第11戦・ドイツGPを制して2勝目を挙げたレッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンには、わずか4日後のハンガリーGP木曜から再び注目が集まり、巨大な木造のエナジーステーションで開かれた会見には大勢のメディアが詰めかけた。ハンガロ…

 第11戦・ドイツGPを制して2勝目を挙げたレッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンには、わずか4日後のハンガリーGP木曜から再び注目が集まり、巨大な木造のエナジーステーションで開かれた会見には大勢のメディアが詰めかけた。



ハンガロリンクのコーナーを攻めるレッドブル・ホンダ

「自分たちがハンガリーGPの優勝候補だと思いますか?」

 ハンガロリンクはツイスティでパワー差が影響しづらいとあって、早くもレッドブルを最有力候補と目するメディアも少なくなかった。

だが、フェルスタッペンはこれを言下に否定した。

「いや、僕らは最有力候補ではないよ。今のところ、まだ僕らはメルセデスAMGに後れを取っているし、(ドイツGPの)ああいうトリッキーなコンディションでは結果を出すことができたとしても、僕らは現実的でなければならない。

 今年はメルセデスAMGが独走しているし、とくに先週があんなレースだったから、今週は逆襲しようと躍起になっているはずだ。やれることは何でもやってくるはずだよ。このサーキット特性を考えれば、彼らのクルマがかなり強力なのは明らかだ」

 例年であればフェラーリが速さを見せるハンガロリンクだが、今年はメルセデスAMGがマシンの設計コンセプトをガラリと変えて低速コーナーで速さを増しているだけに、これに対抗するのは難しいと見られている。それどころか、今年のフェラーリはストレート偏重型になっているため、モナコGPでの苦戦を見てもわかるように、ハンガロリンクは最も苦手な部類のサーキットのひとつだ。

 それでもフェルスタッペンは、ここで容易にフェラーリを凌駕できるとは言わなかった。

「フェラーリはいつもホッケンハイムでポールポジションを獲る力を持っていたし、今年は僕らがうまくやっただけで、まだああいった長いストレートがあるサーキットでは、他のサーキットに比べて高い競争力を持っている。

 今週末はまったく違ったサーキットだから、僕らのポジションが2番手なのか3番手なのかはわからない。ひとつだけ確かなのは、メルセデスAMGが今も前にいて、僕らにとっての目指すべきターゲットだということだろうね」

 F1開催パーマネントサーキットのなかで、ハンガロリンクは平均速度が最も低く、かつては超低速サーキットと言われた。だが、マシンのコーナリング性能が上がった今では、セクター2のほとんどが中速から高速のコーナーとなり、空力性能と空力効率が問われるサーキットとなった。

 パワーユニットは、予選でのピークパフォーマンスという点では、まだ他メーカーに後れを取っている。しかし、スロットルの開け戻しやパーシャル(半開き)が多いハンガロリンクでは、スロットル追従性、ドライバビリティが重要なファクターになってくる。それはトリッキーなウェットコンディションのドイツGPでレッドブルとトロロッソの好走に貢献した部分だと、田辺豊治テクニカルディレクターは振り返る。

「昔の自然吸気エンジンとは違って、今は素のエンジンの足りない部分をMGU-H(※)やMGU-K(※)のモーターで足して調整することができます。ですから、昔悩まされたものより非常に複雑ではあるんですが、対応し甲斐がある。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。
※MGU-K=Motor Generator Unit-Kineticの略。運動エネルギーを回生する装置。

 ただ、ICE(内燃機関エンジン)の大元が悪ければ、モーターを使っても助けようがありません。各メーカーを乗り比べた人に聞くと、ホンダのエンジンは『ドライバビリティがいい』と言いますから、ICEの燃焼の部分素性からひっくるめて、パワーユニット全体のパッケージとしてドライバビリティがいいのかなと考えています」

 予選アタックでは”ラグ”の問題も出ており、ドイツGP予選でもフェルスタッペンらがラグの問題を訴えていた。それはドライバーの感覚値とのズレがまだ残っているということではあるが、コンマ何秒失ったというレベルではないところまで改善ができていたという。

「(シルバーストンに比べれば)かなり改善して軽微になってきてはいるんですが、まだ(ドライバーの)自分の意思にエンジンのレスポンスがついてきてないところがちょっと残ってしまった。ただ、イギリスではコンマ何秒失ったという言い方をしていましたが、ドイツではそこまでではなかったみたいです」

 これに対して、ホンダはデータ解析とダイナモ上でのテストを行なって、対策セットアップを持込んできている。これが熟成段階に入れば、予選でのラグ問題も解消するだろう。

 第8戦・フランスGP以来、マシンのアップデートが次々と決まって車体性能の向上が目覚ましいレッドブルのRB15が、パワー差の出にくいハンガロリンクでどこまで戦えるかは、シーズン後半戦に向けての試金石とも言える。

「僕らはメルセデスAMGに対抗するために、確実にマシンのセットアップをうまく仕上げる必要がある。それによって、彼らとのギャップを縮められればと思っているよ」(フェルスタッペン)