初代MVP早田ひなが明かすTリーグ1年目と未来 後編(前編の記事はこちら>>) Tリーグの2シーズン目が、いよいよ8月末より開幕する。女子の開幕戦は8月30日(金)、日本生命レッドエルフvs木下アビエル神奈川。昨シーズンのプレーオフ フ…

初代MVP早田ひなが明かすTリーグ1年目と未来 後編

(前編の記事はこちら>>)

 Tリーグの2シーズン目が、いよいよ8月末より開幕する。女子の開幕戦は8月30日(金)、日本生命レッドエルフvs木下アビエル神奈川。昨シーズンのプレーオフ ファイナルと同カードがいきなり実現した。

 注目選手は何と言っても初代MVPを獲得した日本生命レッドエルフの早田ひな。プレーオフ ファイナルでは、第3試合と第5試合で対戦した袁雪嬌(エン・シュエジャオ)との激闘を制し、チームを初代チャンピオンへと導いた。この活躍ぶりを早田本人が振り返るとともに、目前に迫った新シーズンに向けて意欲を語った。



2シーズン目に向けて意欲を燃やす早田ひな

――早田さんにとって昨シーズン最も印象に残った試合はどれですか?

「結構いろいろあるんですが、とくに強く印象に残った試合は2つあります。1つは11月、福井での石川佳純選手との1ゲームマッチです。10-6で勝っていましたが、そこから4本追いつかれて……。これまでなら相手に飲み込まれてしまい、思うようにプレーできなくなるパターンでしたが、持ち直して最終的に12-10で逃げ切ることができました。Tリーグ独自のルールである1ゲームマッチは初めてでしたし、石川選手に勝てたのも初の経験でしたから。

 もう1つはやはり、ファイナルでの袁雪嬌(エン・シュエジャオ)選手との2試合。チームを初代チャンピオンに導けた試合ですね」

――ファイナルの袁選手との第3試合では、実に6度も相手のマッチポイントをしのぎ、19-17で粘り勝つという劇的な展開でした。

「実はこの試合、私自身が集中すぎていてほとんど覚えてないんです(笑)。あと1本で負けるという感覚で試合しているのではなく、後悔しないようにということだけを考えていました。最後までひたすら攻める、と。点数も意識はしていたけど、ほとんど気にならなかったんです。凌いでいるという感覚ではなく、ただただ1本1本に集中していた。あの日の私は、まさに”入って”ました」

――そういう感覚は普段から結構あるんですか?

「ありますね。いわゆる”ゾーン”に入ったら、そういう感覚になる時もあります。集中が深くなると、『あ、いつの間にか終わった』みたいな。だからファイナルでも1ゲーム目、2ゲーム目がどうなったかはあんまり記憶にないんです(笑)」

――観客側から見ると最高潮に盛り上がる試合でしたが、自身も楽しんでいたという感覚でしたか?

「今振り返ればですが、私の中でもすごく楽しめていました。逆に楽しめていたことからこそ、結果的に思い切って打ちにいけたというのもありますね。5試合目に入る時もめちゃめちゃ笑いながら入りました(笑)。チームメートと一緒に笑いながら入っていけたことで、肩の力が抜けてスムーズに試合に入り込めました」

――チームはチャンピオンとなり、初代MVPにも輝きました。今シーズンはどういう気持ちでTリーグを戦っていこうと思っていますか?

「昨シーズンのリーグ戦だけで見ると、1位の木下アビエル神奈川さんとは、結構なポイント差(勝点:木下アビエル神奈川 60/日本生命レッドエルフ 43)がありました。そこは反省する部分です。ファイナルも本当に勝つか負けるか、どっちに転ぶかわからないという試合でしたし。

 私達のチームの良さのひとつとして、チームワークが挙げられると思いますが、ファイナルでは、それぞれの選手の気持ちが一つとなって取れた初代チャンピオンだと思います。チームワークを今シーズンも活かして、もう一度優勝を味わいたいですね」

――昨シーズンの開幕前は新たに始まるTリーグを不安視する声もありましたが、蓋を開けてみるとシーズンを通して大勢のファンが会場に訪れました。

「本当にびっくりしましたね。卓球だと日本での試合はだいたい東京開催なので、地理的に来られない方もたくさんいらっしゃったと思うんです。それがTリーグでは各地で試合することができて、地方でも応援してくださる方が多いことが実感できました。地域の暖かさを感じられたことが、とくにうれしかったです。

 Tリーグが続いていく中で、さまざまな地方で試合をすることは、私の夢でもあります。どの地方に行っても応援していただけるように頑張りたいです」



「自分の新しい一面を見てもらえたらな」と話す早田

――リーグとして2年目を迎えて、観客の意識や周囲の見方も変わってきます。Tリーグの楽しみ方、今シーズン注目してほしいポイントは何ですか?

「1年目はいろんな海外の選手と試合ができることが新鮮で、思い切ってプレーができました。今シーズンは初代チャンピオンの日本生命レッドエルフに対して、どのチームも対策し、戦術を練って戦ってくるはずです。そんな中でこれまでと違うプレーで得点する、自分の新しい一面も見てもらえたらなと思います。

 あと、このチームは本当に明るくて、どのチームよりもチームワークがいいと個人的には感じているので、そういうチームの魅力に触れ、ファンになって応援していただけるとうれしいです」

――将来的に各チームの下部組織を作るなど、若い世代へ向けた卓球の普及もリーグの構想の1つですが、その点についてはいかがですか?

「10代でも参戦できるのがTリーグの良さだと思います。今までは全中(全国中学校体育大会)やインターハイのように”階級別”という認識が卓球界に浸透していました。それが中学生、高校生でも参戦できて、実際に木原美悠選手、長崎美柚選手、張本美和選手といった、自分より若い世代もどんどん出てきています。

 小さい頃から世界のトップレベルの選手と試合ができたり、その選手たちの技術を間近で見ることができる環境は、少なくとも私が小さい頃はありませんでした。未来の選手達にとってこういった環境が整ったことは、経験値としても大きいと思いますね」