炊流行ってる(笑)。

藤井 SNSで簡単レシピを見つけては試してというのをやってますね。夏休みに入って本当にすることがないので食を追求していますね。

坂本 マイブームあった!スマホでしょうもないゲームをやってます。 広告で出てくるのを一通りやってます。

 自分は今の生活がとてもシンプルで仕事とボートの2つなので、それがマイブームかなと思います。仕事に関しては外国人として日本人以上のレベルを出すために頑張っています。部活でのマイブームは毎回の練習をうまくしようという意識が強くて、うまくいかないと本当に1日落ち込んでしまうので。最近の練習は結構うまくいっているので、それを続けるのがマイブームって感じです。

――みなさんがそもそもボートを始めたきっかけは何ですか

坂本 僕は高校で最初はテニス部に入ろうとしてたんです。仮入部届まで出したんですけど、僕高校が国際科で、国際科が学年に1クラスしかなくて縦のつながりが強くて。国際科からボート部に毎年何人も入っていて、国際科のボート部の先輩から「入らなくていいから1回ボート乗りに来て」って言われて、乗ってみたら楽しくて入りました。

藤井 僕は中学校の時からボート部なんですけど、中学校の時に部活は強制的に何かしらの部に入りなさいと言われていて、男子で入れる運動部は野球か卓球かボートの3つしかなかったんですよ。野球は大体少年野球をやってた子たちが入って、とてもじゃないけどついていけないだろうなという感じで、卓球部は週に2回くらい嗜む程度だったので、それもそれで嫌だなと思って。運動音痴だけどそれなりに運動して体をつくれる部活がいいなと思って消去法でボートになった感じですね。あとは見学で陸から見てて、あれだったらそれなりにやればそれなりにできるだろうと思って。大間違いでしたけど(笑)。消去法でボートを選んでここまで来ました。

 ただ単に部活動の文化に興味があったというのが大きいです。一番のきっかけは昔『スラムダンク』とかを読んで、高校のバスケなんかでなんで泣いたりするんだろう、スポーツ選手になるわけでもないのになんでだろうと気になってたんですね。気になって早慶レガッタの観戦に行ったんですけど、早稲田が沈んだのを見て、その時ガイドしてくれた先輩が泣いてたんですよ。自分はまだ部員でもなかったのにそれを見て自分も涙が出そうなくらい悔しくなって。こんな感じだったのかとやっぱり気になって入部を決めました。

――ここまでボートを続けてきて、ボートの魅力はどんなところにあると感じますか

坂本 こういう言い方するのはあれですけど、本当の頂点に立つには死ぬほど努力して、才能もあってというのがなきゃいけないんですけど、ある程度のラインまではある程度の努力でいけるというか。野球とかサッカーのようなメジャーなスポーツとは違って成功体験が得やすいからそれにはまっていく人は多いと思います。

 すぐ思いついたのは、すごく難しいことだから魅力があると思います。例えばサッカーだったらボールを持ってグラウンドに行けばできるけど、ボートは漕ぐ人8人そろわないといけないし、環境がそろわないとやり始めるのも難しいのに、乗ってから8人の動作を合わせるのも難しいし。たぶんこれより難しいスポーツはないのかなというくらい超難しいです。だから、その難しいことを乗り越えていいものが出た時に達成感はすごくあると思います。そこで結果まで出たら最高ですね。難しいからこそ、やりがいがあると思います。

藤井 ボートの魅力はただただしんどいことだと思います。ただただしんどいんで、練習が終わったあとの「終わった~!」っていうのとか、大会で勝てたとかだったら「あれだけきつい思いをして良かったな」って苦しい壁を越えた時の達成感みたいなのはあるんじゃないかな。

坂本 苦しさが大きいからこそね。

藤井 そうそう。苦しみが大きいからこそ、その振り子が大きいんじゃなかと思います。だから洗脳されていって、もっともっとボートを、じゃないですけど、Mな人が多い。楽をしたがらない。

坂本 ボートをやっていると、きついことにすぐ悲鳴をあげる人とか待遇に不満を持っている人とか見るとムカつきますね(笑)。我慢しろよってなります。

藤井 耐久力が上がります。

坂本 乗り越えるんだよ!みたいになります。

「今まで思いを全てぶつけたい」(坂本)


自身の乗るエイトについて話す坂本

――インカレについての話に移らせていただきます。みなさんが乗るエイトには1年生も乗っていますが、選考で決まったのですか?

藤井 エルゴっていう体力測定でやったんですけど、今年の1年生は高校時代からジュニアの(日本)代表に選ばれるくらいだったので、身体能力はピカイチで、そういうところでは4年生と比べても遜色がないというか上回ってる人もいるので、スイープ競技は経験値としては足りないですけど、身体能力で見て光るところはあるので、そういったところを期待値込みで選ばれました。

――練習で下級生との関わりで気を付けているところはありますか

坂本 1年生があまり道を踏み外すような人間じゃないので、怒る必要もなくて。1年生の教育で苦労してるみたいなのはないんですけど、高校時代スカル種目で大きな成功体験を重ねてきた選手たちなので、スカルでできたことがスイープでできない人もいる中で、1年生がつまずいたままにならないように、そこはスイープはこういうものだよというのを4年生として伝えていきたいとは三人とも思っていると思います。

藤井 わかんない人相手にスイープをやらせなきゃいけないので、わからない人目線で教えるということは結構意識してて。全日本の時はみんな3、4年生だったので、ある程度抽象的な表現をしてもわかってもらえたんですけど、今はそうではないので、いかにシンプルに伝えるかというところを気を付けてはいます。あとはスピードに対する執着はすごく1年生は強くて、漕ぎに対する嗅覚みたいなのは鋭い人が多いのでテクニックとか知識が付くことで頭でっかちにならないように。究極のところは体力勝負で相手より前に出たいという執念で勝ちを拾っていくスポーツなので、そこの強さを上級生が殺さないように気を付けています。坂本からも熱くなると言われてるんですけど、今の3年生もおとなしめの人が多くて、駄目な時にちゃんと言って改善しないといけないので、そういうところに対して、駄目な時は駄目って言うし、いい時はもっともっととやっていきたいなと思っています。特に今の1年生は伸びしろがあって、磨けばもっと光ると思うので、そこを伸ばしていきたいですね。

 藤井とは違うところで実はいろんな心配があって、モチベーションを保つためにエイトに乗る前から「可能性があるからテクニックを狙っていけばエイトに乗れるぞ」って1回1年生を集めていったことがあります。3人が今乗ってるんですけど、1年生が初めて乗った時に大事なのは教え方によって漕ぎが変わるので、常に下級生は学ぶ姿勢が大事だなと思います。今こうなってるからこうしようというのに付いてきてくれないままでは我だけ強くなって改善にならないので、意識させるようにしました。

――エイトのクルーとしての強みはどこにあると思いますか

坂本 今までのクルーに比べて乗った時のスピードは速いと思いますね。感覚が普通でも意外とタイムが出てると感じる時は多い感じがします。

藤井 練習の時のタイムは結構出ていて、荒削りなんですけど、1年生のスピードに対する嗅覚の鋭さが出てるのかなと思います。クルーの特徴としては体重の割にパワーがある人が多いので、軽いのに力が出るのも持ち味かなと思います。

 あとは今まで研究してきた海外の漕ぎが結構浸透してるのが強みかなと思います。

――クルーの中でのご自身の役割は何だと思いますか

坂本 僕は早慶レガッタの時ストロークで、全日本では7番だったんですけど、今回またストロークに戻りました。自分では自信はあまりないんですけど、監督やコーチに自分のリズムづくりを評価して頂いて、ストロークに乗ることになったので、リズムの面で貢献していきたいです。早慶レガッタの時は自分がリズムの役割を背負っていながらも力を出す役割とかにも手を出しまくって自滅してた時期もあったので、とりあえず自分はリズムをよくすることを心がけていきたいと思います。

藤井 自分はバウに乗ってて前7人の動きが見えているので、それを見てずれてたら言う、誰かがへばってきていたら声を出してへばらせないようにする。とにかく声を出して練習の質を上げていこうと思っていますね。漕ぎの1ストローク1ストロークの密度を上げるために、口酸っぱく言っていく感じですかね。坂本が今いいリズムの漕ぎをしてくれているので、坂本を楽に漕がせて、2000メートルノリノリで漕ぎ切れるように後ろ6人で漕いでいきたいですね。

 シンプルに表現すると、船がいい状態で進んでる時間をなるべく長くするというのが究極的にやっていることで。正しい漕ぎをなるべく長くするためにできることを全部やってます。

――夏合宿で強化していきたい部分はありますか

藤井 レースに近いスピードで漕ぐことが増えると思うので、そこですかね。ゆっくり漕ぐ分には技術的なところは1年生もできるんですけど、速く漕いでいくと粗がでてくるので、それを取ってどんなスピードでも同じ漕ぎができるように合わせていくことに尽きるかなと思います。あとは2000メートル漕ぐ中でうまく体力を使っていくところを実戦に向けて磨いていくことかなと思います。

坂本 感覚もそうですし、純粋にスピードを追い求めていきたいなと思います。

 合宿で体に動きを染み込ませてほしいですね。どんな状況、場面でもいつもやってた漕ぎができるように、ひたすら漕いで、体がそれしか覚えていないような状態にしたいです。

――警戒している他大学はありますか

藤井 他大はどこも速いと思います。毎年優勝の筆頭に上がっている日本大学もそうですし、中央大も結構速いと思いますね。対岸の明治とか一橋も速いだろうなと。まあ他大のことを気にしてもしょうがないので、とにかくタイムが良ければいいので、例年の優勝タイムが5分45秒くらいなので、そこにいくように練習しているので、とにかく自分たちが速ければそれでいいという練習を今しています。

――早稲田として出場するのはインカレが最後になると思いますが、どのような思いで臨みますか

坂本 2年生の秋から大きな大会はエイトで出てきて、今まで何回も挑戦しては思い破れての連続だったので、個人としては本当に今まで思いを全てぶつけたいというのと、今までにないくらい若いメンバーが乗っているので、後輩はインカレが終わってもボートが続いていくので、その人たちの自信とか勇気になるようなクルーになるように責任を果たしたいと思っています。

藤井 自分が今まで目標としてきたのが日本で1番になりたいということだったので、中学からずっと続けてきたんですけど、全国大会に行ってもてっぺんに立つことがなかなかできずに来て、今までも何度も悔しい思いをしてきたんですけど、泣いても笑っても今回が最後なので、今まで負けてきたことを帳消しにできるようなつもりで、最後は絶対勝つぞというつもりで臨みたいと思います。

 金メダルしか見ていなくて、ここまで何代の先輩がこの漕ぎを再現しようとしてきたかというのがあるので、今回僕たちが本当に結果を出さないといけないなと思います。うちが金メダルを取ることで、クロアチアのコーチなど周りが得することもたくさんあるので。今回勝ったら、みんな早稲田の漕ぎに注目して、今世界的には日本は弱いんですけど、その流れも変わってほしいのでそのスタートを切ることになったらそれ以上にうれしいことはないですけど、まずは金メダルを取りたいですね。

――インカレでの目標をお聞かせください

坂本 インカレ8+優勝を目標に掲げているんですけど、自分たちで決めたことなのでその目標に対して責任を持って、優勝を目指したいの一言に尽きますね。

藤井 インカレにエイトで出て優勝というのが入部の時からの目標でしたし、それができれば1年から3年は勝てなくてもいいと思っていたので、とにかくインカレで1回エイトで優勝することだけが目標だったので、最後のチャンスをものにして頂点に立ちたいです。

 本当に長い戦いだったなと。30歳で卒業して、かつ部活も引退するんですけど、ありえない状況で無理やり部活をやってきたからこそ、勝ってハッピーエンドで引退したいなと強く思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤千咲)


◆藤井拓弥(ふじい・たくや)(※写真右)

1998(平10)年1月14日生まれ。170センチ。70キロ。山梨・吉田高出身。社会科学部4年。周囲から熱いと言われる藤井主将。最後にインカレで勝ちたいという強い思いが伝わってきました。

◆坂本英皓(さかもと・ひであき)(※写真左)

1997(平9)年11月4日生まれ。183センチ。75キロ。静岡・浜松北高出身。スポーツ科学部4年。先輩から性格が落ち着いたと言われることに対して自覚はないという坂本選手でしたが、インカレについて真剣な眼差しで話してくださいました。エイトのストロークとして優勝に向け、いいリズムを刻んでくれることでしょう。

◆徐銘辰(せお・みょんじん)(※写真中央)

1988(昭63)年12月16日生まれ。167センチ。55キロ。カナダ・セントアンドリューズ高出身。政治経済学部4年。年齢が上であることもあり、仲間からの信頼が厚い徐選手。自身が乗ればクルーの調子が悪い状態が続くことはないと自信を持って話してくださいました。冷静なコールで優勝へと導いてくれるでしょう。