1年後に迫った東京五輪。そこへ向けて、ナショナルチームの新拠点が完成した。その名もズバリ『JKA250』、読み方は『じぇーけーえーにーごーまる』となる。五輪会場の伊豆ベロドロームのすぐ近く、日本競輪選手養成所内に屋内250mバンクが完成し、…

1年後に迫った東京五輪。そこへ向けて、ナショナルチームの新拠点が完成した。
その名もズバリ『JKA250』、読み方は『じぇーけーえーにーごーまる』となる。五輪会場の伊豆ベロドロームのすぐ近く、日本競輪選手養成所内に屋内250mバンクが完成し、お披露目式が7月17日、関係者やマスコミを集めて盛大に執り行われた。総工費は19億円。概要を説明すると、周長はもちろんのこと250m、幅員は7.5m。カントは最大で42.8度、最小で13.1度。バンクの材質は北欧フィンランド産のモミの木を使用した集成材。セーフティーゾーンの幅は4.1m、建物の最も高い所は9.7mになっている。そして、あくまでも訓練施設であることから観客席は設けられていない。


現在、伊豆ベロドロームは東京五輪に向けて改修作業中。本番まで1年を切っても、音響や観客席の増設などでバタバタしている。新しく造る施設なら話しは別だが、既存の施設を改修するには、やや遅い感は否めない。開催国の利点を活かせる環境があるはずなのだが、ベロドロームが使えなくなると、それも色褪せてしまう。ということで、ナショナルチームはできたばかりの『JKA250』で練習を行う。しかしながら本番のバンクとは微妙に走路感覚も違うと、選手は一様に口を揃えている。それがどう影響するのか気になるところでもあるのだが。


そうは言っても屋内250mバンクが国内に2つあることはとても恵まれていることだ。これは外国人のレーサーからも羨ましがられているそうだ。ロード人気は高いヨーロッパだが、トラックとなるとその人気は未知数。トレーニング環境も決して良くもないということも聞いたことがある。この『JKA250』をいかに有効に使えるかが、東京五輪でのメダル獲得の鍵になるのではないか。


さらにこのバンクは東京五輪後の2024年パリ五輪、2028年ロス五輪を目指す若手の育成施設としての役割も備えている。新田祐大(福島90期)や脇本雄太(福井94期)の年齢を考えれ、ば五輪は東京が最後になる可能性が高い。また、将来的に実施されると言われている250mバンクでの競輪競走、車券発売を見据え、養成所の訓練生も日頃からここでトレーニングを積む。競技としてのケイリン、ギャンブルとしての競輪の両立はここからスタートすることにもなる。


250mバンクができたことに関して言えば、レースに参加する人数も変わってくるであろう。現在、7車立てのレースが頻繁に実施されているが、250mバンクを7人で走るのは危険が伴う。いや、伴うどころではないかも知れない。ベストな人数は6人ではないだろうか。仮に250mバンクで6車立てが実施された場合、競輪の魅力、車券の対象になり得るのかは正直なところ筆者には分からない。分からないではなく、競輪が持つ本来の格闘技的な意味合いが薄れてしまうのではないかと心配している。スピードレースを堪能するのであれば、250mバンクはスリリングでもあるので大賛成だ。だが、肉体と肉体のぶつかり合い、そこに存在する人間味あふれるレースを期待するファンにとっては物足りなさが残るのではないか。トレーニング施設としての『JKA250』だが、それだけに留まらない競輪界の未来を託された施設だとも言える。


この施設でトレーニングを積めるナショナルチームのメンバーたちはこれで一層プレッシャーがかかるだろう。プレッシャーを良い方向に持っていければ、東京五輪での結果も自ずと出てくるはずだ。