「悔しいです。選手は皆、実力を発揮しきれずに負けてしまったと思います。」大会後、選手は涙を見せた。台風10号の影響で15日の競技はすべて中止となり、一夜明けて行われた全日本学生選手権(インカレ)女子団体戦。女子団体も決勝トーナメント進出校…

 「悔しいです。選手は皆、実力を発揮しきれずに負けてしまったと思います。」大会後、選手は涙を見せた。台風10号の影響で15日の競技はすべて中止となり、一夜明けて行われた全日本学生選手権(インカレ)女子団体戦。女子団体も決勝トーナメント進出校は16校に絞られ、かつてなくし烈な予選が繰り広げられた。予選では早大は選手3人全員が3中を記録し12射9中でこれを突破。2年連続で男女アベックでの決勝トーナメント進出を決めた。しかし迎えた決勝トーナメント1回戦、愛知淑徳大学との一戦では大きく崩れて12射4中。思うように力を出せないままに1回戦でその姿を消した。

 予選は順調だった。大前を務める武川衣万里(スポ1=山口・宇部フロンティア大香川)が初矢をしっかり詰めると、永井優衣(文4=東京・早実)、武藤香帆(文構4=東京・青山)も続き、7連中の好発進を見せた。しかしここで永井が3本目の矢を抜いてしまう。「練習通りの外し方だったので、特に動揺はなかった」と振り返るが、続く武藤、武川もそれぞれ外してしまい、チームに嫌な流れが生まれる。この時永井は「ここで中てられなかったら終わりだ、ここで中てなかったらいつ中てる」と自らを鼓舞。4本目をきっちり的中させ、嫌な流れを断ち切った。これに落の武藤も応え、結果は12射9中。上位16校に与えられる決勝トーナメント進出権を勝ち取った。


予選で上々の立ち上がりを見せる女子団体

 しかし決勝トーナメント一回戦で早くも調子が崩れてしまった。相手は予選を10中で通過した愛知淑徳大学。武川が初矢を外すと永井、武藤も初矢を決めることができず、立ち上がりから大きくつまずいた。ここでもいち早く立て直したのは永井だ。「私がここで中てないと、もう中らないだろうなという空気は感じていた」と最上級生としての意地で2本目、3本目を的中させる。しかし早大のこの2中に対して愛知淑徳大はこの時点で6中。もはや逆転は不可能であった。4本目は「詰めても勝てないのが分かっていたので吹っ切れた」という武川と、「早稲田大学の名に恥じない1本を引き切ろう」という気概を見せた武藤がそれぞれの執念で的中させたが、勝利には遠く及ばず。無念の1回戦敗退となった。


最上級生としての意地を見せた永井

 台風の影響で「一日練習の日が空いてしまったというのは結構大きかった」と永井は振り返り、武藤は「いつもの自分の感覚とは違うなと思ったところをうまく対応できなかった」と悔しさをにじませた。4年生であるふたりにとって、今年は最後のインカレだった。結果は満足のいくものではなかったが、それぞれが意地を見せ、チームにその存在を示した。一方、「良いものが出た次には崩れてしまうのは自分の悪い癖」だと話すのは大前を務めた武川だ。この日は1年生でありながらも大前として、4年生のチームメイトの前に立って引っ張っていくというプレッシャーに耐えながら弓を引いていた。武川はスポーツ推薦で早大に進学してきた実力者であり、今後の活躍に期待が寄せられている選手だ。そんな武川の身には部からの期待やスポーツ推薦進学者という自負心、大前としての責任、後ろで引く先輩の存在など、様々なプレッシャーがのしかかる。「いろいろとプレッシャーに感じることが多いので、どれだけ後ろの人たちを信じて頼って、自分のことに集中して引けるかが課題」だと、期待の新人は今必死でもがいている。しかしそれでも、「大前を降りるつもりはないので、大前として1本目をしっかり詰められるようになって、チームに貢献したい」とそのプライドものぞかせる。武川の今後の成長に期待だ。秋には関東学生連盟リーグ戦(リーグ戦)が控えている。現在2部リーグに所属する女子部だが、「早稲田は1部で戦ってこそ」と1部昇格に懸ける思いは強い。インカレでベスト16の成績を残し、1部リーグを狙える実力があることは証明している。この大会で見えた課題を乗り越えて、1部リーグの舞台に返り咲くため、早大は既に舵を切っている。

(記事 菊元洋佑、写真 岡秀樹、岡田理佳子)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▽女子団体

武川、永井、武藤

予選

武川  ○○○×
永井  ○○×○
武藤  ○○×○

12射9中

決勝トーナメント一回戦

●早大4中―愛知淑徳大7中


コメント

永井優衣(文4=東京・早実)

――決勝トーナメント1回戦敗退となってしまいましたが、今の率直なお気持ちは

悔しいです。選手は皆、実力を発揮しきれずに負けてしまったと思います。いつも通りの射ができていれば勝てない相手ではなかったので、そこはやっぱり悔しいですし、次の試合に向けての課題になったな、という気持ちです。

――台風による日程変更の影響は

昨日は、本来お借りしていた道場で練習するつもりだったのですが、その道場も閉まってしまって一日練習の日が空いてしまったというのは結構大きかったです。弓道は毎日1本でも引かないと体がなまってしまうので、そこは台風の影響があったと思います。

――昨日は何をしていましたか

練習は特に何もできていなくて、夜にゴム弓を少し引いて、明日引くときの注意点を整理していました。

――自分の中で引くときに気を付けていたことは

今日はずっと弓手のことだけを気をつけていました。とりあえず弓手さえしっかり手の内を絡めて引いていれば中るという状況には持ってこられたので、そこだけ気を付けていました。むしろそれ以外のことを気にすると弓手がおろそかになってしまうので、弓手と的の星を見続けることだけ意識してやっていました。

――初日の男子の試合をみて刺激を受けた点はありましたか

感動もしましたし、仲間が堂々とアリーナで引いている姿には私たちも勇気づけられました。彼らにできて私たちにできないはずがない、という自信を得られました。

――予選の3本目を抜いた時はどのような心境でしたか

本来やってしまったと思うべきだと思うのですが、むしろ練習と変わらないな、と思っていました。練習も2本目と3本目が苦手で、矢所も前だったのでそれも練習通りでした。連中を止めたのは申し訳なかったのですが、良くも悪くもいつも通りだったので特に動揺はありませんでした。

――予選の4本目を詰めた時はどのような思いで引いていましたか

いつも試合で緊張するとあまり詰められないのですが、ここで中てられなかったら終わりだ、ここで中てなかったらいつ中てる、と何とか踏ん張って離しました。

――決勝で1本目を抜いた後2本目ですぐに立て直していました

私がここで中てないと、もう中らないだろうなという空気は感じていたのでここで中てないとまずいと思い、1本目は踏ん張りが浅かったところをもっと強くいこうと思って引きました。

――今回のチームとしての目標は

もちろん日本一は目指していたのですが、その前段階としてベスト8には残りたいという話はチームでしていました。これまで決勝トーナメントには進出できても初戦ですぐ負けてしまっていたので、決勝トーナメントでも勝ちあがることを目標にしていました。

――秋のリーグ戦の目標

もちろん2部リーグで優勝して、そして1部リーグ復帰を果たすことです。

武藤香帆(文構4=東京・青山)

――決勝トーナメント1回戦敗退となってしまいましたが、今の率直なお気持ちは

早稲田大学の名前を背負って落を任されていたにも関わらず1中という情けない結果になってしまい、来ていない同期、遠征に参加できなかった人たち、応援してくれていた人たち、そして監督やコーチにも申し訳ないという気持ちでいっぱいです。

――台風による日程変更の影響は

中日が中止になってしまって昨日全く練習できない中で、今日1日ぶりに弓を引いて、いつもの自分の感覚とは違うなと思ったところをうまく対応できなかったな、と思います。

――今日の試合で気を付けていたことは

緊張をどう扱うかはかなり重要視していました。普段の練習試合や定期戦の時は呼吸のやり方等でうまく対処できていたのですが、今日はかなり舞い上がってしまって、自分の思うように緊張をコントロールできませんでした。

――落というポジションについてはどう考えていますか

チームをまとめて背負っていくポジションだと思います。同中の時に勝敗を分けるポジションでもあるので、みんなを安心させられるような射をしようと心掛けていました。

――決勝トーナメント1回戦の4本目の射を引くときに考えていたことは

最初の3本を全部抜いてしまっていたので、早稲田大学の名に恥じない1本を引き切ろうと思っていました。最後はきちんと的に中てられたので良かったです。

――秋のリーグ戦の目標は

必ず1部リーグ昇格をしたいです。それが自分をここまで育ててくれた先輩方に対する恩返しになると思います。そして今の私たちの力でそれは十分実現可能であると思います。早稲田は1部で戦ってこそだと思うので、そういう舞台を後輩たちに作ってあげたいです。

武川衣万里(スポ1=山口・宇部フロンティア大香川)

――決勝トーナメント初戦敗退という結果については

完全に気持ちのゆるみだなと思います。

――気持ちのゆるみとは

自分が早稲田に入ってから試合に勝つことがあまりなかったので、予選を通過した時に喜びすぎて気持ちが高ぶってしまって、自分の調整を優先すべきところで気持ちがふわふわしたまま試合に臨んでしまったのが一番の原因です。大前として1本目を決められていないというのが結果として表れてしまいました。

――インカレという大舞台で緊張はありましたか

最初の予選の時に先輩方が1本目を当ててくれてありがとうと言ってくださって、それは嬉しかったのですがやはりプレッシャーにも感じてしまいました。高校の時にも大前はやっていたので1本目の大事さを分かっているからこそプレッシャーも強かったです。決勝トーナメントでは1本目を抜いてしまって、このあと詰める自信がないな、と思ってどんどん自信をなくしていってしまいました。

――昨日は何をしていましたか

仲間たちと過ごしていました。あまり気持ちが緩みすぎるのも駄目なので、夜に一人になれる時間を作ったり、弓道ノートを書いたりして気持ちは作っていたのですが、結局初立しか良いものが出ず、良いものが出た次には崩れてしまうのは自分の悪い癖です。

――大前というポジションについてどう思われますか

もちろんプレッシャーも感じますし、スポーツ推薦というのが頭にちらついてしまいます。今回も4年生最後のインカレで、いいところまでいかないと、というのがプレッシャーでした。いろいろとプレッシャーに感じることが多いので、どれだけ後ろの人たちを信じて頼って、自分のことに集中して引けるかが課題です。

――初日の男子の試合を見て何か刺激は受けましたか

男子が19中を出した時はこんな身近にいる人たちがちゃんと試合で中てられるなら自分たちにもできると思って自信になったのですが、その後崩れたのを見て、今度は自信がなくなってしまいました。男子の立を見たことを後悔はしていませんが、結果を見て気持ちが左右されている自分がいるので、そこは改善しないといけないなと思います。

――予選4本目で、後ろの2人が抜く中で自分も抜いてしまいましたが

あんまり的中は見ていなかったのですが、3本目まで詰めたからいけるかなと思って気持ちが緩んでしまい、考えが甘くなってしまったかなと思います。先輩方が抜いたのは特に気にしてなかったので、ただ単純に自分に負けた結果だと思います。

――決勝トーナメント1回戦の4本目をしっかりと中てていました

これまでの3本は、矢所的に射が小さくなってしまっていました。もう駄目だと思ったので、逆に堂々としすぎじゃないかってくらい大きく引いてみようかなと吹っ切れました。相手の的中も見えてしまって、詰めても勝てないのが分かっていたので結構何も考えずに引きました。

――秋のリーグ戦の目標は

周りからは1年だからまだこれからがあると言われるのですが、4年生の最後の大会に自分は関わっているので、その先輩方のことを意識してやっていきます。大前を降りるつもりはないので、大前として1本目をしっかり詰められるようになって、あとは良い的中出した後に崩れてしまう癖を修正して、チームに貢献したいです。リーグ戦は毎週試合があるので、週ごとに射が変わってしまわないように、試合と試合の間の上手な過ごし方を見つけて、自分に合った過ごし方ができるように模索していきます。