マジョルカとのプレシーズンマッチに出場した岡崎慎司(マラガ) 2019-20シーズン、マラガに移籍してスペイン2部リ…



マジョルカとのプレシーズンマッチに出場した岡崎慎司(マラガ)

 2019-20シーズン、マラガに移籍してスペイン2部リーグに挑む日本代表FW岡崎慎司(33歳)は、成功をつかむことができるのか?

 岡崎のプレークオリティの高さは傑出している。ボールを受ける動き、スペースを作る動き、そのタイミングは絶妙だ。ポジション的な戦術センスにあふれたプレーで得点を生み出せる。

 スペインのサッカー関係者に好まれるFWとも言えるだろう。清水エスパルス所属時代から目をつけていたスカウトもいたほど、その評価は高かった。たとえばレアル・ソシエダの強化部長などを務めたミケル・エチャリは、2009年から日本代表の試合をスカウティングし、「岡崎はゴール前のポジション取りが天才的。敵、味方、ボールと瞬時に計算し、最適解を出せる。とりわけ、ダイアゴナルに走る感覚は百点満点」と絶賛していた。

 岡崎は世界最高峰プレミアリーグで、レスター・シティを優勝に導いている。その実績は伊達ではない。スペイン2部では屈指と言えるだろう。

 成功=1部昇格。そのロジックで考えれば、十分に可能性はある。

 マラガは昨シーズン、3位だった。惜しくもプレーオフで敗れ去ったが、戦力は2部で頭ひとつ抜けている。そもそも数年前まで1部で上位を争い、2012-13シーズンにはチャンピオンズリーグでベスト8に躍進したチームである。

 心配なのは、カタールの王族、アル・タニ会長が牛耳るチームの経営面だろうか。選手の給料未払いなど、ファイナンシャルフェアプレーの面で問題を指摘され、有力選手を売却せざるを得ない状況だ。岡崎との契約が先延ばしになったのも、そんな事情があった。

 クラブはフェデリコ・リッカをブルージュ(ベルギー)、ホニー・ロドリゲスをラツィオ(イタリア)へ放出。ベネズエラ代表のロベルト・ロサレスを100万ユーロ(約1億2000万円)で1部レガネスへ売却し、年俸100万ユーロも浮かせた。他にも、セネガル、セルビア、アルゼンチン、アルジェリアの選手を”口減らし”のためローンする方向で交渉を続けている。さらに昨シーズン、エースとして頭角を現した21歳の攻撃的MFハビエル・オンティベロスも1部ビジャレアルへの移籍が秒読み段階だ。移籍金は750万ユーロ(約9億円)と言われている。

 昨シーズン終盤からチームを率いているビクトル・サンチェス監督に関しても、評価は定まっていない。かつて1部デポルティーボ・ラ・コルーニャを率い、2シーズンにわたって残留に成功するが、所属選手との確執が表面化。マネジメント能力が疑問視されてチームを去り、その後はオリンピアコス(ギリシャ)、ベティスで早々に解任されている。昨シーズンの1部昇格をかけたプレーオフでも、結局はデポルティーボ・ラ・コルーニャに完敗だった。

 混沌とした状況で迎えたプレシーズン、マラガの調子は万全とは言えない。プレーオフに敗れたショックをまだ引きずっているのか。2部B(実質3部)に昇格したアルヘシラスに0-0、同じ2部のコルドバに1-1、1部に昇格したマジョルカには0-2で敗れた。

とは言え、岡崎自身は悪くないデビューを飾っている。

 岡崎はコルドバ戦に2トップの一角で途中出場。ポストワークの展開から決定機を作り、ニアサイドへのクロスに合わせる動きも出て、持ち前の適応力の高さを示した。後半、アルバニア代表MFケイディ・バレの裏へのパスを引き出す動きは秀逸だった。ペナルティエリアの外側で相手DFのファウルで止められたが、この動きひとつで味方の信頼を確保した。事実、バレからはこの後にも似たパスが出ている。30分程度の出場でベンチに下がったが、交代の時には観衆から拍手を受けている。

 FWが生き残るには、クロッサー、パサーとの”阿吽の呼吸”を作るのが条件になるだろう。2006-07シーズン、2部ヌマンシアでチーム最多の10得点を記録し、1部昇格を争った福田健二は、出し手との関係構築に成功していた。その点、ボールを引き出す力に優れる岡崎は心配ない。前述のバレだけでなく、ポルトガル人サイドアタッカーのレナト・サントスとも、息の合った動きを見せる場面があった。

 ストライカーは点を取ることで評価されるだけに、「個人昇格」もあり得る。昨シーズン、2部で得点ランク2位のキケ・ゴンサレスはデポルティーボ・ラ・コルーニャから1部エイバルへ、3位のエンリク・ガジェゴはウエスカから1部ヘタフェへ、5位のフアン・ムニョスはアルコルコンから1部レガネスへ移籍した。過去には、欧州の中堅1部リーグの有力クラブへ移籍したケースも少なくない。

 岡崎は、そうした成功例に続くだけの実力を持っている。

 2部は厳しいリーグである。老獪なベテランや新鋭の若手、あとがない中堅の選手たちの舞台は、実に泥臭い。1部と2部のスタイルの違いは明確で、2部のチームは技術的、戦術的に足りないため、どうしてもコンタクトプレーが増える。ミスが多くなるなかで我慢強く戦えるかどうかもポイントになる。

 岡崎の背番号は23に決まった。契約は来年6月30日まで。1年後はどの舞台にいるのだろうか。

 8月17日、マラガは敵地でラシン・サンタンデールと2部開幕戦を迎える。