元気もなく、答えもない----前回の2012年ロンドン五輪で金メダルを獲得しているセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は、今回の「リオデジャネイロ五輪テニス競技」(8月6~14日/オリンピックテニスセンター:バーハ・オリンピック・パーク/ハ…

 元気もなく、答えもない----前回の2012年ロンドン五輪で金メダルを獲得しているセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は、今回の「リオデジャネイロ五輪テニス競技」(8月6~14日/オリンピックテニスセンター:バーハ・オリンピック・パーク/ハードコート)女子シングルスの3回戦で敗退した。  この日、最大の衝撃的な試合。第1シードのセレナは第15シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)に4-6 3-6で敗れた。セレナは1ゲームの間に5本のダブルフォールトをおかしたサービスをはじめ、すべてのショットがぐらついていた。こうして、2つの金メダルをつかんだ初のテニスプレーヤーとなるためのセレナの夢は終わりを遂げたのである。  「望んだように物事が運ばなかった」とセレナは言った。ときにミスをおかすことなどないように見えたスビトリーナに対して、セレナは序盤から問題を抱えていた。彼女はオーバーヘッドを不器用にネットに打ち込み、ブレークされて早々に1-2とリードを許した。これで悪いパターンにはまってしまった。  試合終了までにスビトリーナは63ポイントを取ったが、彼女自身のはっきりしたウィナーからのポイントはわずか9ポイントにすぎなかった。そのほかのポイントはセレナの37本のアンフォーストエラーと、17本のフォーストエラーからきていたのだ。  「よりよかった選手が勝ったのよ」とセレナは言った。彼女は試合後にメディアとの通常の質疑応答をせず、代わりに全米テニス協会のスポークスマンと短いインタビューを行い、スポークスマンがそのオーディオを記者たちに提供した。  2012年ロンドン五輪において女子シングルスと女子ダブルスの双方で金メダルを獲得したセレナは、今回、手ぶらでブラジルから帰国することになった。彼女と上記の試合でも観客席から妹を見守っていた姉ビーナスは、女子ダブルスで第1シードだったにもかかわらず1回戦で敗れた。これはふたりで3つのオリンピック金メダル(2000年シドニー、2008年北京、2012年ロンドンの女子ダブルス優勝)を獲った「15戦15勝」の進撃に、終止符を打った敗戦だった。  これで男女シングルス、男女ダブルスの4種目で、男子シングルスのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を含め、すべての第1シードが敗退した。  ここまでセレナに対して4戦して全敗だった世界20位のスビトリーナにとって、これは初めてのオリンピックだった。彼女のグランドスラム大会での成績は、全仏での準々決勝進出が一度あるだけである。

 キャリア最大の勝利を実現したあとスビトリーナは、「非現実的な感じがするわ」と心境を語った。「ここで彼女を倒したというのは、本当に特別な出来事よ」。  ふたりの対戦の最近のものは先の全仏オープンで、そのときにはセレナが6-1 6-1で勝っている。今回は深いストロークを両サイドのラインぎりぎりに打ち込み、その多くを望むところに入れることに成功するという、恐れ知らずのグラウンドストロークでプレーしたスビトリーナを褒めてしかるべきだろう。  「リスクをおかして果敢にプレーできたことをうれしく思っている」とスビトリーナ。

 彼女は第1セットをエースで締めくくると、まるでそれが大したことではないといったふうな、あるいは、そうできると知ってでもいたような、クールな眼差しを投げた。  そして試合後のコメントもまた、実際に彼女がそう予期していたかのように響いた。

 「自分がいいプレーをし、彼女を限界まで追い詰めることを予想してもいたわ」とスビトリーナは言った。「明らかに、今日の彼女はいいプレーをしていなかった」。  45分のプレーののち、スビトリーナは第1セットを取り、第2セットでも2-1とリードした。彼女はセレナにミスを強いた強力なフォアハンドでブレークポイントをつかみ、それからセカンドサービスに対して逆クロスのフォアハンド・リターンを叩き込んでそのチャンスをものにしたのだ。次をキープして3-1とリードしたスビトリーナは、大番狂わせまであと3ゲームと迫った。  しかし、セレナも静かに去ったわけではない。  次のサービスをキープし、それからブレークを果たして3-3と追いつく過程でセレナは喜び、あるいは自分への抗議のために腕を振り回しながら、あるポイントのあとには「カモン!」と声を挙げ、別のポイントのあとには「あああっ!!」と絶叫した。しかしテニス界最大のファイターのひとりである彼女は、それからは、ただしぼんでいったのである。  セレナが1ゲームに5度ダブルフォールトをおかすというのは、奇妙なことでもあった。ふたたびブレークされて3-4となったとき、セレナは前かがみとなり、ラケットを2度地面に打ちつけた。彼女は前夜にも、お粗末な第1セットの間にラケットをコート脇の椅子に叩きつけて壊していた。その試合で彼女は通常、大概そうであるように流れを逆転させることに成功したのだが、今回に限っては、形勢逆転はならなかったのである。(C)AP