昨シーズンはファイナルの最終ゲームまでもつれる大混戦となったTリーグ女子。レギュラーシーズンでは、木下アビエル神奈川に後塵を拝していた日本生命レッドエルフが、劇的な逆転劇で初代チャンピオンに輝いた。木下と日本生命--。石川佳純を筆頭に個々の能力が高い木下と、平野美宇、早田ひなのダブルエースを擁する日本生命。1年目のシーズンに関してはタレント的にも戦術的にも、この2チームの存在は際立っていた。



優勝候補の木下。エース石川佳純がチームを引っ張る

 今シーズンも基本的な構図は大きく変わらないだろう。木下と日本生命の2強中心にリーグは回っていくことになる。

 戦力的に、一番手はやはり木下になる。昨シーズンはレギュラーシーズン全21戦で18勝、勝ち点60を記録し、2位の日本生命との勝ち点差は17まで開いた。ファイナルでは日本生命の勢いに屈することになったが、戦力の充実度では他のチームの1歩も2歩も先を行く。

 チームの中心は、やはりエースの石川だ。常に安定したプレーで、勝敗を左右する場面では必ず石川が指名される絶対的な存在。来年のオリンピックへの出場争いから、今シーズンは欠場も出てくるはずだが、それは日本生命も同じ。日本人歴代最強のサウスポーに大きな死角は見当たらない。とくに日本人選手との対戦では、圧倒的な力を発揮する石川だけに各チームはオーダーに頭を悩ますことになりそうだ。

 石川のほかにも、浜本由惟、長崎美柚、木原美悠、張本美和ら実力者が顔を揃える。中でも、14歳ながら全日本選手権シングルスで決勝に駒を進めた木原の躍進はめざましく、そのポテンシャルは非常に高い。彼女が順調に成長すれば石川とのダブルエースとして君臨しても不思議ではない。また若手の長崎、張本の出場機会が増えれば、年齢層でもバランスがとれたチームとなる。若手が伸びしろを持つことが、木下のストロングポイントでもある。

 唯一懸念されているのが、昨シーズン、チームの屋台骨を支えたユアン・シュエジャオが今シーズンは参戦しないこと。だが、香港のエース、ドゥ・ホイカンが残留することから大きな戦力ダウンにはならないはずだ。ドゥは世界ランキングで11位に位置しており、この数字はTリーグ所属選手の中でも、石川、平野に次ぐ3番手。実力的にも両者と遜色ないだけに、昨シーズン以上にシングルスでの起用が増えてきそうだ。

【木下アビエル神奈川】(新加入選手なし)
石川佳純
ドゥ・ホイカン(香港)
浜本由惟
森薗美月
長崎美柚
木原美悠
張本美和

 昨シーズン、初代チャンピオンに輝いた日本生命。連覇への期待も高まるが、いぶし銀の活躍で優勝に貢献したチャン・チェンチェン、ジャン・ホイの中国人選手の離脱は戦力的に痛いところだ。21日に加入が発表されたシンガポール代表のオリンピアン、ユ・モンユは、リオデジャネイロオリンピックでも日本代表を苦しめた強豪だが、中国人選手の退団により平野と早田のダブルエースにかかる負担は大きくなるだろう。

 戦力的にはややダウンという見方が妥当。そうはいっても、チャンピオンチームだけが持ちうる経験値は、今シーズンも大きなアドバンテージとなる。早田いわく、「選手の仲がよくチームワークが抜群」というチーム力をどのように押し出していけるかが、注目ポイントだ。

 今シーズンの順位を占ううえでは、スタートダッシュがカギを握る。平野が開幕から6戦を欠場、成長株の前田美優が2試合の欠場を発表しており、エース不在の中どのようなオーダーを組めるか、村上恭和総監督の手腕が問われる。

【日本生命レッドエルフ】(◯は新加入選手)
石垣優香
森さくら
平野美宇
皆川優香
前田美優
ユ・モンユ(シンガポール) ◯
チェン・ズーユ(台湾)
早田ひな

 2強を脅かす存在として、昨シーズン3位に終わった日本ペイントマレッツを挙げておきたい。エースである加藤美優は、7月に開催されたT2ダイヤモンドで伊藤美誠を破り、日本人で唯一ベスト4入りするなど着実に力をつけている。東京オリンピックも視野に入れている加藤にとって、今シーズンへの意気込みは並々ならぬものがあるはずだ。

 また、シンガポールや香港、タイといったアジアのトップクラスが集まる多国籍軍団は爆発力があり、型にはまれば他チームは対応に苦労することになるだろう。選手個々の能力は高いだけに、あとはダブルスの配置などチームとしての形が見えてくれば、ダークホースとして面白い存在になる。いずれにしても、上位進出のためには加藤の働きが非常に大きくなってくる。

【日本ペイントマレッツ】(◯は新加入選手)
フォン・ティエンウェイ(シンガポール)
加藤美優
リ・ホチン(香港)
スー・ワイヤムミニー(香港) ◯
松平志穂
相馬夢乃
打浪優
サウェータブット・スターシニー(タイ) ◯

 昨シーズン最下位のトップおとめピンポンズ名古屋は、藤川英雄新監督を招へい。4チームの中で唯一、指揮官が交代した。若い新戦力が加入し、心機一転上位進出を目指す。

 今シーズンのチーム構成は全日本卓球2017ジュニア優勝の笹尾明日香、全日本卓球2019ジュニア優勝の出澤杏佳ら4人もの学生が所属する若いチームとなっている。シーズン中に経験を積むことで、爆発的な成長をとげる選手が出てくれば、番狂わせを起こす試合が出てくるかもしれない。

【トップおとめピンポンズ名古屋】(◯は新加入選手)
エリザベタ サマラ(ルーマニア)
森薗美咲
出澤杏佳 ◯
鈴木李茄
森田彩音 ◯
ハン・イン(ドイツ)
山本笙子 ◯
笹尾明日香 ◯

 東京オリンピックの選考真っ只中で行なわれる今シーズン。各チームのエースクラスは、ワールドツアーへの参戦や、その調整により欠場が増えてくるのは避けられない状況だ。そんな中で、下からの底上げや新戦力の台頭も含めたチーム力は、上位を争ううえで必須になる。

 その意味でも、元日本オリンピック女子代表監督である日本生命の村上総監督、現オーストリア女子代表監督も兼任する木下の劉燕軍監督の両指揮官の豊富な経験値は、アドバンテージとしてチームに還元されることになりそうだ。

 開幕戦は8月30日(金)に大阪府立体育会館で行なわれる。対戦カードは昨シーズンのファイルナルと同じ、木下vs日本生命。優勝候補の2強がいきなり激突する。今シーズンを占ううえで重要な対戦になるはずだ。