SP『グレート・スピリット』を初披露した宇野昌磨

 シーズンオフの最後のアイスショーとなる「フレンズオンアイス」の公開リハーサルが行なわれ、宇野昌磨がキレキレの滑りを見せた。メインコーチを置かずに臨む予定の新シーズンに向け、準備が順調に進んでいることをうかがわせた。

 この日は、昨季のエキシビションナンバー『グレート・スピリット』をショートプログラム(SP)の試合用にアップグレードしたプログラムを、ユニークな衣装とともに初披露した。質の高いトリプルアクセルを跳んでみせたほか、十八番のクリムキンイーグルで魅了し、最後は躍動感あふれるダンサブルなステップで見ごたえ十分の演技だった。試合用のSPとしては出来立てホヤホヤだったが、滑り込んできた曲だけにエキシビションとはまた違った印象を見せて会場を沸かせた。

 また、髙橋大輔とチャーリー・ホワイトとのコラボナンバーで、スピーディーな滑りとコミカルな演技を見せるなど、昨季よりもスケーティングの向上が際立っていたのは間違いない。

「昨季もアイスショーでよく使っていたプログラムの『グレート・スピリット』をSPにしようということになり、試合用にちゃんとジャンプも入れ、ステップも入れて、つい先日、作り直しました。とても体力的につらいところはあるんですけども、僕にとっては初めて、スタートから最後まで動きっぱなしのプログラムになっています。これがシーズン終わりには簡単にできるように、滑り込んでいきたいなと思っています」

 宇野自身が話すように、新SPは速いテンポで激しい踊りを最初から最後まで滑る。エキシビションの時はジャンプの難易度を落として表現に重点を置いていたが、勝負するためのプログラム構成に変えて武器である4回転フリップが加わり、4回転+3回転の連続ジャンプも跳ぶことになっている。昨季はこのエキシビションナンバーを滑ることで、内にこもりがちだった自己を解放させ、シャイなところを払拭した宇野にとって、また一段、ステージを上げる大きなチャレンジとなりそうだ。

「SPのジャンプ構成は昨季と同じで、4回転フリップ+3回転トーループ、4回転トーループ、3回転アクセルの予定です。今回のプログラムが激しいからといって、その分、点数が上がるとは考えていません。今季の僕は、点数にならない部分でも『そこはやりたい』と自分で思ったらやります。正直、試合ですし、競技ですから、点数を求めないといけないですけども、僕は点数よりも、自分のまだやってこなかったことや、自分のスケートを見つけたいと思っているので、こういうプログラムにしました」

 一方、フリーは新たな振付師であるデヴィット・ウィルソン氏が手がけた『ダンシング・オン・マイ・オウン』となったが、これも宇野にとっては新境地となるかもしれない。

「フリーを作ったのは2週間前で、まだ作りたてです。新しいフリーはすごく滑るプログラムで、スピード感があるんです。流れを途切らせないまま、速いスピードで流れを作っていく感じの演技、というのが僕のイメージです。本当は『フレンズオンアイス』でやりたい気持ちはあったんですけど、アイスショーだとリンクが狭い分、どうしても急カーブになってしまうので、やらないことになりました。

 ボーカルも入っていて、ショーナンバーに近いフリープログラムではあるんですけども、ジャンプを入れるには結構しんどいと思うくらい、ぎりぎりまでステップやトランジション(つなぎの滑り)を入れているので、そういったところをシーズン後半になっても抜かずに、最後までプログラムとして作っていけたらいいなと思っています」

 2015-16シーズンにシニア転向後、4年目のシーズンだった昨季は、天国と地獄を味わった。四大陸選手権では、国際スケート連盟主催の主要国際大会で初めてのタイトルを獲得して、シニアの個人戦としては23試合連続表彰台に立つ偉業を成し遂げた。だが、3シーズンにわたり表彰台の常連で、優勝を狙っていた世界選手権では、SPで6位と出遅れて総合4位となり、不甲斐ない結果にがっくりと肩を落とした。

 それまでは、どちらかといえば淡々と戦いの場に身を投じていた宇野にとって、初めて勝利への意欲を前面に出して臨んだ世界選手権で、納得のいかない演技となったことは、大きな失望だったに違いない。何かを変えないといけない--そんな考えが湧き起こったからだろう。幼少時から指導を受けてきた山田満知子コーチと樋口美穂子コーチから離れ、競技用のプログラムも初めて著名な振付師に依頼することにしたのが今季だ。

「そんな自分のこれからが楽しみ」と宇野は言う。

「今シーズンの目標は、正直、あまり考えていません。SPとフリーのプログラムをすごくいいものにして、一刻も早く皆さんにお見せしたい気持ちがあります。今季はあまり順位や点数にこだわっていなくて、昨季はこだわったジャンプにもこだわっていません。それ以上に、今季は表現をお見せしたいと思っています」

 今季の宇野が”魅せるプログラム”でどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみだ。