練習取材※この取材は6月13日に行われたものです。ことし、新たに早大スケート部の門を叩いた小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)。小室は、先輩の永井優香(社3=東京・駒場学園)や石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)と同じくダイドードリンコア…

練習取材

※この取材は6月13日に行われたものです。

ことし、新たに早大スケート部の門を叩いた小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)。小室は、先輩の永井優香(社3=東京・駒場学園)や石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)と同じくダイドードリンコアイスアリーナ(以下、東伏見)を拠点とし、日々練習に励んでいる。今回は夜におこなわれる貸し切り練習を取材した。スケーティングの基礎練習から始まり、ジャンプの練習へ。いまはアクセルやサルコーなどのジャンプの見直しに力を入れているようだ。この日の曲かけでは3シーズン目となるフリースケーティング(FS)『テラビシアにかける橋』を通して滑り、要素と振り付けの両立に取り組んだ。


丁寧に練習に取り組む小室

(記事 小出萌々香、写真 青柳香穂)

特別インタビュー

7級女子として日本学生氷上競技選手権(インカレ)への出場も期待される小室だが、早大に入学するまでには苦労もあったという。そんな過去や大学生活、そして今後の目標について話を伺った。

※この取材は6月29日に行われたものです。


「このスケート部に入ることでより刺激があると思う」


明るい雰囲気が印象的だ

――まず普段の生活についてお聞きしたいと思います。早稲田大学に入学を決めた理由は何ですか

早稲田っていう大学に憧れがあったっていうのと、あとは自分の先輩で早稲田大学に通ってらっしゃる永井(優香、社3=東京・駒場学園)先輩とかがいて、そういう方の姿を見ててすごく尊敬できるなって思って。私もそういう先輩の近くでスケートも勉強も学ぶことができたら、社会人としてもこれからの自分の人生としても、いい生活が送れるんじゃないかなと思って早稲田大学にしました。

――実際に入学してからの生活はいかがですか

結構楽しくて、スポ科(スポーツ科学部)ってほんとに色んな人がいます。それこそほんとにオリンピックに出るようなトップアスリートの人もいますし、逆に勉強が得意で勉強で入ってきたっていう人もいて、全然自分が高校まで経験してこなかった人的ネットワークっていうのがすごい深いなって思ったりしてます。色んな科目を自分で選択できるのも勉強の楽しみの1つだなと思います。

――大学でも競技を続けようと思った理由は何ですか

私自身大学でもスケートを続けようと思ったのは、高校生までやってきて大学で続けなかったらちょっと自分がやってきたスケートを諦めてしまうのかなと思ってて。高校3年生の時に自分は受験をしたというのもあってあまりスケートがうまくいかなくて、それでなんか1番すごくだめなシーズンだったんですよ、高校3年生のシーズンって。その中で嫌になって、スケートどうしようかなって思った時期もあったんですけど、自分が今までスケートをやってきて、もうたぶんやれるのは大学4年間しかないと思うので、あと4年間やれるチャンスがあるんだったら、まだやりたいなと思って続けました。

――スケート部に入ったのはなぜですか

近くに永井先輩と石塚(玲雄、スポ2=東京・駒場学園)先輩がいて、私もこのスケート部に入ることでより刺激があると思うんですよ。たぶん普通にスケートやってたら別に早稲田っていうブランドを背負わずにやってたと思うんですけど、やっぱりスケート部に入ることによって自分のスケートへの重みも違うなと思って入りました。

――部の先輩と交流はありますか

 

リンクが一緒で、貸し切りも一緒なので、普段から練習も間近で一緒にしてます。学ぶことも多いですし、普通に練習後のクールダウンとかでも学校のことだったり全然違う普段の話とかもするくらい交流があります。

――仲のいい選手はいますか

そうですね、仲のいい選手だと、基本的に一緒に東伏見で練習している選手では明治大学の松原(星)選手とか、あとは専修大学に通われている原田れな選手とか。あとは……大会で会ったら結構誰とも話すタイプなんですけど、同じリンクで仲のいい同世代の子はそんな感じですね。

――学業はどんなことを勉強していますか

私はスポーツ科学部にいて、コース選択が2年生であるんですけど、まだ1年生なので今は色んなことを基礎的に幅広く学んでいるって感じですね。私はビジネス系に興味があったので、2年生でビジネスコースに上がれるように、経営学とか広告とかそういったものを学んでいます。あと本キャンの授業も取ってて、今商学部の授業も取ったりしてます。

――楽しかった授業はありますか

結構楽しいのが、スポ科の授業だと、運動面で言うとバスケの授業なんですけど、私全然球技できなくて(笑)。スポ科の体育ってレベルがなんかもう高すぎて着いていけないんですよ。でも先生も優しいですし、みんなもシュート入らなくてもドンマイドンマイみたいな感じで、いつも試合やってて結構楽しくできています。座学とかで言えば、広告論っていう授業が楽しくて。普通に受動的に受ける授業じゃなくて、わりと自分が主体的に入る授業なので自分から学びにいけることが多いなと思いました。

――両立するにあたって気を付けていることは何ですか

よく睡眠をとることですね。朝練が(東)伏見は多いので、授業中眠くなっちゃうこととか多くて(笑)。寝るのが遅かったりすると、どうしても次の日の朝疲れが溜まっちゃって、朝練はなんとか動けても、学校行って話聞いてたら気付いたら寝てることとかあるので。よく睡眠をとるようにしてます。

――それではオフの日はよく眠れていますか

目覚ましをかけないで起きるっていうのがすごい好きです(笑)。

――オフの日は何をしていますか

基本的に終わってないレポートとか課題とかをやりつつ、バイトもしてるのでバイトと、課題も終わってバイトともないときは友達とご飯とかに行ってます。

――アルバイトは何をされているんですか

通ってた塾でバイトしてます。

――続いて練習についてお伺いします。普段はどのような練習をしていますか

伏見の練習は、朝と夕方に貸し切りがだいたいあります。朝はスケーティングとかそういった基礎練習を中心にやって、あとは曲かけが自由なので曲かけをかけたりして。夕方はジャンプとかプログラムを中心に練習してますね。それでも時間が足りないときは、昼間の一般(滑走)の時間にジャンプとかスピンを練習しに行ってます。

――高校生のときと比べて、練習で変わったことはありますか

特に大きく変わったって感じではないです。高校生のときも練習がわりと中心にできる学校だったので、今とそんなに大きくは変わらないんですけど、でも今の方が結構学業が大変になったので、その分スケートの練習との兼ね合いを見て、勉強との調和がちょっと大変になったかなって感じですね。

――最近力を入れていることは何ですか

最近はスケーティングと、まあ全体的かなって思うんですけど。今まだシーズンに入る直前で、シーズンに入ると結構ジャンプがメインになってしまうので、今はスケーティングとかプログラムの踊りの基礎を練習したり、ジャンプの基本的な形から直すようにして、基盤となる部分を固めている感じです。

――ジャンプの調子はいかがですか

最近は良くなってきています。今年の3月くらいにようやくジャンプが戻ってきて、それから結構波とかもあって、ジャンプが落ち着いてなかったんです。でもここまだ2週間くらいなんですけど、ジャンプの形がわりと安定してきたかなって感じで、良くなりつつあるかなって思います。

――昨シーズンについて教えてください。どんなシーズンでしたか

昨シーズンは一番辛かったし、一番成長できた年だったかなって思いますね。自分がスケートと受験を両立するっていうのが、自分で決めたので自分で最後まで責任持ってやらないとって思ってたんですけど、実際には睡眠時間も今までより削れてしまうし。受験も結果的には合格をいただけたんですけど、それまでの過程が全然うまくいかなくて、浪人するんじゃないかなーとかも思ったりしてて。スケートも、シーズン入っても全然調子よくなくて、一番大事な東京選手権大会でもショート落ちしてしまったので、すごい色々辛い時期でした。でも、逆にだからこそ自分がスケートって何のためにやってるんだろうとか、あとは自分がスケートと受験を両立することによって、まあ結果的に両立はできてるとは言えないんですけど、一緒に並行してやった意味としてはどういうことを自分は得られたのかなって考えるきっかけになりましたし、実際に成長できたかなって年でしたね。

――その経験から、今年に生かしたいことはありますか

今年は、きょねんは受験っていうプレッシャーがあったので、それがないシーズンだからこそ、スケートにも励むことができるし、勉強にも自分が好きな大学で自分が好きなことを学べるからこそ勉強にも励むことができるし、2つをきちんと並行させて全力で取り組みたいなって思います。


「人に影響を与えられる選手に」

――次にプログラムについてお聞きします。プログラムを選ぶとき重視していることは何ですか

最近結構重視してるのが、自分が好きな曲イコール自分が踊りやすい曲ではないと気付いて。わりと今まで使ってきた曲も自分は聞いてて好きだけど、実際に踊ってみると自分の身体の癖とかあとは雰囲気によっても結構相性って合わないなと思いました。だからこれ使ってみたいな好きだなって思う曲があったりしても、自分が踊るイメージをしてみた時にちょっと違うなって思ったらやめるようにしたりとか、その辺は気を付けてます。

――今シーズンのショートプログラム『O』は試合で実際に滑ってみていかがでしたか

今までのショートプログラムの中では自分が一番伸び伸びと滑れたかなと思っています。結果的にはジャンプとかはほんとにボロボロでダメだったんですけど、終わったあとに先生とお話ししたときに先生も今回のプログラムが一番しっくりきてるんじゃないっていう風におっしゃってて。自分でもやっぱり試合では表現の面でもまだまだ課題は残ったと感じたんですけど、練習でも一番楽しく滑れてるプログラムです。おそらく今シーズン来シーズンにかけてより滑り込みしていくので、自分のプログラムとして観ている人に印象を与えることができればなと思います。

――具体的なイメージや参考にした選手はいますか

鈴木明子選手が使ってたので、鈴木選手の映像をかなり見たりとか。あとは『シルク・ド・ソレイユ』の鳥のイメージとかアクロバティックなイメージがあって、振り付けにも結構鳥の表現が入ったりとかしてるので、その辺を忠実に再現できるようにっていうのと、あとはやっぱり鈴木選手の手先の動かし方とかが特徴的だったりするので、そこを自分も真似してみたりしてます。

――自分で気に入っているポイントはありますか

そうですね、最初の出だしの、止まってから2、3秒後くらいに肩を動かすところがあるんですけど、そこが音ハメが好きです。あとはステップ全体が好きですね。ステップも『シルク・ド・ソレイユ』をイメージした動きが結構入ってたりとか、何より音にハマると自分でも踊ってて楽しいし、すごい好きですね。

――フリーはどんなプログラムですか

曲が『テラビシアにかける橋』という曲で、一応ディズニーらしいんですけど、すごくマイナーなディズニーの作品で。知らないですよね(笑)、私も全然知らなくて、この曲は先生が持ってきてくださった曲なんですけど、それで聞いてみてしっとりしつつもちょっと盛り上がりがある曲でいいかなと思って。一応この曲は3シーズン目で、1シーズン目も2シーズン目も色々よくない年だったので、あんまり滑れてないんですけど。たぶん今年でこの曲はいったん終わりにすると思うので、自分でこの曲のイメージとかをまだ掴みきれてないので掴みきりつつ、3年目なので濃いプログラムにしたいかなと思います。

――具体的にはどんなイメージで演じたいですか

ストーリーが男の子と女の子が森の中で不思議な国を作るみたいな話なんですけど、未知の世界に入っていくっていう感じがストーリーを見てて一番印象に残った部分です。だから自分も、曲は落ち着いてるんですけど、好奇心をもってスケートにのめり込んでいくっていう、なんかうまい表現ができないんですけど。そういうわからない世界に自ら入っていくっていうちょっと難しい表現なんですけど、それをイメージして滑りたいなって思います。

――今シーズンの目標を教えてください

今シーズンはまあ、いくつか目標あるんですけど、大きな自分の技術的な目標としては、きちんとジャンプを試合で入るようにするっていうのと、楽しんで全部の試合を滑れるようにするっていうのですね。試合の成績とか数値的な目標としては、インカレ(全日本学生選手権)と東日本(選手権)には出場したいなって思ってるので、それに近づけるように夏の試合とかも重ねてきつつ自分の弱点を見つけて、シーズンでいい結果が残せるようにしたいです。

――夏の試合は何に出場しますか

今のところなんですけど、滋賀のげんさんサマーカップって試合に今年初めて出ます。それと夏季ジュニア(東京夏季競技大会)って東伏見で8月の後半にやる試合なんですけど、一応その2つに出ます。

――楽しみな試合はありますか

それこそインカレだと思いますね。やっぱりインカレって色んな地方とか大学から人が集まってきて、色んなうまい選手が集まってくる試合なので。普段やっぱりどうしても東(日本)で試合が多くなってしまうので、西(日本が練習拠点)の選手を間近で見られないと思うんですけど、インカレに行くことによって技術的な面を学ぶこともできますし、あと交流とかも深められて人的ネットワークも広がるんじゃないかなと思って。そういう意味でインカレが、まだ出られるって決まってないのでちゃんと出られるようにして、楽しみな試合にしたいです。

――大学4年間を通じての目標はありますか

大学4年間の全体的な目標としては、残り4年間なので、自分がもう悔いのないスケートをして、結果的に楽しく成長できたなって思える4年間にしたいなって思ってますね。あとは多くの試合に出られるようにしつつ、自分が今まで挑戦してこなかったものに対しても積極的に挑戦していきたいです。4年後に今までで1番色々経験した状態で最高の演技が毎回出せるようになりつつ、人に影響を与えられる、少しでもいいなって思ってもらえる選手になりたいなって思ってます。

――小室選手が影響を受けている選手はいますか

結構いて、トップの、オリンピックに出た選手で言うと、キム・ヨナ選手とかですね。キム・ヨナ選手はほんとに滑りもジャンプもうまくて、昔からずっと憧れで、小さい頃にキム・ヨナ選手の演技を真似したくらいすごく好きで。今はもう引退されちゃったんですけど、すごい好きなので、自分も技術的にはその人に近づけるようにしたいなっていうのと、あとは身近な選手で言えば永井選手です。彼女も苦しいシーズンもあったと思うんですけど、大学に入ってから間近でやっぱり勉強もスケートも努力して全日本(選手権)にも出場してるっていう姿を見て。ほんとに自分が身近で一番尊敬できる選手が同じ大学にいるので、あと2年間一緒にできると思うんですけど、色々学びつつ自分を成長させたいなと思ってます。

――ファンの方へメッセージをお願いします

私の演技を見てまた見たいなって思ってくれてる方を1人でも作れたらなって思ってるんですけど、もし試合で私の演技を見てくださったり応援してくださってる方がいるのであれば、いつもあたたかい目で見ていただきありがとうございます。っていうのと、もっと自分特有の、自分にしかできない表現とか、スケーターとしての姿勢を演技に反映させて、もっと多くの人にいいなって思ってもらえる機会を増やしていきたいなって思います。

――ありがとうございました!

                              

(取材・編集 小出萌々香)


たくさんの笑顔が見えた

◆小室笑凜(こむろ・えみり)

2000(平12)年10月29日生まれ。東京・開智日本橋学園出身。スポーツ科学部1年。大学での様子を語る楽しげな姿が印象的だった小室選手。取材中は、笑顔で、丁寧に質問に答えてくださいました。今季の活躍に期待したいです!