藤田光里インタビュー(後編)「大型新人」と騒がれてツアー参戦を果たして以降、ここまで紆余曲折あった藤田光里(24歳)。今回は、そんな彼女の知られざる”素顔”に迫る――。――2013年に受けたプロテストで一発合格。…

藤田光里インタビュー(後編)

「大型新人」と騒がれてツアー参戦を果たして以降、ここまで紆余曲折あった藤田光里(24歳)。今回は、そんな彼女の知られざる”素顔”に迫る――。

――2013年に受けたプロテストで一発合格。同年のQT(※)も1位で突破して、新人戦の加賀電子カップも優勝。鳴り物入りでツアー参戦を果たすなど、プロ生活のスタートはとても順風満帆に見えました。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。現在はファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの『リランキング』までの大半の試合には出場できる。

「実際のところ、私の中ではプロテストに受かったことも、びっくりだったんですよ。『オッ、一発で受かった!』って感じで。それで、その年のQTでも1位になって、レギュラーツアーの出場権を獲得できたことも驚きでした。翌年(2014年)のレギュラーツアーも、自分ではまだまだ予選を通過できるような選手だとは思っていなかったのに、賞金シードが獲れて……。ツアー2年目でフジサンケイレディスクラシックを勝っちゃった時には、『あ~、もう目標達成しちゃった』みたいな感じになっていました。

 だから、その後の1、2年の間は、目標が見つからなかったんです。何を目指してがんばればいいのか、わからなくて……。そうしているうちに、ヒジが痛くなって……。なんか、そういう大きな波に乗って、今、こういうふうになっています(笑)」

――「大型新人」と称されて、デビュー当初から騒がれ、注目されていました。そういう環境にあったことは、どう思っていますか。

「重荷ではないんですけど、もともとジュニアの時代から期待されるのが苦手というか……。何だろう……、『自分はそういう(注目されるような)感じじゃないんだよなぁ』という違和感みたいなものがあって、(自分の中で)常に葛藤がありましたね。

 ありがたいことなんですけど、当時は取材の量とかも多くて、それがプレッシャーになっていって……。『がんばります!』『優勝します!』と言って、自分を奮い立たせるタイプの人もいますけど、私はそれが、自分に対してのプレッシャーになってしまうというか。

 だから、『優勝します』とかそういうことは言いたくなくて、今でもそういうことはあまり言わないですけど、その頃はとく謙虚というか、どんどん控え目な発言をするようになっていきました。自分のことを『あまり取り上げてほしくない』と思っていました。有名になりたくなかったし(笑)」

――プロは有名になってこそ、という感じがしますが……。

「もちろん、プロになればそうなんですけど……。でも、地味にやっていきたかったので」

――「地味」ですか。

「そう(苦笑)。人に(自分のことを)覚えられることとかも怖かった。覚えられるということは、イコール、期待もされるわけじゃないですか。期待されると、『何で(優勝)できないんだろう』って、焦りも感じるじゃないですか。自分が単に『何でできないんだろう』って思うのと、周りに期待されることでそう思って焦るのは、やっぱり違いますよね」

――根が真面目なんですね。

「めっちゃ、真面目ですよ!(笑)」

――ところで、今話題の「黄金世代」の選手たちをどう見ていますか。

「すごいです! 毎回『優勝します!』って言うじゃないですか。メンタルが、すごいなって思いますね。私がそんなことを言ったら、1個ボギーを打っただけで、ハァ~って落ち込んで……。『今日はもうやめてもいいですか』って思ってしまうくらい、(自分は)メンタルが弱いんで(苦笑)」

――あるベテラン選手が、「ちょっと前の若い子たちは、大きなミスをひとつすると、そこから崩れていく子が多かった。優勝を争っている際などは、それを待っていればよかったけど、今の若い子たちは、ミスをしても、そこから盛り返してくるんです」という話をしていました。

「確かに、そう思います。その『崩れていく子』というのは、自分たち世代のことだと思うんですけど、ボギーとかダボを打つと(それを引きずって)そのままバーディーも取れなくて、結局自滅、みたいな……。それって、もうメンタルが弱い典型的なパターンじゃないですか。でも、今の若い子たちは、ボギーを打とうが崩れない。すぐに取り返してくるし、バーディーの数がすごく多いっていう子もたくさんいますよね」

――そういう若い選手たちを、どういうふうに見ていますか。

「ヒジを手術する前あたりは、シードを失って落ちていく自分と、新しい子たちがツアーに入ってくるのが重なる感じで……。焦りではないんですけど、『あぁ~、なんか(自分の)居場所がなくなっていくなぁ』という感じがしましたね。『あっ、これって、(自分が)フェードアウトしていく感じなのかな』と思いました。

 フェードアウトの世界じゃないですか、この(ゴルフの)プロの世界って。『やめます』『引退します』と言って第一線から退く人はごくわずかで、大半の選手が自然にいなくなっていく。『私は、そっちの流れなんだな』って思っていました」

――若い選手たちの存在は、脅威に感じていますか。

「まあ、それでレギュラーツアーから押し出されているわけですから(苦笑)。でも、一緒に回っていると『楽しいな』って思います。(若い選手たちは)見ていて楽しいゴルフをしますから。さっきも言いましたけど、ボギーを打ってもめげず、バーディーをどんどん取りにいく。そういうゴルフは、本当に見ていて楽しい。見ていて楽しいゴルフをやっているということは、スコア的にも上位にいるってこと。それが、今の若い子たちの強さなんじゃないでしょうか」



最近は『乃木坂46』にハマッているという藤田光里

――プライベートな話も聞かせてください。今、ハマッていることはありますか。

「『乃木坂46』です」

――推しメンとか、いるんですか。

「松村沙友理ちゃん。他のメンバーも、みんなカワイイ。可愛すぎて、涙が出てきちゃう(笑)」

――ライブにも行かれるんですか。

「行きますよ。今年は2回、行きました。周りの男の人たちと一緒に、ペンライトを振り回しています。まだ、ハマッて2年ぐらいなんですけど、もともとアイドルが好きで、最初は衣装がカワイイなってところから入って、それからテレビを見たりして。ライブとかは行ったことはなかったんですけど、たまたま見た『乃木坂46』にはドハマりして、今では腰にタオルとかつけて、めっちゃ(ライブを)楽しんでいます」

――ライブは、ひとりで行かれるんですか。

「母と一緒に行きます。だって、ひとりだと恥ずかしいじゃないですか。プロゴルファーで一緒に行ってくれるような人もいないので……」

――探せば、いるのではないですか。

「いやぁ~、どうですかね……。以前、三浦桃香ちゃんがファンだって言っていたんですけど、今年になって、ネットのニュースの記事で『乃木坂オタク、卒業します』って、出ていたんですよ……」

――オフは、どんなことをして過ごしていることが多いですか。

「買い物が大好きなので、とくに買いたい物がなくても、お店をぷらぷらとして、服を物色していることが多いです。服が好きなんです」

――『乃木坂46』が好きでしたら、カラオケに行って歌ったりはしないのですか。

「カラオケは、行っても歌わないです。音痴だから。妹から『歌うな』って言われていて……。音楽は好きで、いつも聞いています。もともと『Superfly』さんが好きで、ファンクラブにも入っていて、私の中では殿堂入りしています。そこから、最近は『乃木坂46』ですね」

――好きな漫画はありますか。

「うちの家、漫画禁止だったんです。だから、漫画のこと、何も知らないんですよね。いまだに漫画の読み方すら、わからないですから。絵があって、どの順番で読めばいいんだろう……って感じです」

――好きな男性のタイプとかはありますか。

「総合的に、優しかったらいいなって思います」

――外見の好みとかはいかがでしょう。

「それは、とくにないですね。俳優さんで言うと、遠藤憲一さんとか、脇役の人が好きなんですよね。鈴木浩介さんとか」

――「勝負メシ」といったものはありますか。

「勝負メシですか……焼き肉ですかね。いっぱい食べますよ。美味しいお店があれば、試合の週でも2回は行きます。タンとユッケが好きです」

――試合の週などは、お肉を控える選手も多いと聞きます。

「私は、ぜんぜん大丈夫です。好きなことは、我慢しないんです」

――スイーツはいかがですか。

「スイーツも大好きです。ケーキとか。和菓子はちょっと苦手ですけど」

――ご自身で料理はされますか。

「たまにします。魚料理以外であれば。料理は最近やり始めたばかりなので、まだお魚を触る勇気がないんです。最近、うまくいった料理は……、天津飯が一番うまくできたかな」

――お酒は飲まれますか。

「最初にビールを2杯ぐらい飲んで、そのあとジンジャーハイだったら、5杯ぐらいいけますね。試合前は、なるべく控えます。あと、めっちゃ叩いた日の夜とか(笑)」

――ゴルフが嫌いになったことはありますか。

「いっぱいあります。数えきれないくらい」

――そこから、どうやって立ち直るというか、ゴルフに対して前向きになっていくのですか。

「寝たら、復活します!」

――ありがとうございました。今後の活躍を期待しています。

(おわり)

藤田光里(ふじた・ひかり)
1994年9月26日生まれ。北海道出身。2013年、プロテストに合格。同年のQTで1位となり、翌2014年シーズンからツアーフル参戦を果たす。そして、「大物新人」と称された評判どおりの活躍を見せて、ツアー1年目ながら見事にシード権を獲得した。さらに、翌2015年シーズンにはツアー初勝利を飾り、賞金ランキング18位という好成績を残した。しかし2016年シーズン以降、左ヒジを痛めて低迷。2017年シーズンにはシード権を失うことになった。それでも、そのオフに左ヒジを手術。そこから順調な回復を見せて、2019年シーズン、レギュラーツアーで好成績を残し、ステップ・アップ・ツアーでも優勝するなどして、復調ムードにある。