文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦 取材協力=UNDER ARMOUR

先週に行われたニュージーランドとの2試合、オフェンスよりもディフェンスに力を入れて奮闘する比江島慎の姿があった。層が厚くなったチームにおいても、比江島の存在感は変わらないはずだが、本人は「試合の大事な場面を任されるにはディフェンスの面でも信頼されなきゃいけない」との覚悟を口にする。それと同時に「僕の得点力が必要になる場面は出てくる、そうじゃないと出ている意味がない」と揺るがない部分はそのままだ。変わりゆくチームにアジャストする中で、比江島もまた新たな成長を遂げようとしている。どこまでも負けず嫌いな男は世界を相手に回しても、本心では一歩も引くつもりはないはずだ。

「ディフェンスの面でも信頼されなきゃいけない」

──代表選手にとっては今回が久々のまとまったオフのはずでしたが、比江島選手はサマーリーグへの挑戦があり、ほとんど休んでいないですよね。心身のコンディションはどうですか?

それを考えると疲れがドッと来てしまうので考えないようにしています。正直に言えば、休みたい気持ちがないわけじゃないですけど、その暇はないので『ワールドカップ一直線』という感じですね。でも気持ちの切り替えはしっかりできていますし、問題はないです。

──チームの状態についてはどう見ていますか?

みんな集まって練習をやる中で、日に日に状態は良くなっています。(八村)塁と(渡邊)雄太が入ることで練習の質も上がっていますし、僕自身もどんどん楽しいと感じるようになっているので、そこは非常に良い状態だと思っています。

ニュージーランドと2試合を戦って、改善の余地はあるというか、オフェンスは良いにしてもディフェンスでやられすぎているとは感じました。まだまだという方が大きいですね。個人的にはニック(ファジーカス)や塁が加わってオフェンスにフルパワーを使わなくて済む分、ディフェンスに力を使おうと意識していて、そこは自分でも成長している部分だと感じます。その意欲は試合の中でも出せていると思います。

ディフェンスと言っても特別なことをするわけじゃなく、ポジショニングだったりヘルプの位置だったり、オフボールのところでしっかりプレッシャーを与える基礎的なことをきっちりやろうと意識しています。逆にそれができないと試合に出られないという危機感があるので。オフェンスだけだったら点を取れる選手は他にいるし、試合の大事な場面を任されるにはディフェンスの面でも信頼されなきゃいけないと思っています。

──昨シーズン後半に栃木ブレックス(宇都宮)でプレーして、ディフェンスのスタンダードが上がった中で戸惑いながらも最後にはしっかりフィットしました。そもそも、ディフェンスが苦手というイメージはもともと持たれていないのでは?

そう見えているならありがたいですんですけど(笑)。やっぱり上には上がいるので、特に代表に来るとできていない方に入ると自分では思っているんです。

「僕の得点力が必要になる場面は出てくる」

──今回のワールドカップでは八村選手、渡邊選手、ファジーカス選手が揃います。その中で比江島選手は、どのようなプレーを見せたいと考えていますか?

役割はそんなに変わらないと思います。オフェンスではピック&ロールを使ってアタックして、ディフェンスを収縮させてアシストしたり、そのまま自分で攻めたり。それでも雄太や塁が入って攻めのバリエーションが増えます。塁がいることでインサイドに入れる選択肢が増えるし、雄太のリバウンドとディフェンスがあることで速攻もどんどん出ると思います。そこに自分がどう絡むか。合宿で突き詰めていけば世界に通用するレベルになると感じています。

2人が入ることで彼らが中心になると思いますけど、(フリオ)ラマスからはペイントエリアに入るプレーについてずっと言われているので、彼らのチェックが厳しくなる中で、僕の得点力が必要になる場面は出てくると思っています。そうじゃないと自分が出ている意味がないので。

シュート本数は減るかもしれませんが、自分がアタックし続けることが日本代表の助けになることを常に意識してプレーできればいいですね。

──ニュージーランドとの2試合目では大量失点で敗れました。2試合ともに相手がロングレンジからクイック&シュートをどんどん打ってきて、良い形でオフェンスが決まっても直後にあっさり走られたり、チームとしてのディフェンス面での課題をどう受け止めていますか。

Bリーグでもアジアの今まで対戦してきた国でも、ああいったプレースタイルは経験がなくて、ほとんどの選手が初めてだったと思います。ここで打たないだろうというタイミングで打ってきて、ここで攻めないだろっていうタイミングでアタックしてきて、守り方も正直あまり分かっていませんでした。ニュージーランドは世界レベルのチームの一つだし、ワールドカップ前にああいう試合が経験できて逆にプラスにとらえています。

オフェンスとディフェンスの切り替えは大事になってくるし、どうしても1対1が強くて、コースに入ってもフィジカルの強さでそのまま持って行かれたりするので、1人を2人で守る、そこからのローテーションはもっと大事になってきます。

それぞれが1対1でまずシュートを打たせないことが本当に大事なのですが、次がドライブに行かれた時の対応です。ヘルプをしても、次のローテーションがなくて外を打たれてしまったり、サイドからのドライブに対して僕らがやるべき守り方を徹底できていなかったり。だから試合後に(フリオ)ラマスには相当怒られましたね。ある程度言ったところで「今日はここまでしておくか」って。それでも結構言われたんですけど(笑)。

「1試合1試合を全力で、使い果たす気持ちで」

──ニュージーランドとの2試合目、苦しい試合の中でも日本の最も良かった時間帯は第3クォーターの前半で、篠山竜青選手、比江島選手、馬場雄大選手が良い流れを作りました。あそこは八村選手やファジーカス選手に頼らなかったという意味でも手応えがあったのでは?

上手く行っている実感はありましたけど、あくまで試合の中の限られた時間帯なので。本当にあそこは、ハーフタイム明けでオフェンスではなくディフェンスから意識して入りました。竜青さんも馬場もすごいプレッシャーを掛けて、まず相手のリズムを狂わせたところから流れを作れたと思います。あの時間帯だけニュージーランドに走り勝てていたのは、ディフェンスの意識から入れたのも良かったし、オフェンスの終わり方も良くて、相手にとって攻守の切り替えが難しい形を作ることができていました。僕らの戻りも速く、ポジショニングも良かったです。

やっぱり激しいディフェンスから速攻というのは良い形になります。塁も雄太もボールをプッシュして速い展開を作り出せるし、逆にニュージーランドとの2試合目は塁のマークが厳しくなって、そこでドリブルが多くなってパスが回らず、速い展開に持っていけなかったことで、自分たちで流れを悪くしてしまったのは反省です。

──個人としてはどんなテーマを持って挑みますか?

ディフェンスにももっと力を回せる分、もっともっとプレッシャーを掛けていきたいと思います。それとともに、やっぱり自分はオフェンスが得意だという意識もあるので、もっと攻撃の起点になっていきたいです。

──ワールドカップの目標はどこに置きますか? 2020年に繋げるには何が必要でしょう?

こうしてテストマッチが始まって、次のアルゼンチン戦から僕らもギアが上がると思うし、そういう意味ではワクワクしています。試合をやることでまた課題も見つかると思いますが、もちろん全部勝つ気で臨みます。

ワールドカップについては、僕もそんなに先のイメージはわかなくて、一つの試合に全力で勝ちに行くとしか言えないですね。予選を突破して1試合でも多くやりたいという気持ちはありますけど、1試合1試合を全力でやっていこうと思います。グループリーグの3試合で体力を使い果たす気持ちでやらないと勝てない3チームなので、そこは意識してやるつもりです。