文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

ヘジテーションから加速、一瞬で決めた同点シュート

ワールドカップに向けた国際強化試合の締めくくりとなる、チュニジア戦。ラストプレーで決勝シュートを決められる悔しい敗戦となったものの、八村塁をベンチから外して休養させた試合で接戦を演じられたことは一つの収穫だ。

チュニジアはアルゼンチンやドイツほどではないにせよ、やはり国際経験豊富な強豪であり、7.2フィート(219cm)のビッグセンターであるNBAプレーヤーのサラー・メジリを軸にした高さと強さは圧倒的なものがあった。

どの選手もフィジカルで日本を上回り、日本の攻めが機能しているかどうかのバロメーターになる『ペイントタッチ』がうまく行かず攻めがアウトサイド一辺倒になる中、21分のプレータイムを通じてそのディフェンスをこじ開ける奮闘を見せたのが比江島だった。

先発出場した比江島は試合開始からの5分で流れを作れなかったことを「ペイントエリアでもっと力強くプレーすべきだった」と悔やんだが、第2クォーター以降はその気持ちをプレーで表現した。チュニジアの強力インサイドにも臆すことなく、ピック&ロールから次々とシュートチャンスをクリエイトし、ビハインドを背負う状況で日本が踏み止まるきっかけを作った。

比江島のハイライトは、最終クォーター残り1分を切って2点ビハインドの場面。右ウイングの位置でボールを受けると、ヘジテーションで相手に飛び込むタイミングをつかませず、そのまま一気にトップスピードへ。密集地帯の中でも突破するコースを選んで、豪快なレイアップへと持ち込む。勝負どころで真価を発揮する同点弾、『比江島タイム』の真骨頂というシーンだった。

「自信を持って一人ひとりがしっかりプレーしている」

敗れてもなお、収穫のある試合。劣勢の中でも屈することなく戦い抜く力は、ワールドカップでも日本の武器になりそうだ。それは選手がそれぞれの舞台で経験を積むことでスキルを高め、なおかつチームが勝つことで自信をつけた結果だろう。

比江島は言う。「アジア予選の8連勝や、昨日のドイツに勝ちきるっていうところでの勝ち癖がついたこともそうだし、自信を持って一人ひとりがしっかりアタックしてターンオーバーを少なく、最後までゴールできた結果。ディフェンスでも守って、リバウンドを取る意識だったり、最後に決めきる力が身に着いてきていると思います」

その比江島の変化について問われた指揮官フリオ・ラマスは「変わったのは髪型ぐらいかな」と会見場を笑わせつつ、それとは別に真面目な表情でこうも語っている。「比江島は常に大事な選手であり、本人にもこのチームの中心選手になってほしいと言っている。それだけ重要な役割を担っているし、常に結果を出してくれている。ただしチームは生き物と同じで、いろんな選手がいて形が変わる。(八村)塁や(渡邊)雄太がいれば変わる、そういう形でチームを作っていく。その中で比江島は得点、アシストで常に貢献する選手で大事なピースだ」

チームがどんな形に変わろうと、比江島が重要な役割を担うことには変わりない。このチュニジア戦のように、勝負どころの1本を彼に託すシーンはワールドカップ本番にも出てくるはずだ。