Tリーグ開幕直前!チェアマン・松下浩二が明かすリーグの未来(前編)

 2018年は卓球界にとって変革の1年だった。10月に満を持してスタートした卓球リーグ「Tリーグ」が開幕。この新たなリーグの幕開けは、卓球界の未来にとっても大きな一歩だったと言えるだろう。そんなリーグ設立の立役者であり、裏方で奔走したのがチェアマンの松下浩二氏だ。松下氏はわずか1年半の間に参加チームの確保から、スポンサー獲得まで陣頭指揮をとり、驚くべきスピードでリーグの開幕までこぎつけた。

 さまざまな不安もささやかれる中、ふたを開けてみれば開幕戦、ファイナル共に5000人を超える動員をみせ、初年度としては上々の船出だったと言えるだろう。来たる8月29日(木)には試金石となる2シーズン目の開幕を控えている。功労者であり改革者であるチェアマンが明かした、リーグ設立年の苦悩と手応え、未来に迫った。



さらに魅力あるTリーグにすべく奔走する松下チェアマン

――松下さんの構想から30年。ご自身が待ち望んだTリーグの1年目をあらためて振り返り、率直な感想を聞かせて下さい。

「まずは大きな事故やトラブルもなく、シーズンを終えられたことにホッとしています。長年の構想がやっと実現できた、と。正直、物足りない部分もありますが、1年目は『いかにTリーグを魅せるか。浸透させるか』ということに注力しました。

 その一つの例が演出面ですね。開幕戦では、オーケストラの演奏やカクテル光線のようなライトアップなど、これまでの卓球の概念にない演出ができたと思います。それは日本に留まらず、世界中の卓球リーグも含めてもです。そういった魅せ方の面では、いろんな方からご好評をいただくことができ満足しています」

――物足りなかった部分とは?

「やはり動員数ですね。もう少し多くのお客様に、Tリーグを知っていただく努力はできたかなと思います。当初は1試合平均で2000人の集客を目標にしていました。2000人を超えたこともありましたが、平均すると1200人ほどでした。シーズン通して11万人の方に来場いただきましたが、この数字はやはり物足りないですね」

――開幕前はTリーグの動員への不安の声もありましたが、開幕戦やファイナルでも5000人を超える方が来場されました。

「10月24日の開幕戦と、3月のファイナルでは同じ5000人でも中身がまったく違います。開幕戦はこちらからのアプローチで多くの方を集客できたというのが私の認識。それが半年後のファイナルでは、早い段階でチケットはほぼソールドアウトになっていました。数字面でみても開幕直後の10、11月は集客に苦労したのは事実です。ところが12月頃からはスタジアムに対する収容率が50パーセントを超える試合が出てきて、数字面でも安定してきました。それは少しずつですが、Tリーグが認知を広めてきたからだと捉えています」

――集客に関しては試合毎のバラつきも目立ちました。

「選手の知名度に依存してしまっている面があったのは否定できません。数字上では張本智和選手や水谷隼選手を擁する木下マイスター東京や、石川佳純選手らが所属する木下アビエル神奈川の試合での来場者数の多さが目立ちました。やっぱりお客様はオリンピック選手や、全国区の選手を生で見たいんですよ。それは昨シーズンの傾向としてはっきりと出ていました。そのためリーグとしては、選手個々の知名度に頼るのではなく、さまざまな試みで満足度を高める必要性を感じています。

 今シーズンからは、ハーフタイムの間にお客様参加型の5~10分程度のイベントを実施していく予定です。試合会場に卓球台を設置し、卓球という競技を体験してもらう試みも実施していきます。世界トップクラスの技術を楽しんで欲しいという面に加え、多くの方に卓球の魅力に触れていただきたいというのが私達の理念でもありますので」



創設者の松下チェアマンが、2シーズン目の抱負を熱く語った

――運営上の数字面で昨シーズンを振り返ってみていかがでしょうか?

「これは感覚的な部分もありますが、リーグが後半に進むにつれて明らかにマスメディアへの露出が増えてきたんですね。その結果の一つが、リーグファイナルでした。女子で優勝した日本生命レッドエルフの選手に関しては、民放テレビ局の生放送に出演して、多くの時間を割いて放映をしていただきました。

 私どもの調べでは、これらの露出の広告換算価値として473億円という計算が出ています。この数字に関しては1年目としては上々でしょう。認知度が向上していく中でサポートしていただける企業も増え、運営面に関しても少しずつ整ってきています」

――運営面でJリーグやBリーグといった他のリーグから参考にしている点はありますか?

「Jリーグの村井満チェアマン、Bリーグの大河正明チェアマンにはよく相談させてもらっています。とくに同じアリーナスポーツのBリーグさんからは学ぶことが多い。それは運営も含めてですが、選手の引退後のセカンドキャリアに関してもそう。アスリート達の引退後の受け皿となるための仕組みづくりも意見交換をさせてもらっています」

――Tリーグでは地方開催の試合も多く、地域の枠を超えて卓球に触れる機会の創出にもなっているかと思います。

「これまでトップレベルの選手を日本で観られる機会といえば、せいぜい全日本選手権とジャパンオープンくらいのものでした。そういった大きな大会ほど開催場所はほとんど東京などの都心部に限定され、遠方に住む方は観戦したくても物理的に難しかった面もありました。Tリーグが各都市で試合を行なうことで、全国の人に卓球を見る機会を増やしていく契機になればこれ以上うれしいことはないです」

――選手からも、「いろいろな地方のファンと触れ合えることが楽しく、新たな発見もある」という声もありました。

「今シーズンで言えば、石川佳純選手の山口県や平野美宇選手の山梨県といった選手の出身地や、鳴門市、袋井市といった新たな開催地が続々と決定しています。昨シーズンも早田ひな選手の北九州市や、丹羽孝希選手の苫小牧市、吉村真晴選手の茨城県など、選手の出身地での試合では、地元の方々に大いに喜んでいただきました。

 そういった地元で卓球する子供達や学生がトッププレーヤーの技術を見て、将来的にTリーグに参入するような選手が出てくる。そんなサイクルができれば卓球界の未来へとつながっていく。そういった部分でもリーグの意義が生まれてくるはずです」

(後編につづく)

(松下浩二プロフィール)
まつした・こうじ 1967年8月28日生まれ。愛知県出身。1993年に日本人初のプロ選手になった卓球界のレジェンド。バルセロナからシドニーまで4大会連続でオリンピックに出場し、世界卓球選手権では1997年大会で男子ダブルス銅、2000年大会で男子団体銅を獲得。ドイツ・ブンデスリーガでもプレーした。2009年1月の全日本選手権を最後に現役を引退。Tリーグのチェアマンとして、プロリーグ立ち上げに尽力した。