男子テニス界ではBIG3が長年頂点に立っているものの、彼ら以外にも素晴ら…
男子テニス界ではBIG3が長年頂点に立っているものの、彼ら以外にも素晴らしい選手は多い。BIG3相手に毎回タイトルを争うとは限らなくても、時には名勝負を繰り広げ、このスポーツをより魅力的にしてくれるベテラン・中堅勢を紹介していこう。
今回取り上げるのは、「ウィンブルドン」での躍進(ベスト4)が記憶に新しいロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)。
同胞のラファエル・ナダル(スペイン)より2つ年下の1988年生まれである彼がテニスを始めたのは5歳の時。2014年5月に世界30位の壁を破って以来、5年以上にわたりTOP30をキープしてきたが、2019年に大きく飛躍する。四大大会で4回戦以上に勝ち進んだことがなかったものの、このシーズンは「全豪オープン」でベスト8、「ウィンブルドン」ではベスト4になった。「主要大会でベスト8に入る」という目標を上回る結果を出した理由を振り返っていこう。
2018年から前兆はあった。同年1月の「ATP250 オークランド」決勝でフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)を破り、3月には「ATP500 ドバイ」で同大会16年ぶりとなるTOP10選手以外による優勝(当時世界23位)を達成。その2ヶ月後、「全仏オープン」では大会直前に母親が急死するという悲劇に見舞われながらも、「試合に集中することで他のことを考えないように」して勝ち進み、3回戦ではノバク・ジョコビッチ(セルビア)相手に接戦を演じた。しかし夏に鼠径部を痛め、「ウィンブルドン」など数大会を欠場する。
そして迎えた2019年。シーズン最初の「ATP250 ドーハ」でスタン・ワウリンカ(スイス)やトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)、そしてジョコビッチを破って優勝。直後の「全豪オープン」では、初戦の相手が涙の引退会見を行ったアンディ・マレー(イギリス)だったが、観衆の多くがマレーを応援する状況下でフルセットの末に勝利。その後もカレン・ハチャノフ(ロシア)、マリン・チリッチ(クロアチア)らを下し、初のベスト8入りを果たした。さらに3月の「ATP1000 マイアミ」で再びジョコビッチに勝利。ドーハもマイアミも、第1セットを落としながらの逆転勝利だった。ジョコビッチとこの年3度目の対戦となった「ウィンブルドン」準決勝では、準々決勝で計6ゲームしか失っていなかった相手から第2セットを奪い、「第3セットはスコアとしてはあまり良くない(3-6)けどすごくいいプレーができた」と手ごたえを得た。
「ウィンブルドン」でベスト4入りした6人目のスペイン人選手となったバウティスタ アグート。その数字が示すように、スペイン人というとクレーコートに強い一方で芝を苦手とする選手が多いが、強烈なストロークとネットプレーが武器で、精確なプレースタイルの彼は芝やハードコートを得意とする。これまでに獲得した9つのタイトルのうち、8つは芝とハードコートで得たものだ。2019年に2連敗を喫したジョコビッチも「彼からポイントを取るのは大変だよ。ミスをしないからね。非常にソリッドなプレーヤーだ。フォアはいつもパワフルだし、バックとサーブは改善されている」と称賛する。
そんな躍進の理由は、肉体改造と考え方の変化にあるようだ。「過去との違いは、これまで以上のハードワークをするようになったこと。僕はいつももっとうまくなりたい、より完成された選手になりたいと思って努力を怠らないのでここまでたどり着くことができた。今シーズンは自分の持ち味を強化すべく、何時間も費やして身体を鍛えてきた。そして過去の経験を生かして、以前ほど相手を気にせず自分のことに集中するようになり、コートでより自信が持てるようになったんだ」
彼にはテニス界以外のサポートもある。父親がプロサッカー選手だったからか10代前半までサッカーもプレーしていた関係で、古巣であるスペイン1部リーグ所属のサッカークラブ、ビジャレアルのトレーナーに身体のメンテナンスを助けてもらっているのだ。そして自宅では多くの馬を飼い、時間があれば馬と過ごすことで「テニスで抱えたストレスを解消している」という。
11月に結婚を控える自身のバチュラー・パーティは「ウィンブルドン」での躍進により延期することになったものの、「(ケガで欠場した)去年はソファでウィンブルドンを観なくてはならなくて、落ち込んだ。楽しくプレーできるこの大会が大好きなんだ。だから今年は何としても戻ってきたかった」と、プレーできる喜びを味わったバウティスタ アグート。「これまで経験してきたあらゆることによって僕はより良い選手へと成長してきた。一度体験したことを次の機会ではよりうまくやることでね。今回「ウィンブルドン」では実にいろんなことを経験した。これまで知らなかった様々な状況や感情を体験したんだ。自分のプレーと結果に満足しているよ」
精神的なタフさとトップレベルでのプレー経験を得た彼は現在、ATPランキングで13位という自己最高位タイに返り咲いただけでなく、「レース・トゥ・ロンドン」で6位の錦織圭(日本)と90ポイント差の7位につけている(7月22日時点)。このままいけば11月に行われる「ATPファイナルズ」初出場も夢ではないだろう。
(テニスデイリー編集部)
※写真は2018年「ATP500 ハレ」でのバウティスタ アグート(Photo by Thomas Starke/Getty Images)