「リオデジャネイロ五輪テニス競技」(8月6~14日/オリンピックテニスセンター:バーハ・オリンピック・パーク/ハードコート)の男子シングルス準決勝で、フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)がラファエル・ナダル(スペイ…

 「リオデジャネイロ五輪テニス競技」(8月6~14日/オリンピックテニスセンター:バーハ・オリンピック・パーク/ハードコート)の男子シングルス準決勝で、フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)がラファエル・ナダル(スペイン)を5-7 6-4 7-6(5)で破り、決勝に進出した。

 スリルとサスペンスに満ちた準決勝だった。2008年の北京五輪以来、2度目のシングルス金メダルを目指していたナダル(スペイン)が第1セットを奪ったが、2012年ロンドン五輪の銅メダリスト、デル ポトロが挽回劇を演じ、最後はタイブレークの7-5で終止符を打った。

 ナダルのフォアハンドがサイドに外れて、3時間を超える戦いが終わったとき、デル ポトロはコートに仰向けに倒れ、それから地面に描かれた五輪リング近くの「リオ」の文字にキスを落とした。彼はその後、スタンドに飛び込み、あたかもすでにタイトルを獲ったかのように喜んだ。

 決勝に進出したデル ポトロは、これで金銀どちらかのメダルを確実にコレクションに加えられることになった。  「僕らは非常にレベルの高いプレーをしていた」とナダルは言った。  1回戦で世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を倒したのと同じ、獰猛なフォアハンドを使ってナダルを倒したデル ポトロは、この日曜日に3度目の驚きに挑戦しようとしている。彼は5セットマッチで行われる決勝で、世界2位で2012年ロンドン五輪の金メダリスト、アンディ・マレー(イギリス)と対戦するのだ。  「これは僕のキャリアにおいて、とてつもなく大きな意味を持つことだ。全米オープンと同じ、いや、それ以上かもしれない」とデル ポトロは言った。彼は2009年の全米オープンで優勝した強豪だったが、両手打ちバックハンドで使う左手首の故障と、それを治すための3度にわたる手術のせいで、およそ2年半を棒にふり、ランキングを141位まで落としていた。  「ジョコビッチとラファを倒して決勝に進出するなんて、予想していなかった」とデル ポトロは言った。「でも僕はそれをやってのけ、メダルを手に入れることになった。本当に素晴らしいことだよ」。  「間違いなく、彼(マレー)が優勝候補だけど、今日やったように走れるよう祈っているよ」  マレーは、2012年のロンドン五輪男子シングルスで金メダル、ミックスダブルスで銀メダルを獲得している。今回の五輪でシングルス2連覇を目指しているが、それを達成すると、五輪シングルスで初めて2つの金メダルを獲ったテニス選手となる。マレーは日曜日に、その前例のない偉業に挑む。  「言うまでもなく、それは大きな意味を持つ」とマレー。「それは、容易なことではないからこそ、前例がないんだよ」。

 準決勝で錦織圭(日本/日清食品)を6-1 6-4で下し、マレーは連勝記録をキャリア最多タイの「17」(AEGON選手権、ウィンブルドン、リオ五輪と続く記録)に伸ばした。  マレーの行く手に立ちはだかることとなった、デル ポトロ。彼は故障からのカムバックを目指した2年半もの間、グランドスラム大会に出場できずにいたが、先のウィンブルドンで世界4位のスタン・ワウリンカ(スイス)を倒すことで、復活ののろしを上げ、それからここリオで、198cmの体をフルに使った威圧的なフォアハンドの連打でジョコビッチを打ち破った。同じ方程式はナダルにも通用した。デル ポトロの19本のグラウンドストロークによるウィナーのうち、18本はフォアハンドで奪ったものだった。  「14」のグランドスラム・タイトルを持つナダルは、2008年の北京五輪男子シングルスで金メダルを獲ったが、2012年のロンドン五輪では、膝の故障で欠場を強いられた。金曜日に彼は子供の頃からの仲だというマルク・ロペスとペアを組み、男子ダブルスで金メダルを獲得している。しかし今回、シングルスではもうひとつの金メダルを逃し、このあと、錦織と3位決定戦で銅メダル争いをすることになった。  ナダルは第3セットでブレークを許して4-5とリードされ、デル ポトロはそこからサービスゲームに入った。しかしナダルは、そこで幾つかの見事なショットを決め、すぐにブレークバックに成功する。次のゲームで、デル ポトロは3つのブレークポイントを握ったが、結局ナダルがキープして6-5とリードした。  タイブレークでは、デル ポトロはフォアハンドのウィナーによって5-2とリードし、それから時速204kmのサービスエースを決めてマッチポイントを握る。彼はナダルのミスによって、2本目のマッチポイントをものにした。第1セットのナダルは6本しかアンフォーストエラーをおかさなかったが、続く2セットにわたって25本のアンフォーストエラーをおかした。  「僕は全力を尽くした」と、試合後にナダルは言った。「残った唯一のやるべきことは、デル ポトロの勝利を祝福することだけだ」。  一方、錦織をストレートで退けたマレーにとって、もっとも思い出に残る瞬間は試合の終盤にやってきた。  サービスをキープすれば勝利が決まる、というそのゲームで、マレーは23本のラリーののちに、ダウン・ザ・ラインへのバックハンドのパッシングショットを放ったのだが、打ちながらよろめき、コートの上に尻もちをつくことになった。そのポイントを取ったことに気づいたとき、彼は拳を突き上げ、立ち上がると、観客に一層の喝采を頼むジェスチャーをした。  これがマレーに3度目のマッチポイントを与え、続くポイントで錦織がリターンをネットにかけた瞬間に、勝利はマレーのものとなった。マレーは白い帽子をむしり取ると、歓喜の叫びを上げた。  「ちょっぴりラッキーなショットだった」とマレー。「それがコートに入ったところを見もしなかったから、インかアウトかもわからなかったんだ。ありがたいことに入っていた」。  マレーは試合全体を通じてサービスが安定していた。 「今日の僕はサービスがとてもよかったし、試合中に調子が落ちるような波がなかった。ほとんどのゲームでケイを苦しめることができていたと思う。僕が落としたゲームでさえ、彼はそれを取るために厳しく戦わねばならなかったよね」 「僕らはふたりとも、長く厳しい準々決勝を戦った」とマレー。ふたりとも前日にフルセットの、最終セットはタイブレークという接戦をプレーしていた。

 「ケイのシングルスの試合(対モンフィス)は、たぶん僕のそれ(対ジョンソン)より肉体的にきつかったと思う。でも僕もミックスダブルスをプレーしなければならなかった。とにかくいいスタートを切り、彼にとって肉体的にきつい状態をつくれれば、と思って臨んだが、それが実際に起きたことだったよ」(C)AP(テニスマガジン)