文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com「こっちが後手になっているようじゃ勝てない」「自分がこっちに来てから取材を受けるたびに言っていたように、試合の入りがやっぱりすごく大事だと思ったところで上手く入れなかったし、相手は本当に気持ち良くのびの…

文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

「こっちが後手になっているようじゃ勝てない」

「自分がこっちに来てから取材を受けるたびに言っていたように、試合の入りがやっぱりすごく大事だと思ったところで上手く入れなかったし、相手は本当に気持ち良くのびのびとプレーをしていたと思います」

試合後の取材で開口一番そう語った田中大貴は、大事な初戦の試合開始から数分でチームが決定的な不利に追い込まれた立ち上がりの出来に憤りを隠さなかった。「こちらとしては余裕を持って試合を運べることなんて少ない。なのでこちらからもっと仕掛けていかないといけないし、こっちが後手になっているようじゃやっぱり勝てないなと、それを痛感した試合でした」

エースの八村塁は15得点を挙げたが、気持ち良くプレーさせてもらえたのはダンク一発ぐらい。その他は簡単にボールを受けられず、チャンスになりそうな場面では戦略的にファウルで止められ、八村自身もチームも勢いに乗れなかった。

「塁はもちろんスカウティングされるし、塁のところにこうやってマークが集中します。やっぱり周りの選手がもっとステップアップしないといけない。セットで重かったらディフェンスで頑張って走るしかない」

大貴自身は先発の篠山竜青の後を受けてポイントガードとして24分半プレー。ディフェンスから立て直して11得点2アシストの数字を残している。それでも大敗とあって満足感はなかた。「自分はいつも通り入れたと思います。ただやっぱりトルコが強いのは分かっていましたけど、試合をやっていて策がなかった。今のウチとの差を見せ付けられた感じのゲームだったと思います」

徹底した八村対策に「周りの選手がどんどんアタック」

チームが負けた時、その責任を問うことなく次へと意識を切り替える手法もあるが、彼はあえて厳しい言葉を口にする。大会はまだ続くし、日本代表は大会トータルで収穫を得て次に向かわなければいけない。だからこそ、どうするべきだったのか、次はどうするのか、を大貴は語る。

「ディフェンスでみんなで一緒に頑張って、リバウンドを取った後にどんどんボールをプッシュして流れの中でみんなで動いてオフェンスをやれば誰かしら空いてきます。塁のところにボールを入れるにしても、最初から塁ばかりを見るのではなく動きの中で塁を探したりだとか、そういう工夫がもっと必要です」

八村の圧倒的な個人能力をチームとしてどう引き出すか、封じ込めようとする相手との、チーム同士の駆け引きである。大貴もポイントガードとして、この課題に向き合う。「思った以上にしっかり対策をしてきて、本当に彼が嫌がるディフェンスをしていたと思います。彼のところに3人、4人で潰しにかかるシーンもあって、そこでもっと上手くボールをさばいて、ノーマークのシュートを打てたんじゃないかと思います。あれだけ寄っているわけですから、周りの選手がどんどんアタックしないといけない。周りの選手のステップアップが必要です」

手痛い一敗を喫したが、大会はまだまだ続く。「負けても試合は続きます」と大貴は言う。

「次のチェコ戦、自分は(リオ五輪の)最終予選でメンバーに選ばれなくて試合はしていないですけど、その時にチェコに負けています。その時から自分たちがどれだけ成長したかを見せ付ける試合になると思います。今日は本当に出だしが悪かったので、そこをもっと修正して、今日の試合より良くなるようにみんなでしっかり戦いたいです」

そういう意味では、トルコ戦での最大の収穫は田中大貴のステップアップだったと言える。3年前の最終予選の分まで、彼が次のチェコ戦に懸ける思いは強い。