文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

トム・ホーバスが指揮官に就任して以降、バスケットボール女子日本代表では2017年のU-19ワールドカップ組の台頭など若返りが目立っている。長期的な視点で考えれば世代交代は大事だが、来年に迫った東京オリンピックで勝つためには、経験豊富なベテランの力も欠かせない。

そんな中、この春から代表復帰を果たしたのが本川紗奈生だ。コンディション不良もあってホーバス体制では本格的な代表参加はなかったが、リオ五輪では持ち味の強烈なドライブを武器に、吉田亜沙美とのガードコンビで日本の高速バスケを牽引した。4番、5番ポジションの選手も積極的に外角シュートを放つスモールバスケットボールを突き詰める日本において、ゴール下へのアタックからのパスアウトは大事なオフェンスパターン。だからこそ、唯一無二のスラッシャーである本川は、今の女子代表がさらなるレベルアップを果たすための重要な鍵を握っている。

「不安を感じたり、落ち込んでいたりする暇はない」

──本川選手にとっては、ここまで本格的な代表参加はリオ五輪以降では初めてだと思います。ホーバスヘッドコーチのスタイルへの適応はどのように感じていますか。

ヘッドコーチとしては初めてですが、リオ五輪の時もトムさんはコーチとして代表におり、そういう面では新しく入ったメンバーよりは理解していると思います。ただ、選手としてトムさんのバスケットボールを表現できているかと言われれば、全く足りていません。2017年、18年と代表でプレーしている選手たちには届いていない。まだまだ噛み合っていないところはあるので、泥臭いプレーやハードワークの部分をもっと出していきたいです。また個人的にはドライブからどうやって味方に得点を取らせるようなアシストができるのか、もっと考える必要があります。

──公開練習を見ていても、本川選手はホーバスヘッドコーチと1対1で話しているなど、積極的にコミュニケーションを取っていました。意識しているところはありますか。

自分は代表に関して3年間ブランクがあって遅れているので、常にトムさんとはコミュニケーションを取りたいと思っています。例えば今日の練習でどこがダメだったのか、もっとどうしてほしいのかを早く聞かないと、明日に修正することができない。もっと上手くなりたいので、意見が欲しいと思っています。

──ベルギーとの強化試合で先発だったり、練習の5対5でも主力と見られるチームでプレーしています。そういう面で、不安が柔らいでいるところはありますか。

もちろん不安はありますけど、自分には不安を感じたり、怒られて落ち込んでいたりする暇はないと思っています。出るならスタートという気持ちで常に練習をやっているので、ベルギーとの試合前日にスタートと言われた時はすごくうれしかったです。ただ、自分はシックスマンでも役割をしっかりやるというスタンスです。今はスタートでも、いつ変わるかは分からない。そうなった時、自分のモチベーションが下がるのは怖いですし、どんな風に使われても活躍できるところを見せたいです。

「上の世代がリーダーシップを取らないといけない」

──リオ五輪での主力選手も今では少なくなりました。本川選手もリーダーシップを取っていかないといけないという心境の変化はありますか。リーダー像として吉田亜沙美選手のようにチームを引っ張りたいなどありますか。

ちゃんと上の世代がリーダーシップを取らないといけない。そう思わないと下の子たちも不安になります。東京オリンピックで金メダルを取るために、自分たちがそこは見せていかないといけないと、常に練習でも意識はしています。

吉田さんのリーダーシップは、あの人だからできることだったと思うので真似はしないです。あの人は、もう一言ですごい。プレーしている姿を見せるだけで、みんながついていく。自然とそういう流れができていました。一人であのオーラを放っていて、それは異次元でした。彼女はすごい努力をするし、頑張るし、妥協をしない。練習で手を抜いているところを見たことがないです。そういうところからも、あの存在感が出ていたと思います

今は、誰か一人に吉田さんの役割を任せるのではなく、みんながやらないといけない。気持ちの強い人が一人じゃなくて、何人かいればそれはチームにとっても大きいことです。全員が、責任を持つ意識を持てればすごく良いチームになると思います。

──あらためてですが、吉田選手がいない代表の変化は感じますか。

ぽっかり穴が開いた感じはします。吉田さんは3ポイントシュートだったら、パスをもらってすぐに打てる状態など、ここしかないところにパスを出してくれる。ブレイクでは「お前、走れ」みたいなぶん投げるパスが来て、私はもう全力で走ってそれを取って決めるしかない、という気持ちでした(笑)。今は、自分が主体となって「私はちゃんと走るからパスをちょうだい」といった感じでプレーしないといけないと思っています。

「あの時の身体の強さだったりも取り戻さないといけない」

──いよいよ9月のアジアカップに向けて追い込みの時期に入っていきます。本川選手にとっては国際大会に至るまでどういうところを意識して高めていきたいですか?

得点はもっと取らないといけない。また、自分のところがミスマッチになってディフェンスの部分で弱くならないようにと考えています。世界は当たりも強いので、私は小さいし細いのでそこで負けてしまったらみんなに迷惑をかけてしまう。どれだけ、守備で足を引っ張らずに頑張れるかも大事なので、意識したいです。

──リオの活躍によって、世界のバスケ関係者は本川選手のことを知っていると思います。そういう人たちに向けて、まずアジアカップでは本川選手が戻ってきたと思わせたいのか、それとも違う選手になったと思わせたいのか。どちらですか。

戻って来たと思われたいですね。だからこそ、あの時の身体の強さだったりも取り戻さないといけない。そして監督が変わったことによって、「イチなんでもやっていいよ」ではなく、プレースタイルも変わってチームプレーの中で、いかに自分のプレーを入れていくかとなりました。そこで、もっとフィットさせていくのに頭を使う必要があると思います。