文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦 協力=DAZN

世界を相手に結果を出さなければならないという思いはチームの誰よりも強い。だからこそ、比江島慎は安穏とした環境に身を置くことを良しとせず、厳しいチャレンジばかりをあえて選択していく。1年前、BリーグのシーズンMVPを受賞した比江島は、長く在籍したシーホース三河を離れてオーストラリアリーグに挑戦。帰国後は栃木ブレックスに加わり、シーズンを終えるとNBAサマーリーグへと挑戦した。アメリカから戻り、代表合宿が始まるまでの束の間の期間も「ずっとトレーニングしていました。バスケばっかりですね」と、日本代表での戦いに備えてきた。そんな比江島に、バスケワールドカップを前にした心境を聞いた。

「新しいバスケットを経験したことで成長できた」

──オーストラリアでもサマーリーグでも、海外挑戦では目に見えた結果を残せていません。厳しいことは承知の上で行っていると思いますが、どのような成果が得られましたか?

結果だけ見れば全然残せていないですけど、行ったことでいろんなバスケを知ることができて、何より知るだけじゃなくてその高いレベルの中で練習できたことが大きいです。そこで得た自信は間違いなくあります。オーストラリアに行ったことでいろいろな出会いもありました。その積み重ねで代表でも結果を出せたし、サマーリーグに参加することができたと思っています。

サマーリーグにしても、ディフェンスの守り方、チームのシステムというものはこれまでに経験したことのないものでした。チームメートの身長もプレースタイルも違うので、バスケットボールのスタイルをイチから変えるという経験ができました。それは逆に、日本にいたら絶対にできない経験なので。

新しいバスケットのスタイルに合わせないといけなくて、それを経験することでバスケットの知識が増えます。こう守られたらこう攻める、そうやってきたこの1年の経験があって余裕を持ってプレーの中で判断できているという感じです。アジア予選のイラン戦、あの完全アウェーの中でも全然焦ることなく、余裕を持ってプレーできたのはオーストラリアに行った経験があったからこそです。「オーストラリアに比べたら全然だな」と思えば、それが自信になります。

そういう意味では栃木(宇都宮ブレックス)に移籍して、あのディフェンスを学んだことも、経験してみないと分からないことなので。そこは自分の中で大きな成果だと思っています。

「塁やニックにパスするためのピック&ロールではダメ」

──試合の状況次第ではありますが、終盤に勝敗を左右するようなシュートを打つのはニックでも塁でもなく俺だ、という気持ちはありますか?

それは、僕が打って外したらっていうのは考えちゃいますけど……(笑)、でもそういうフォーメーションが出たら行ける自信は持っているつもりです。塁が行くとなれば塁に行かせますし、雄太が行くとなったら行かせますし。仮にタイムアウトがなくて自分たちでやらなければいけないとなったら、その時は自分がピック&ロールしていくと思います。

──八村選手のアタックは日本代表の大きな武器ですが、相手に一番に警戒される部分でもあります。そこを止められた時こそ比江島選手の出番だと思います。バランスとしては難しいところですが、どう考えますか?

塁が自分で仕掛けて自分のタイミングで打つシュートが決まれば確実に日本の良い時間帯になりますが、相手が対策してきた時の対応は課題ですね。そういった時に自分がもっとオフェンスに絡んで、塁が1対1をするのではなくピック&ロールからズレを作ってあげて1対1をしやすいスペースを作ってあげたいです。

テストマッチをやってみて思ったのは、自分がファーストオプションにならなきゃいけないということです。もちろん、ニックや塁のフォーメーションであれば彼らがファーストオプションですが、上でピック&ロールをするフォーメーションの時は、絶対に自分がファーストオプションでないと。まず自分が攻めてダメだったら展開する意識を持ちたいです。塁やニックにパスをするためにピック&ロールしていたという反省が実はあって、その意識ではダメだと思いました。

──それで言うと、ファジーカス選手をスクリーナーとして使うピックプレーは多かったのですが、八村選手との連携はまだこれからという印象でした。

回数自体がそんなになかったと思います。そこはワールドカップまでにきっちり合わせていくしかないです。

「日本が盛り上がるように結果を出したい」

──そのワールドカップの開幕がいよいよ近づいてきました。どんな気持ちで臨みますか。

人生で一番ワクワクする、本当に楽しみな大会です。相手が強ければ強いほど楽しいし、自分の限界を突破できるんじゃないかという期待もあります。その経験もしっかり大事にしていきたいですし。日本が世界を翻弄できる素晴らしい機会だと思うので、予選グループ突破をまずは目指して、日本が盛り上がるように結果を出したいと思います。

──予選グループ3試合目のアメリカには胸を借りる形になると思います。その前のトルコ、チェコで勝利が絶対に必要になりますが、比江島選手はどんな意識を持っていますか?

僕はチェコとの対戦をすごく意識しています。リオ五輪の最終予選で当たった時は鼻をへし折られたじゃないですけど、本当にやられてしまったので、今回はあの時とは違うんだというところを見せて、意識としては絶対に勝つつもりでいます。

僕自身もチームとしても、あの時と比べたら絶対に成長していると自信を持って言えるので、それを証明する試合になります。予選グループを突破するには絶対に勝利が必要だし、非常に難しい相手なことは間違いないですけど、でもやれる自信はあります。

日本での国際強化試合では良い経験ができました。ドイツ戦に勝てたことも含め、自信を持って一つひとつのプレーをしっかりできるようになっていると思います。ディフェンスで守って、リバウンドを撮って、最後に決めきる。そういう力が身に着いていると感じています。