なぎなたを持つと表情が変わる 首里高校なぎなた部 凛とした、たたずまい。 なぎなたを持った瞬間、瞳の奥に力が入る。 その姿はとにかく、かっこいい。 昨年のインターハイで2年ぶりに団体試合を制した、沖縄首里高校。取材に訪れると、練習風景や…

なぎなたを持つと表情が変わる 首里高校なぎなた部

凛とした、たたずまい。
なぎなたを持った瞬間、瞳の奥に力が入る。
その姿はとにかく、かっこいい。



昨年のインターハイで2年ぶりに団体試合を制した、沖縄首里高校。取材に訪れると、練習風景や選手の思いからなぎなたの魅力を存分に感じることができた。

「礼に始まり、礼に終わる」

練習前の挨拶

「お願いします!!」
武道場に響き渡る、元気な声。
全部員が一列に並び、各方向にきっちりと挨拶をして練習はスタートした。座るタイミングや頭を下げるタイミング、声を出すタイミング等全てが完璧に揃っている姿は美しい。礼儀を重んじ相手を尊ぶ心が養われる、なぎなた。創部37年の首里高校なぎなた部、その基本姿勢を常に大切にする精神が最初の挨拶からも伝わってきた。

集中力が養われる練習環境

なぜ首里高校のなぎなた部は強いのか。顧問の大城エリカ教諭はなぎなたに必要な要素のひとつ、集中力が高い選手が多いと分析する。

全部員が集中力高く練習に臨む

その力は練習環境で養われている。首里高校の武道場は1つ。この道場をなぎなた、空手、柔道、剣道4つの部活が使用している。夏休み期間は一面で練習できるが普段は2つの部活が同時に入り、半面ずつを使っている。時間と場所が限られているため基本的に練習は1回75分。限られた時間でどう質の高い練習をするのか常に高い意識で取り組んでいる姿勢が、全22人の部の強さに繋がっている。

なぎなたの歴史
そもそもなぎなたとは・・長い柄の先に刃をつけた武器で、古く平安時代から使用されていた。鉄砲が出現した後は戦場で使用されることはなくなり、もっぱら武家の女性の護身用具となった。明治以降、「女薙刀」が女性の武道として発展し、太平洋戦争後はスポーツとして引き継がれ、1955年(昭和30年)に「全日本なぎなた連盟」が発足している。

現在の競技人口は約6000人、そのうち9割が女性となっている。

実は分かれている!?なぎなたの構造

首里高校キャプテン山城選手になぎなたについて聞いた

全長210cm〜225cmのなぎなたは、1本でできているわけではない。樫の木でできた柄の部分と竹でできた刃の部分に分かれている。この2つをテープで巻きつけ、なぎなたになっているのだ。竹の刃部分は、練習や試合で折れたりすることがあるので1ヶ月に2回程交換が必要となる。

樫の木でできた柄と竹を使用した刃部分

気剣体一致
この長いなぎなたをどう扱っていくのか。競技をする上で大切な言葉がある。「気剣体一致」気合、体捌き、なぎなたの3つの動きが常に一緒になって打突することが求められ、これが1つでも欠けると有効打突にはならないのだ。首里高校なぎなた部の選手たちもこの言葉を常に意識している。

部室を案内してくれた副キャプテン大城空選手

なぎなたにただ力を入れて攻めるだけでは、強さにつながらない。
「気」をどうなぎなたに伝えるか。「気」をどうコントロールしていくのか。首里高校なぎなた部では天使の心悪魔の心、と名付けて必要な要素を細かく書き出していた。なぎなたで気剣体一致ができた時、それは強さ=美しさにも繋がっていく。

凜とした姿に引き込まれる、なぎなた

尽きない好奇心
キャプテンの山城り子選手(3年)になぎなたの魅力を聞いた。
「とにかく好奇心がかきたてられる競技だと思います」

野球やサッカー、バスケットボールのようなメジャーな競技とは異なり、未知な世界と感じる人が多い分、面白さを発見していくことがとても楽しいと言う。なぎなたは基本となる構えだけでも上段、中段、下段、八相、脇構えの5つ、さらに技も数十種類以上になる。多彩で複雑な動きが多い分、やりがいがある。

どうやってなぎなたを動かしていけば強くなれるのか、常に答えを探す作業を繰り替えしている。

部員同士で動きを撮影する

練習を見てみると、首里高校の選手達は練習をスマートフォンの動画で撮影していた。帰宅してからそれぞれが動画を見返し、修正点を考えているという。その日の反省を記す「なぎなたノート」も各選手がつけており、ノートにはびっしりと日々の気づきが書かれていた。この細かい積み重ねが彼女たちを強くしているのだ。

細部にわたって動きの修正ポイントが書き込まれている

練習の随所に武道の精神が息づいている、なぎなた。「静」と「動」2つの世界を味わうことができる。そして何よりも佇まいから感じられる凜とした美しさ、その姿を見ているだけでこちらも心が律せられる気持ちがした。

「感動は無限大 南部九州総体2019」なぎなたは那覇市の沖縄県立体育館で8月9日に開会式、3日間にわたって競技が行われる。首里高校にとっては地元開催となる今年のインターハイ、選手たちの熱き戦いに注目だ。

首里高校なぎなた部の選手たち