第30回全日本ビーチバレー女子選手権大会(ジャパンレディース)が、大阪府泉南郡岬町のせんなん里海公園ビーチバレー競技場で行なわれた。同大会には、都道府県の代表を含めて全54チームが出場し、覇権が争われた。 参加チームが多く、例年強烈な…

 第30回全日本ビーチバレー女子選手権大会(ジャパンレディース)が、大阪府泉南郡岬町のせんなん里海公園ビーチバレー競技場で行なわれた。同大会には、都道府県の代表を含めて全54チームが出場し、覇権が争われた。

 参加チームが多く、例年強烈な暑さのもとで行なわれるジャパンレディースは、技術だけでなく、体力、精神力も試され、日本の女王を決めるにふさわしい大会と言われている。今年は30回目の記念大会となり、2015年まで採用されていたダブルエリミネーショントーナメント(※)が復活。酷暑のなか、1日最大4試合をこなさなければいけないチームもあり、いつにも増してタフな大会となった。
※1度負けたらそこで敗退となるシングルトーナメントと違って、2敗した時点で敗退となり、順位が決定されるトーナメント方式

 坂口佳穂(23歳/マイナビ)&村上礼華(22歳/ダイキアクシス)ペアも、推薦8チームのひとつとして出場。初の女王の座を目指して奮闘した。



ジャパンレディースに挑んだ坂口佳穂

 同ペアは今季、ワールドツアーを中心に活動。7月のテグ大会(韓国/1-Star※)で2位、ジャパンレディース前週のファドゥーツ大会(リヒテンシュタイン/1-Star)でも2位に入っている。また、国内のジャパンツアーでも(ともに7月の)沖縄大会、東京大会と連続優勝を飾っていて、夏を迎えて上り調子にあった。
※Star=ワールドツアーにおける大会のグレード。5段階に分けられており、最も高い大会が5-Starで、最も低い大会が1-Star

 そして、今大会には他の強豪ペアもワールドツアーから戻ってきて参戦。そのなかで、若いペアがどれほどの戦いを見せるのか、注目された。

 トーナメント4回戦から登場した坂口佳&村上ペアは、4回戦、5回戦を順当に勝ち上がって、6回戦では同じく推薦チームの鈴木千代(25歳)&坂口由里香(25歳)ペアと対戦した。

 鈴木&坂口由ペアもワールドツアーを転戦していて、ブダペスト大会(ハンガリー/1-Star)で初優勝。こちらも上り調子にあって、坂口佳は「(鈴木&坂口由ペアは)対応力が高く、ディフェンスに連動性があって、うまいチーム」と警戒していた。

 それでも、第1セットは坂口佳&村上ペアが21-17でモノにした。村上のサービスエースできっかけをつかむと、坂口佳が積極的に強打を打ち込んでいって主導権を握る。相手も攻撃のテンポを速めるなどの仕掛けを見せて、中盤までは一進一退の攻防が続いていたが、終盤も村上のサーブがことごとく決まって、坂口佳がしっかりサイドアウトを切ることで、鈴木&坂口由ペアを振り切った。

 しかし、第2セットでは状況が一変。好調な村上のサーブに対して、鈴木&坂口由ペアはレシーブポジションを頻繁にスイッチしてミスを誘い、坂口由がディフェンスに専念するなど、攻守に渡って多彩な変化を駆使してきた。すると、坂口佳&村上ペアはその戦術変化への対応が遅れて、ミスが続出。第2セットを14-21で失うと、第3セットも立て直しを図ることができず、9-15で落として、セットカウント1-2で敗れた。

 その結果、坂口佳&村上ペアはダブルエリミネーション方式の敗者復活サイドに回ることになったが、その初戦は、勝てば準決勝進出となる大事な一戦だった。相手は、ジャパンツアーで活躍している坂本実優(27歳)&沢目繭(25歳)ペア。決して楽な試合ではなかったが、好調を維持する村上のサーブを攻撃の軸とし、隙のない戦いぶりを見せてセットカウント2-0(21-16、21-16)で快勝した。

 準決勝では、西堀健実(38歳)&草野歩(34歳)ペアと対戦。経験豊富なペアで、ジャパンレディース3連覇を狙う強豪である。ともにサーブを武器とし、草野の強打、西堀の勝負強さといった強みもある。

 そんな相手に対して、坂口佳は立ち上がりから果敢に攻めた。「ワールドツアーではどんどん強打を打っていかないと通用しない。ショット(軟打)も、強打があってこそ。だから、攻撃のベースは強打だと考えている」と言うとおり、相手のサーブには狙われたものの、思い切りのいい強打で切り返し、流れを引き寄せていった。

 そして、村上のサーブで相手を崩し、草野の強打を封じると、中盤で14-7と一気に引き離した。その勢いは以降も衰えることなく、21-11で第1セットを奪った。

 これで、決勝進出も見えてきたか、と思われたが、歴戦のベテランペアがそう簡単に屈するはずはなかった。第2セットに入ると、西堀&草野ペアは強打でなく、ショットで揺さぶりをかけてきた。サーブで前後に動かされ、それによって正確なレシーブを上げられず、坂口佳&村上ペアの攻撃力は次第に低下。西堀&草野ペアに完全にゲームをコントロールされ、17-21で第2セットを失った。

 第3セットも、西堀&草野ペアがゲームを支配。坂口佳&村上ペアも粘りを見せたが、11-15で落としてセットカウント1-2で敗退した。

 決勝には駒を進められなかったが、3位決定戦に向かった坂口佳&村上ペア。6回戦で敗れた鈴木&坂口由ペアとの再戦となり、その雪辱を果たしたいところだった。しかし、試合間のインターバルが1時間もないなかで、この日3試合目だったことが響いた。過酷なスケジュールによって、動きの精細を欠いて、セットカウント0-2で敗れた。

 第1セットは、チームの武器である村上のサーブが決まらず、坂口佳のスパイクもミスが続出。16-21で失った。第2セットは、レシーブポジションの変更や、積極的な強打で立て直しを図ったものの、「決めなくてはいけないところで決められなかった」と坂口佳。粘り強く戦ったが、29-31で落として、結局4位という結果に終わった。

 大会を終えて、村上は「(負けた試合はすべて)まったくの完敗ではなかったので、余計に悔しい」と唇を噛んだ。坂口佳も、「(4位に終わったのは)我慢し切れなかった差だったと思う。こちらがいい状態を続けていると、相手は変化してくる。それに、うまく対応できなかった。間の取り方や、相手を迷わせるゲームの駆け引きなどが、私たちにはもっと必要で、まだ足りない部分」と語り、無念の表情を浮かべた。

 とはいえ、収穫も多い大会だった。村上は昨年3位に入っているが、坂口佳にとっては、ジャパンレディース初の4位。日本のトップランカーである石井美樹(29歳)&村上めぐみ(33歳)ペアは不出場だが、久々に臨んだハイレベルなフィールドで4強入りしたことは、十分に評価に値する。坂口佳も、「その部分では、素直にうれしい」と話した。

 また、もともとふたりの武器であったサーブに磨きがかかり、強打中心のアグレッシブな攻撃も威力を増している。「ミスをしても、積極的にいこうと思っていた」と村上が話すように、強豪を圧倒する勢いのあるプレーを随所に見せた。

 あとは、「いい調子の継続力、集中力、対応力(の向上)。目標が目標なので、もっと成長のスピードを上げていかないと間に合わない」と、ふたりは声を合わせて頷く。そして、坂口佳がこう続けた。

「次に(強豪)チームがそろった試合でどう勝っていくか。それが、来年の東京につながると思う」

 ビーチ―バレーボール界も、東京五輪に向けての熾烈な争いがまだまだ続いていく。坂口佳&村上ペアが、決して低くない”壁”をどう乗り越えていくのか。今後も注目である。