「とても要求の多い、厳しい試合だった。両チーム共に、見事なパフォーマンスを披露したね。我々にとって、すばらしいテスト…

「とても要求の多い、厳しい試合だった。両チーム共に、見事なパフォーマンスを披露したね。我々にとって、すばらしいテストになった。パーフェクトな相手だったよ。彼ら(横浜F・マリノス)は驚くほどのクオリティとスタイルを備え、後方からビルドアップして、リスクを負う。とてもスピーディで技術もあり、本当に手を焼いたよ」



似たプレースタイルをぶつけ、横浜FMはマンチェスター・シティと渡り合った

 横浜FMとのフレンドリーマッチのあと、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督はそう話した。現在48歳の指揮官は会見のあとに、自ら進んで通訳に握手を求めるほどのナイスガイだが、この発言はリップサービスではないだろう。表情や語り口からも見て取れたし、なにより客観的に言って、試合内容がその言葉のとおりだった。

 プレミアリーグを2連覇しているシティを本拠地に迎えたこの一戦で、横浜FMは見事な戦いを見せた。結果こそ、1-3の敗北ではあるものの、世界トップレベルの相手を向こうに回して、堂々と渡り合ったと言える。

 マンチェスター・シティと横浜FMは、同じシティ・フットボール・グループ(CFG)の姉妹クラブだ。CFGはグループ内の各クラブに、同じようなプレースタイルを根付かせようとしていると言われ、この両チームも哲学を共有。最終ラインから攻撃を組み立て、リスクを負って相手ゴールを目指す。

 グアルディオラ監督は試合前日の記者会見で、「横浜FMのビデオを何試合か見たが、おそらくこのプレシーズンでもっとも良い相手になる。攻撃的なメンタリティ、バックラインからの構築、優れた組織力。明日の試合は間違いなく面白いものとなる」と話している。

 6万5052人の大観衆が見守るなか、日産スタジアムのピッチでは、まさにそんな試合が展開された。どちらもマイボールを大事にし、相手が高い位置からプレスをかけてきても、できるだけショートパスをつないで打開しようとする。

 フィジカルコンディションの差が出にくい前半はシティが優位に立ち、18分にはロングボールを受けたベルナルド・シウバが右から持ち込んでスルーパス。それを受けたケビン・デ・ブライネは、対面する畠中慎之輔を軸足の裏にボールを通すフェイントで鮮やかにかわし、強烈な先制点をネットに突き刺した。

「これまでに経験したことがないくらい、めちゃくちゃ速いシュートでした」とGK朴一圭が感嘆するほどだった。

 一方の横浜FMもすかさず反撃に転じ、その5分後には三好康児のパスから好機をつくる。仲川輝人とマルコス・ジュニオールのシュートはGKクラウディオ・ブラボに防がれたものの、最後は遠藤渓太が決めて同点とする。その前後には、マルコスがシャペウ(相手の頭上にボールを通す技)でロドリを抜き、仲川はキレのあるドリブルでシティ守備陣を翻弄した。

 同点ゴールの直後には、シティのエース、ケビン・デ・ブライネがフラストレーションを示すように2度もラフプレー。給水タイムには、グアルディオラ監督が審判に外に出るように促されても構わずに、カイル・ウォーカーら守備陣に大きな手振りで修正点を伝えていた。

 現時点でのベストメンバーが揃ったシティが本気になり、アクセルを踏み込んでいく。40分にはデ・ブライネのすさまじいスルーパスに、ラヒーム・スターリングが抜け出してGKとの1対1を制して勝ち越し。

 ただし、時間の経過とともに横浜FMが身体面で優勢に立ち始め、後半には何度も決定機を創出した。それらをモノにできなかったことが大きな差とも言えるが、終盤には完全に主導権を握る時間も。終了間際にルーカス・ヌメチャに3点目を決められたものの、横浜FMは最後まで一歩も引かなかった。

 CBチアゴ・マルチンスとGK朴一圭を中心とした守備陣は広大なスペースで高い能力を発揮し、大津祐樹は前線で大きな動きをつけ、喜田拓也は動きながら正確にプレーし続けた。ゴールを決めた遠藤、コパ・アメリカのウルグアイ戦に続いてトップレベルと競り合った三好、このシティ戦でクラブに別れを告げた飯倉大樹。名前を挙げたらきりがないが、気候条件や、コンディションの差があったとしても、チーム全体がプレミアリーグ王者と対等に戦った(シュート数も11ずつ)。

「昨日、監督から、うちと似たプレースタイルだと聞いていたんだけど、本当に良いチームだった」とデ・ブライネは試合後に話した。「もちろん、彼らはシーズンのまっただなかで、僕らとはフィジカルの状態が違う。それを差し引いても、彼らは優れたフットボールを展開し、とても良い試合になったと思う」

 またカイル・ウォーカーも、「(横浜FMは)ハイプレスや素早く正確なボール回しなど、僕らと同じようなやり方だね。リバプールとのコミュニティシールドを控える僕らにとって、すごく良い準備になった」と同調した。

 対する横浜FMの遠藤は、「すごく強かったです。自分たちも普段のサッカーをできたので、それはよかったけど、やっぱり力の差はあったと思う。いつもは負けて得るものはあまりないと思っているけど、本当の世界トップレベルと対戦して、負けて学ぶことはあったと思う」と振り返っている。具体的な違いとしては、「とてつもないスルーパスを出せる選手、それに反応する選手がいること」と言う。そして三好は「テンポが相当早かった。距離感、パス、シュート、スピード。やっぱり強いな、と思いました」と述べた。

 記者席から観た者としては、それらに加えて、パススピードと正確性、各駅停車にならないボール回し、そして決定力が、両者の違いと感じた。それでも横浜FMの選手たちは、トップ中のトップレベルを向こうに回し、自分たちにできることを余すことなく表現していた。その証拠に、試合後の彼らはみな一様に充実した表情を浮かべていたように思う。

 横浜FMは現在、J1で首位に勝ち点3差の2位につけている。CFGの一員としてさまざまな恩恵に与る彼らは、この貴重な経験を生かして、15年ぶりのリーグ制覇へ邁進していくはずだ。