Tリーグ開幕直前!チェアマン・松下浩二が明かすリーグの未来(後半)

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 来る8月29日(木)にTリーグの2シーズン目が幕を開ける。昨シーズンは開幕戦とファイナルで大きな注目を集め、まずまずのスタートを切った。果たして今シーズンはどんなサプライズを見せてくれるのだろうか。Tリーグ創設者の松下浩二チェアマンが、今シーズンの見どころ、強化、未来への布石について語ってくれた。



「新たな試みを積極的に仕掛けていきたい」と語る松下チェアマン

--長期的な視野に立つと、4チームでのリーグ戦は同カードの試合が多くなり、マンネリ化の懸念もあるかと思います。

「その点に関しては、いろいろなところからご意見をいただいています。現段階で明言はできませんが、早期で参入チームの増加を検討しています。早ければ東京オリンピック後の20年から参加チームの増加ができればと思います。男女とも2チームずつを追加し、6チーム制でリーグを運営していくことを想定しています」

--リーグのレベルを保つという意味では、チーム数の増加はバランスが難しい面もあるのではないでしょうか?

「昨シーズンに関しては言えば、世界ランキングでトップ30~40位の選手ですら、ベンチに座っている試合が多く目につきました。これはリーグのレベルの高さゆえでもあります。上のレベルが高すぎてトップクラスの選手ですらあまり試合に出られない状況でした。そんな状況もあり、チーム数を増やさないともったいない、とすら考えています。

 一方で裏を返せば、Tリーグの競技レベルは世界的にも極めて高い水準にあるという自負があります。チーム数が増加しても、競技レベルは保たれるというのが私の考えですね」

--リーグ参戦の条件として、各チーム6歳以下の育成機関を3年以内に設けるという制度がありましたが、進捗はいかがでしょうか?

「T.T彩たまが3歳の子供に中国人コーチをつけて、既に6歳以下の育成機関をスタートしています。これらは坂本竜介監督を含め、チームの運営スタッフの協力がなければ成り立ちません。私達Tリーグは卓球レベルの向上を目的にしており、打倒中国を掲げている。そのためには、幼少期から適切なトレーニングを受ける環境づくりは急務でした。この仕組み自体は中国を含め、世界の強豪国で取り入れられており、特別なことではありません。

 日本でもエリートアカデミーのような制度はありますが、強化の側面から考えるとリーグとして取り組む必要性があった。他のチームに関しても、すでに動き始めていると報告を受けています」

--年齢を6歳以下に絞っているというのは、何か理由があるのでしょうか?

「これまで日本の卓球のトップアスリートは、特殊な環境下で育ってきたという背景があります。福原愛、伊藤美誠、平野美宇、張本智和も含め、いずれも親御さんが熱心に卓球を幼少期から指導してきた結果、あれだけの選手に成長しています。もっともこれは卓球に限らずに、日本のスポーツ界全体にも言えることだと思います。それほど日本のアスリートは保護者の影響を強く受けてきた。

 ただ、そういった指導を受けられる選手はごく一部です。その意味でも、リーグとして選手の才能を伸ばすための環境づくりをサポートする必要性を感じていました。6歳以下に絞ったのは、世界のトップまで届く選手達は、それくらいの年齢からすでにハードなトレーニングを積んでいるというのが理由です」

--つまりそれだけ長いスパンでリーグの運営を考えているということでしょうか?

「そうですね。実際に結果が出るのは早くても10年後ですから。ただ、強化の仕組みづくりはリーグとしての義務でもあります」

--強化の面から言えば、Tリーグでの経験を活かして躍進した選手もいました。

「早田ひな(日本生命レッドエルフ)や木原美悠(木下アビエル神奈川)といった若手は、非常に伸びたと思いますね。岡山リベッツのリン・ユンジュもリーグの経験を経て強くなりました。彼女らはまだ10代ですから、実戦経験によりまだまだ伸びる可能性があります。Tリーグが少しでもその契機となることができていたなら、それは非常に意義のあることだと思います」

--これまでの卓球界では、団体戦でひいきのチームを応援するという概念が希薄でした。その面でもTリーグができたことで、観戦スタイルにも変化が生まれてきているのではないでしょうか?

「やはり団体戦は、チームや会場の一体感が生まれて盛り上がるんですよ。あとはチーム毎のスタイルが出てきていると思いますね。選手個人ではなく、チームを応援する。こういった文化は新しく生まれた概念かもしれません。

 選手達の配慮も大きかったですね。昨シーズンは選手達が試合後のサインや記念撮影などにも積極的に応じてくれていました。世界トップクラスの選手とも気軽に触れ合える。そんな身近な存在であることを認識したファンも多かったのではないでしょうか」

--実際T.T彩たまに関しては、試合中にチアリーディングの応援があるなど、いい意味で”卓球らしくない”シーンも目にしました。

「T.T彩たま、木下マイスター東京、木下アビエル神奈川などは、チームとして応援スタイルが確立されてきていますよね。応援団や歓声なども含めて、楽しみ方を皆さんで作っていっていただければうれしいですね。たとえば、仕事のあとにビールとツマミを片手に卓球を楽しんでもらうのもいいですし、家族で観戦してもらうのも楽しいはずです。これはダメ、あれはいいというような固定概念がないので、いろんなスタイルで卓球を観てもらえればと思います」

--まもなく2年目のシーズンを迎えますが、昨シーズンと同じように開幕でのサプライズ演出も期待していいのでしょうか?

「先日マレーシアで行なわれたT2ダイヤモンドを見て、衝撃を受けたんです。世界的なアーティストを使ったド派手な演出はもちろん、可動式の卓球台を照明でライトアップしたり、表彰式では床からスモークが噴き出すなど、これはすごいな、と思いました。こういったPRは卓球ファンだけではなく、新たな層にも訴求できるはずです。これについてはTリーグでも参考にしていきたい。例えば体育館の試合に関しては、全体にライトが届くように演出を工夫したりして、エンターテインメント性を改善していく予定です」

--最後に2年目のシーズンへ向けた抱負を教えて下さい。

「今シーズンは来場していただいたファンの満足度を高めるためにイベントの数を増やしていきます。10月にはソフトバンクが開催する復興支援の取り組み『SoftBank 東北絆CUP 2019』の競技種目に卓球を追加していただきました。地元の小中学生に参加してもらい、上位の子供達には選手と戦ってもらうような協力ができればと考えています。そういった社会貢献活動も今シーズンは増やしていきます。

 正直、今のTリーグは一つを実現させても、次の課題が生まれてくる状況です。今はまだベンチャー企業でしかないと思っていますので、私の中では危機感しかないんですよ。2年目を迎え、昨シーズンとは違う厳しい側面で見られることも多くなると思いますが、新たな試みを積極的に仕掛けていきたいですね」

(松下浩二プロフィール)
まつした・こうじ 1967年8月28日生まれ。愛知県出身。1993年に日本人初のプロ選手になった卓球界のレジェンド。バルセロナからシドニーまで4大会連続でオリンピックに出場し、世界卓球選手権では1997年大会で男子ダブルス銅、2000年大会で男子団体銅を獲得。ドイツ・ブンデスリーガでもプレーした。2009年1月の全日本選手権を最後に現役を引退。Tリーグのチェアマンとして、プロリーグ立ち上げに尽力した。