文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

「僕を救ってくれたのはブラジル代表だった」

ギリシャが圧倒的に強いと見られていたグループFに、ブラジルが波乱を巻き起こしている。ブラジルは昨日、そのギリシャと対戦。前半を終えて30-40の劣勢から逆転勝利を収める主役となったのが、アンダーソン・バレジャオだ。

完全にギリシャのペースだった前半を10点差で耐えたのも、バレジャオがヤニス・アデトクンボに自由を与えなかったから。そのバレジャオは後半になってオフェンスでも持ち味を発揮し始める。ギリシャにとって痛かったのは、後半開始早々にアデトクンボがファウルトラブルになったこと。個人3つのうちオフェンスファウルが2つ、避けるのは難しかったが、これが試合を複雑なものにした。

それでも、第3クォーターの最後にコートに戻ったアデトクンボはオフェンスリバウンドからのバスケット・カウントと圧巻のプレーを見せるが、第4クォーターはフリースローによる2点のみと沈黙。むしろ目立ったのはバレジャオだった。

同点で迎えた残り14秒、レアンドリーニョのピックプレーでスクリーン役となったバレジャオがワイドオープンに開く。アウトサイドシュートのないバレジャオをギリシャ守備陣は捨ててペイントエリアを固めたが、ここでレアンドリーニョはバレジャオへのパスを選択。バレジャオはここから一歩踏み込み、フリースローラインからのフローターを見事に沈めた。

ファウルゲームに望みを懸けたギリシャの、自陣から強引に狙うロングシュートに対して無用なファウルで3本決めれば同点となるフリースローを与えるバタバタぶりもあったが、コスタス・スロウカスが3本目を落としてしまい決着。ブラジルが79-78で逃げ切った。

22得点9リバウンド2アシストを記録したバレジャオは、試合後の会見で「勝因はみんなが熱い気持ちをもって助け合ってタフにプレーしたから」と語る。

「多くのミスがあったけどチームは常に一つだった。そして、勝つために何をすべきか分かっていた。すごい展開だったけど、僕らはこういう試合が好きだ。今日は代表チームにおける自分のベストパフォーマンスの一つだね」

バレジャオは36歳、キャバリアーズで長くプレーしたがアキレス腱断裂の大ケガを負ってからキャリアは下降線をたどり、2016-17シーズン途中を最後にNBAではプレーしていない。

「2年前にキャブズを離れて所属チームがなくなった。毎日ワークアウトを自分でやっていたけど、自分のキャリアがどうなるのかは分からなかった。そこで僕を救ってくれたのはブラジル代表、ヘッドコーチと協会だ。代表に呼ぶからトレーニングを続けてくれ、所属チームを決めるのは時間をかけても構わないと言ってくれた」

「予選の最初、チリとの試合は1年半ぶりぐらいの実戦だった。18歳の選手みたいに、これからどうなるか不安だったよ。それが今、ワールドカップでこれだけのプレーができて最高の気分だよ。それでも、まだ何も成し遂げてはいない。来月には37歳になり、年寄りだと言われるけど、自分はそうは思わない。今日のようなプレーをするためにハードワークをしているからね」

この試合におけるベストプレーヤーは間違いなく、バレジャオだった。大ベテランに牽引され、ニュージーランドに続いてギリシャも撃破。ブラジルが早々に1次リーグ突破を決めている。