世界水泳選手権大会、競泳5日目の男子200m個人メドレーで、瀬戸大也(ANA)が1分56秒14の自己ベストを更新して金メダルを獲得。東京五輪の内定を決めた。これまで、この種目は世界選手権と五輪を合わせても5位が最高だったが、今大会そこ…

 世界水泳選手権大会、競泳5日目の男子200m個人メドレーで、瀬戸大也(ANA)が1分56秒14の自己ベストを更新して金メダルを獲得。東京五輪の内定を決めた。これまで、この種目は世界選手権と五輪を合わせても5位が最高だったが、今大会そこから一気に頂点に駆け上がった。



東京でも確実にライバルになる二人に勝ち、東京五輪内定を決めた瀬戸大也

 瀬戸は笑顔でこの試合を振り返る。

「もう最高です。積極的にいくと決めていたので、そこはブレずに、そして後半もビビらずにいけたところが勝因だと思います」

 じつは、この大会で瀬戸が最大の目標にしてきたのは、男子200個人メドレーではなく、2013年と15年世界選手権を連覇している400m個人メドレーだった。指導する梅原孝之コーチは、「200mに関しては自己新記録を出してメダルというのが目標だった」と言う。

 実際、瀬戸は4月の日本選手権で1分56秒69の自己ベストを出しているが、前回の世界選手権を制しているチェイス・カリシュ(アメリカ)は昨年1分55秒40の自己ベストを含めて、2度の1分55秒台を出している。

 さらに今年は、15年世界選手権で背泳ぎ2冠のミッチェル・ラーキン(オーストラリア)が個人メドレーに再挑戦して1分55秒72を出していた。大会前の瀬戸の世界ランキングは4位で、55秒台に突入しないと金メダルはないという状況だった。

 光州に入って調子の波があった瀬戸だったが、24日の午前中に200m個人メドレー予選に出場するとスイッチが入り、夜の200mバタフライ決勝では、積極的な泳ぎを見せて銀メダルを獲得している。

 そのバタフライ決勝から30分後には200m個人メドレー準決勝を泳ぎ、予選よりもタイムを上げて全体の3位で決勝に進出した。

「今日のバタフライと個人メドレーの準決勝は完璧」と、瀬戸は笑顔で話していたが、ここでライバルの状態もしっかり見極めていた。

「準決勝を終えた時点で、個人メドレーでは自分が一番調子がよさそうだなと思っていたので、自己ベストをしっかり出せば優勝のチャンスはあるかなと思った」

 決勝では、隣の4レーンのジェレミー・デプランシュ(スイス)が準決勝と同じように積極的にいく展開になったが、瀬戸も準決勝よりペースを上げてきっちりとついていった。

 そして背泳ぎでトップに立つと、平泳ぎは「ターンからの浮き上がりでミスをして少し焦りましたが、一回気持ちを落ち着かせて25mからもう一回アップさせた」と、トップを守った。最後は自由形で粘り、デプランシュとカリシュを抑えて勝利を収めた。

 この最後の粘りは、ここ4カ月弱、もう一枚殻を破るためにと取り組んできた「耐乳酸トレーニング」の成果が表れたと言える。文字どおり、乳酸に耐える力をつけるために疲れた状態から、さらに追い込んでいくトレーニングだ。

 それに加えて梅原コーチはもうひとつの勝因をこう話す。

「去年からケガもなく1年通していい練習ができた結果。その中でスピードが上がって100m種目では、自己ベストが出ていることが200mに生きてきた。3種目の中では一番成績が出てないのが200m個人メドレーだったので、外すとなればバタフライとスケジュールが重なるこの種目という考え方もあったが、瀬戸自身が『個人メドレーはキングオブスイマーだからやっぱり出たい』と言うのでやらせていた。今は止めさせないでよかったと思う」

 ただし、世界のトップ選手のタイムは、萩野公介(ブリヂストン)の1分55秒07秒を筆頭に1分55秒台に入っている。今回の瀬戸は勝負強さを見せたものの、記録的にはもう一歩であり、それは彼自身も「今回は本当にラッキーだった」と承知している。

「本当は55秒台を狙っていたけど、一歩及ばなかったのは残念ですね。55秒台が出ていれば120点満点だったけど、今回は100点。でも、これからステップアップして、来年の東京五輪で55秒台を出せれば、メダルが見えてくる。今の記録では東京の金はないだろうから、次はそれを目指したい。

 今回のメインは最終日の400mですが、200mで前半から積極的にいきながらも、最後に耐え抜いてスパートをかけられたことは、400mへ向けて自信になる。今回はチャンスだと思うので、400mはしっかり狙って勝ちにいきたい。今回は耐乳酸トレーニングの効果を実感できた。あと1年間、本当に嫌なその練習を淡々と続けていけば、東京五輪でもいい結果がついてくるんじゃないかというのが見えた試合でした」

 瀬戸が400m個人メドレーでも前半から攻めのレースをして後半を耐え抜き、萩野の4分06秒05や、カリシュの4分05秒90に迫れば、最高の結果につながる。ブレずに攻めた瀬戸は、気持ちを切り替えて最終日に臨む。