全日本大学選手権1234567計環太平洋大03000014早 大00020002●伊藤―川崎◇(二塁打)廣瀬あと一本出ていれば…。そう嘆かざるを得ない試合だった。この大会のためにと、チーム一丸となって準備し臨んだインカレ(全日本大学選手権)…

全日本大学選手権
環太平洋大
早 大
●伊藤―川崎
◇(二塁打)廣瀬

あと一本出ていれば…。そう嘆かざるを得ない試合だった。この大会のためにと、チーム一丸となって準備し臨んだインカレ(全日本大学選手権)。しかし、結果は無残にも二年連続となる初戦敗退に終わることとなった。

先発・伊藤貴世美(スポ3=千葉経大付は、初回こそ三振を奪うなど、順調な立ち上がりを見せる。しかし続く2回、1死から6番打者に、ショートの増子奈保(スポ4=東京・日出)のグラブをかすめる中前打で出塁を許す。そして、次の打者のマウンド付近に転がったバントを処理する際、ファーストの神樹里乃(スポ4=北海道・とわの森三愛)の送球が伊藤の頭に直撃するアクシデントが発生。ボールが転々とする間に進塁を許してしまい、一挙に二、三塁のピンチを招いてしまう。すると続く打者に浮いた速球を左中間に運ばれ2点を先制される。なおもピンチがつづいたが、ここは何とか踏ん張り、これ以上の傷口を広げさせることはなかった。


岡田のシュアな打撃でこの試合初となる得点をもたらした

 一方の打線は初見の投手相手に苦しみ、3回まで散発2安打無得点に封じられてしまう。だが4回、先頭の廣瀬夏季(スポ4=北海道・とわの森三愛)が初球を鮮やかに中前に運んで、続く丹野ちさき(人3=岩手=一関第一)と堀奈々美(スポ3=千葉経大付)もつないで無死満塁とする。そんな絶好の場面で打席に入ったのは、先日の対談にて今大会を自身のソフトボール生活の「集大成」として位置づけていると話していた岡田夏希(社4=神奈川・厚木商)。「絶対に打てると思って打席に入った」と二塁手の右横を抜ける適時打でまず1点を返す。なおも2死から古川晴野(スポ4=神奈川・厚木商)がなんとか適時内野安打を放ってもう1点を加え、一気に反撃ムードが高まった。


本当に紙一重のプレーだった

 さらに5回の攻撃。1死から右前打で出塁した川崎楽舞(スポ4=千葉・木更津総合)を一塁に置くと、続く廣瀬夏季(スポ4=北海道・とわの森三愛)が右中間フェンス直撃のあたりを放つ。この一打に川崎は迷わず本塁を狙うも、打球が速く相手のクッション処理がもたつかなかったこと、そして右翼手の返球が素晴らしかったことが災いし紙一重でタッチアウトとなってしまう。これでしぼむことなく、丹野の内野安打で再度2死一、三塁までこぎつけるも、堀の代打・河野友里(スポ4=東京・鴎友学園)が投ゴロに倒れ得点はならず。押せ押せムードの中にありながら、あと一本が出ず追いつくまでには至らない。

伊藤は2回の3失点以降は無失点でしのぎ続けてきたが、最終回に簡単に2死をとってから安打と四球で得点圏への進塁を許す。そして続く打者に2ボール1ストライクから投じた球を振り抜かれると、打球は二塁手・小野寺の頭上を越える痛恨の適時打に。試合を大きく左右するであろう1点がワンチャンスをものにした環太平洋大に入ることとなってしまった。2-4で迎えた最後の攻撃。1死から小野寺がつまりながらもレフト前に落として、一発が出れば同点という状況を何とか演出。続く川崎は打ち取られ2死となるが、ここで打席が回ったのは、前の打席でフェンス直撃打を放っている廣瀬。「思い切り振りにいった」とベンチやスタンドの思いを乗せた打球は、無情にもファーストミットの中へ…。あと一本が出なかった早大は志半ばで現体制における最後を迎えることとなった。


最後の打者となった廣瀬

 「今日はずっといける気がしていた」主将・増子のこの一言がすべてを物語っているように思える。序盤に複数失点してリードされながらも、チームとしてひるむことなく何度も同点、さらには逆転のチャンスを切り開き、一昨年に今大会で優勝している環太平洋大に何度も食い下がった。簡単に流れを手渡さないという点において東日本(大学選手権)の時よりも格段にチームとしてのレベルは上がっていた。ただ、追いつくことができなかったというだけなのだ。この試合をもって4年生は引退ということになる。しかし、「悔いはない」と岡田が語ったように、勝利こそできなかったものの、この大会に向けて懸命に汗を流してきた4年生たちの表情はどこかすがすがしさがあった。その一方でぐったりと肩を落とし、涙をぬぐい、憔悴しきっていた下級生たち。もっとこの先輩たちと一緒にソフトをしたかった、もっと喜びを分かち合いたかった…。チームとして日々成長を見せていただけにひときわそのような思いは強かったであろう。彼女たちの戦いはこの日をもって一区切りついた形となったが、その悔しさが後輩たち一人ひとりの胸にある限り、早大ソフトボール部としての戦いが終わることはない。

(記事 篠田雄大、写真 望月優樹、柴田侑佳、大島悠希)

コメント

増子奈保主将(スポ4=東京・日出)

――今日は試合を戦う中で、何を感じていましたか

今日はずっといける気はしていました。結果としてはいけなかったですが。最後は負けるべくして負けたという感じかなと思います。

――東日本(東日本大学選手権)からのチームのレベルアップが見えました。主将の立場からもそういう部分は感じていましたか

4年生が特にそうだと思いますけど、3年生も2年生も1年生も、出ていても出ていなくても、すごくレベルが上がっているなというのはありました。試合をやってて楽しいなとすごく思いながらやっていました。

――勝敗を分けた点を強いて1つ挙げるとしたらどこだったと思いますか

最後、7回の1点が…。あの1点がうちに入っていれば勝っていたと思うし、相手に入ってしまったからああなってしまった(盛り上がってしまった)。ああいう接戦になった時は次の1点というのが大事だと思うので、いま振り返ると、最終的な勝負がついてしまったのはそこかなと思います。

――主将として活動したこの一年間は、どういう時間でしたか

キツかったです。自分のことを考えたくてもチームのことを優先しなきゃいけないところで、(チームとして)思うように秋から結果が出なかったし、東日本もあっけなく負けたし、そういう結果が出る度に「ああ、やばいな」という気持ちはあって。インカレ前もチームの状況、雰囲気が良くなかった時期があって、調子が上がらないとかいろんなことが重なって、すごく落ち込んでいる選手とかもいました。自分も調子としては全然振るわなかったので、落ち込みそうになるところもあったんですけど、絶対に自分がしょげちゃいけないなと。常に自分を奮い立たせてやるというのは自分のエネルギーにもなっていたんですけど、ある部分ではしんどくもあって。なかなかうまくまとまらないですが、いろんな人に応援されてなんとかやり切れた、そういう一年間でした。

――良く言えば少数精鋭、悪く言えばなかなか人が集まらない中で、東女体大や日体大に挑むというのは難しい挑戦だったと思いますが、チームをまとめる上で苦労した点は

うちの強みを見つけることです。日体とか東女とか、人数が多いチームはそれがもう強みになると思うんですけど(早稲田はそうではない)。うちは個々の能力は優れているので。アメリカと戦う日本じゃないですけど、普通に戦って勝てないのなら、自分たちなりの強みを出して勝とうとやっていました。そういう「自分たち早稲田のソフト」を意識してやっていて、結果として全然勝てなかったけど、相手を脅かす場面は絶対に作れたと思います。

――最後の大会を終えて今の気持ちは

もっとわんわん、一番泣くと思ってたんですけど、後輩たちの方がすごく泣いてくれていて、ありがたいなと思います。「引退しないで」と言われて、引退したくはないよと思うんですけど。でも率直に言うと疲れた(笑)。明日解散するまではまだキャプテンだけど、やっとというような、それだけこの10番には重さがありましたね。

――卒業後はソフトボールに携わっていくのですか

今のところはないですね。クラブチームとかに入ったらまた本気でやりたくなってしまうと思うので。本気でやりたくなったらまた考えるけど、今はないです。

――次の代に向けてかけたい言葉は

自分たちの代に懸けてくれていたから、すごく気持ちの切り替えとかは難しいと思うんですけど、でも次の代はすぐに始まると思うので。初戦負けだし偉そうなことは言えないですけど、うちらの代で一緒にやってきたことは絶対に次の代にも何かしら生きてくると思うので、「そういえばあの代であんなことやったな」くらいでいいから覚えていてもらえたらいいなと思います。自分たちの思うようにチームを作って、早稲田らしく、これからも伝統を守っていってほしいなと思います。

河野友里副将(スポ4=東京・鷗友学園)

――本日の試合を振り返っていかがでしたか

アクシデントがあり点数も取られ、悪い流れの中で、先生の一言などでチームが『勝つ』という方向でチームがまとまっていきました。東日本大学選手権が終わって、インカレまでで自分たちが詰めていこうとしていた部分が発揮できた試合だったので、そこが良かったなという気持ちと、やっぱり勝ちたかったなという気持ちがあります。

――個人としても、好機の場面で打席に立たれました

先生からは「お前は集中力が持ち味だ」と言っていただいて、ミートして三遊間を狙うことをメインにやってきました。『ここぞの一打』が求められる場面で出していただいて、自分としても気持ちを高めて打席に入ったんですけれども、そこで仕留めきれなかったのが本当に悔しいです。

――代打での起用は事前に伝えられていたのでしょうか

この試合で、というよりは、「お前はポイントゲッターだから、集中力が必要な場面で出ることはある」とは1ヶ月ほど前から伝えられていました。得点圏で打席に立つことがあると指示を受けていたので、そういう意識で打席に入れたとは思います。

――試合に出ないときでも、三塁コーチャーをはじめ常に声でチームを支えられていました。そういったご自身の取り組みに関して一言いただけますか

4年生のプレーヤーで試合に出ていないのは自分だけです。直接チームの勝利に貢献するのが難しい立場ではあるんですけれども、三塁コーチャーだけではなくベンチにいるときなど、チームを支える人間として、冷静に物事を見るという点ではチームに貢献できたかなと考えています。それと分析が得意なので、今回相手を攻略する上でそこが足りなかったという悔いはあるんですけれども、影で支えるというか、冷静さを持ちながら熱く戦うのが自分の役割だと思っていました。

――早大ソフトボール部は名門校出身の選手が多い中、決してそうではない高校の出身ということで難しさもあったと思います。改めて、どのような4年間でしたか

最高の同期でした。本当は最初、部に入る気はなかったんですけれど、同期を見て、この同期と日本一になってみたい、これはもう部に入るしかないと思って。実際に入ってからも、みんな努力家ですし、本当に素晴らしくて。同期に支えられながらも、同期を勝たせたい、自分も少しでも力になりたい、もっと上手くなりたいと刺激を受けた4年間でした。みんな仲もいいですし、分け隔てなく私にも接してくれて。本当に最高の同期です。

――次の代に向けて、一言お願いします

試合に出ているメンバーは変わってしまうと思うんですけれど、今まで自分たちがインカレに向けてやってきた練習だったり、そういう部分で後輩の力をすごく感じてきたので。来年は少し厳しくなると後輩たちは思っているかもしれないですけれど、私はそんなことないと思っていますし、来年はインカレ優勝できると思うので、そこを目指して頑張ってほしいと思います。

岡田夏希(社4=神奈川・厚木商)

――本日の試合を振り返っていかがですか

最初は気合が空回りして浮き足立ってしまった部分もありましたが、みんなやれることはやったかなという印象です。

――適時打を放った打席を振り返っていかがですか

絶対に打てると思って打席に入りました。今まで積み重ねてきた努力は裏切らないと思いましたし、調子も良かったので。先生を信じて、自分を信じて打席に入れば大丈夫と思っていました。

――昨年のインカレでの敗戦から1年。胸に秘める思いもあったかと思いますが、どのような1年間でしたか

去年のエラーから一年が始まって、もう絶対にあんな思いはしたくないという気持ちで努力してきましたし、去年の4年生の分まで絶対に勝つという気持ちでやってきました。

――ご自身の取り組みとその成果についてはどのように感じていますか

努力は嘘をつかないと感じました。コツコツと積み重ねてきて良かったな、と。

――13年間のソフトボール人生、振り返っていかがでしたか

いや、本当に。良いことも悪いこともいろいろ経験できたので。本当に楽しいこともあったし、本当に辛いこともありました。でもソフトボールをやってきてよかったと思いますし、悔いはないです。

――早大ソフトボール部の同期に向けて一言お願いします

最高の同期でした。心からありがとうと言いたいです。

――卒業後、ソフトボールに携わられることはありますか

ないです。本当にこれで最後です。

――最後に、次の代に向けたメッセージがあればお願いします

後輩は本当に色々とやってくれて。努力は裏切らないこと、自分を信じて、これからもインカレ優勝という目標に向かって頑張っていってほしいです。

廣瀬夏季(スポ4=北海道・とわの森三愛)

――きょうの試合を振り返って

2回に(相手に)3点を取られた後、4回に先頭で自分の打席が回ってきた時にまず考えたのがどう塁に出るか。1発も考えたんですが、どうやって塁に出るか。その結果を考えた結果、皆がつないで2点を返せたので、そういう流れをつくれたのは良かったです。ただ全体を通してやりきったかと言えば、(力を)出しきれてない選手もいて、自分自身も全力出せたかと言えば出せてなく。後悔はしてないですが、悔しいのはあります。

――5回にフェンス直撃の、あわや同点タイムリーを放つなど、4番の役割を果たされましたが

自己評価としては半分は果たせたのかなとは感じているのですが、やはり最終回の最後のバッターとして回った時に打てなかったのが一番仕事を果たせなかったのかな。自分の中で悔しかったポイントでした。

――最終回の打席を振り返ってもらえますか

2対4の2アウト一塁で自分の打席が回ってきたのですが、打席に入る前にベンチにいる全員の顔を見て、最後に先生の顔を見て打席に入りました。ここで打つべきだなとは考えてたのですが、結果的にファーストへのファールフライとなってしまったのですが、思い切り振りにいった結果だったのでしょうがないかなと思います。

――きょうの勝敗を分けたポイントは

そうですね、2点を返した部分でもう少し得点できなかったのが勝敗を分けたのかなと。自分は投手もやっているので、今回は登板しなかったですが投手の気持ちは痛いほど分かるので、投手を責める気持ちは全く無くて、むしろ本当に良く投げてくれたなという気持ちが多いので、打てなかったバッター陣が勝ちきれなかった要因かなと思います。

――卒業後はソフトボールを続けますか

そうですね、続けます。

――きょうの試合で引退となりましたが、最後に次の代へのメッセージをお願いします

2年連続で初戦敗退ということにはなってしまったのですが、結果を求めすぎず。ただ自分たちの力を出しきること、悔いのないようにこれでやりきったと思えるくらいまでの試合運びができるように祈っています。