セキ・ユウティンインタビュー(前編)18歳にして中国女子ツアー(CLPGA)の賞金女王に輝き、2017年から日本女子ツアー(LPGA)に本格参戦を果たしたセキ・ユウティン。今季は、下部ツアーとなるステップ・アップ・ツアーを主戦場としてい…
セキ・ユウティンインタビュー(前編)
18歳にして中国女子ツアー(CLPGA)の賞金女王に輝き、2017年から日本女子ツアー(LPGA)に本格参戦を果たしたセキ・ユウティン。今季は、下部ツアーとなるステップ・アップ・ツアーを主戦場としているが、6月の日医工女子オープン(富山県)で初優勝を飾って、あらためて存在感を示した。愛くるしいビジュアルのみならず、実力も急成長中の彼女に、今季の躍進の理由を聞いた――。
――今季は、QT(クォリファイングトーナメント)ランキング81位という結果によって、レギュラーツアーでのフル参戦は叶いませんでした。それでも、ステップ・アップ・ツアーで活躍。6月の日医工女子オープンでは、初優勝を飾りました。その時の率直な感想を、あらためてお聞かせください。
「ずっとがんばってきたので、優勝できてとてもうれしかったです。自信を持って、次の目標であるレギュラーツアー優勝を目指し、これからもがんばろうと思います」
――その日医工女子オープンでは、初日は57位タイと出遅れてしまいましたが、2日目、3日目とスコアを伸ばしての、見事な逆転勝利でした。
「試合前、上海で1週間ほどスイングの調整をしました。その成果もあって、初日からスイングの調子はよかったんですが、距離感がつかめず、グリーンオーバーすることが多かったんです。2日目以降、ようやく距離感がつかめ、自信を持って臨めました。初日が終わった夜に、妹と電話で話せたことも精神的によかったと思います」
――妹のセキ・ユウリさんもゴルファーですよね。
「そうです。妹は今季、中国ツアーに参戦しています。『初めて最終日を最終組で回ることになって、私、緊張しています』って電話がかかってきたので、私の経験をいろいろと話して、『大丈夫だよ』と励まして。おかげで、私も最終日は久しぶりの最終組だったんですが、妹に過去の経験を話したことで、いいイメージを持てたので、妹に感謝しなければいけません」
――仲がいいんですね。
「はい。妹は中国ツアー、私は日本ツアーに参加しているので、今はあまり会う時間がないのですが、チャットができるアプリでいつも連絡を取り合って、ゴルフのことだけではなく、何でも話します。今日、つけているネックレスは、私の誕生日に妹がプレゼントしてくれたものなんですよ。私は、妹の誕生日に洋服とピアスをプレゼントしました」
この日のネックレスは妹さんからの誕生日プレゼントだという
――優勝の瞬間、浮かんだのはどんな感情でしたか。
「ファンの方、スポンサー、コーチ、妹、多くの方たちへの感謝の気持ちです。なかでも、お父さんへの感謝の気持ちは大きいです。ゴルフを始めた時から、私の成績がよかった時も、日本ツアーに参戦して成績がよくなかった時も、必ずお父さんが私のそばにいて、いいアドバイスをしてくれたので、今の私があります」
――優勝賞金で何か買い物はしましたか?
「お父さんは赤ワインが好きなので、フランス産の赤ワインを贈りました」
――ステップ・アップ・ツアーとはいえ、日本での初優勝。中国ツアーでは5勝していますが、日本では勝利までに3年を要しました。その道のりは長かったですか。
「日本のツアーのレベルは高く、『簡単には勝てないだろう』とは思っていましたが、思っていた以上に長い道のりでした。やはり、簡単には優勝できません。がんばっている人がたくさんいますから」
――3年目の躍進の要因として、どんなことが挙げられると思いますか?
「ひとつは、環境に慣れることができたのが大きいと思います。日本ツアーはレベルが高いだけでなく、試合数も多く、コースの種類も中国とは大きく異なります。ようやく日本の環境に慣れることができました」
また、精神的にも大きく成長できたと思います。
私は、中国でジュニア時代からたくさん優勝し、中国ツアーでは18歳で賞金女王になりました。日本ツアーのレベルが高いことはわかっていましたが、今まで大きな挫折を経験することがなかったので、この2年間、『ゴルフは簡単でない』とあらためて実感しました。日本に来て、なかなか思ったとおりにいかず、戸惑うことばかりでしたが、ゴルフで大事なのは、諦めずに努力を続けることです。そのことを、この2年間で学びました。
ずっと調子が上向かず、成績も残せない――そんななかで、どうやって成長するために努力を続けるか。万全ではなくても、どう平常心を保っていくのか。多くのことを学んだ2年間でした」
――今季に向けて、とくに強化してきた部分はありますか。
「このオフは、飛距離を伸ばすためのフィジカルトレーニングに、重点的に取り組んできました。中国ツアーは、それほど距離がありませんが、日本のコースは設定が長いので、上位に進出するためには飛距離は欠かせないと感じていました。昨シーズンが終わってからは、すぐに中国に戻ってトレーニングを開始。3カ月間、一日も休まずに、みっちり肉体作りに励んだんです」
――ご自身のインスタグラムにトレーニング風景の動画がアップされていました。かなりハードなメニューをこなしているように感じました。
「おかげで、2年前はドライバーの平均飛距離が220ヤードだったのが、今は260ヤードまで伸びました。ただ、これは今後の”宿題”なんですが、シーズンが進むにつれて、疲労から少しずつ距離が落ち始めてしまいます。1年間を通して飛距離を保つためにはどうしたらいいのか、トレーニングコーチとも相談しようと思っています。
また、フィジカルトレーニングも大事ですが、技術も大切です。私はスイングの際、下半身の使い方がまだまだ不安定なので、飛距離にムラがあります。もっと練習して、スイングをより安定させる必要があります」
――インスタグラムには、激しいトレーニングによってできた手のマメの写真もアップされていました。
「ゴルフのため、夢のためにできたマメなのでキレイだと思います」
――今季はまだ前半戦が終わったばかりですが、今後の目標を聞かせてください。
「今季については、このあと中国での試合にも出場しなければいけないので、ステップ・アップ・ツアーを3試合ほど欠場しなければいけませんが、(ステップ・アップ・ツアーの)賞金ランキング2位~5位以内を目指したいです。優勝したことでセカンドQTは免除されますが、賞金ランキングで5位以内に入れば、さらにサードQTも免除され、ファイナルQTから出場できます。それは、とても大きいです。
来年の大きな目標としては、東京五輪に中国代表として出場したいと思っています。私は日本で生まれたので、日本で開催されるオリンピックにぜひ参戦したいです。中国は2名まで出場できるのですが、現状では出場は厳しいです。それでも、QTでいい成績を残して、来季日本のレギュラーツアーに参戦してポイントを稼ぐことができれば、可能性はゼロではありません。
妹は、今年の中国ツアーで賞金ランキング18位。今年は日本のプロテストに参加します。将来の目標として、いつか妹とふたりでオリンピックに出られたら最高です!」
(つづく)
取材協力:三洋化成
セキ・ユウティン(21歳)
1998年3月5日生まれ。福井県出身(国籍:中国)。上海体育学院在学中。日本ツアー参戦3年目。今季はステップ・アップ・ツアーを主戦場とし、6月の日医工女子オープン(富山県)で優勝した。身長171cm。血液型O。