8月5~7日に宮城県石巻市で開催された「MLB CUP 2016」で、子供たちの熱戦に匹敵する注目を浴びていたのが、元メジャーリーガーで巨人でも活躍したウォーレン・クロマティ氏だ。1984年から7年にわたり巨人の主力メンバーとして活躍したク…

8月5~7日に宮城県石巻市で開催された「MLB CUP 2016」で、子供たちの熱戦に匹敵する注目を浴びていたのが、元メジャーリーガーで巨人でも活躍したウォーレン・クロマティ氏だ。1984年から7年にわたり巨人の主力メンバーとして活躍したクロマティ氏は、子供たちはもちろん保護者世代から絶大な人気を誇る。

■子供にサインを求められ「2世代、3世代と私の存在が伝わっていることが誇り」

 8月5~7日に宮城県石巻市で開催された「MLB CUP 2016」で、子供たちの熱戦に匹敵する注目を浴びていたのが、元メジャーリーガーで巨人でも活躍したウォーレン・クロマティ氏だ。1984年から7年にわたり巨人の主力メンバーとして活躍したクロマティ氏は、子供たちはもちろん保護者世代から絶大な人気を誇る。最近は古巣エクスポズのあったモントリオールに、メジャー球団を招致する活動を中心に行っているクロマティ氏に、日本への思い、異国で3000安打を達成したイチロー、野球の五輪復活について語ってもらった。

ーー クロマティさんが登場するたびに大きな人垣ができますね。現役時代を知る保護者の皆さんはもちろん子供たちからも大人気です。

クロマティ:子供たちが「クロマティ」とか「クロさん」と呼びかけて、写真やサインを欲しがっている。私がプレーする姿を一度も見たはずがないのに、こんなにうれしいことはありません。きっとお父さんお母さん、あるいはお祖父さんお祖母さんから私のことを聞いて、テレビの映像を見たり、YouTubeを見たりしたんでしょう。2世代、3世代と、私の存在が伝わっていることを、本当に誇りに思います。

ーー 「MLB CUP 2016」に参加したおかげで、再び日本のファンと触れ合えました。

クロマティ:これは本当に素晴らしいイベント。特に、5年前の東日本大震災で起きた津波で大きな被害を受けた、この石巻で開催されていることに意味があると思います。石巻に限らず、リトルリーグで野球を楽しむ子供たちやその家族に、毎年楽しみにできる、そして目標になるイベントが生まれたことは素晴らしい。このイベントに参加を打診された時は、一も二もなく引き受けました。

■イチローは「生きるレジェンド。殿堂入りは確実」

ーー 7年を過ごした日本は特別な場所でしょうね。

クロマティ:日本は私の一部だと言っても過言ではありません。自分で言うのもおかしいですが、私は日本の文化にとてもよく馴染めた。私が試合で見せたプレー以上に、日本文化をよく理解できたこと、そして誰でも気軽に話し掛けられる身近な存在であったことで、ファンは私を受け入れてくれたんだと思います。今でもそうですが、ファンと触れ合うのは大好きなんですよ。今回はバケーションも兼ねて1週間ほど滞在しています。大好きな国で、ファンの皆さんが私を“レジェンド”と呼んでくれる。こんなに素敵なことはありません。

ーー レジェンドと言えば、マーリンズのイチロー選手がメジャー史上30人目の3000安打を達成しました。

クロマティ:彼は生きるレジェンド。王(貞治)、長嶋(茂雄)、松井(秀喜)よりも大きな存在ですよ。なにしろ、アメリカで殿堂入りすることが確実なんだから。そこでメジャーが生んだ不朽のレジェンド、ベーブ・ルースやルー・ゲーリックと肩を並べるんですよ。私は心からイチローを誇りに思います。テレビゲームだって3000安打は簡単に打てません(笑)。ゲームだって相当な年月が掛かりますよ。

ーー ご自身は日米通算2055安打という記録を持っています。イチロー選手が日米通算安打数でピート・ローズを抜いた時、アメリカでは大きな論議を呼びました。

クロマティ:ピート・ローズは、もっと紳士的なコメントをするべきだったと思います。ただ、彼は私のアイドルだった選手。彼の言い分も分からないでもない。一方で、私はイチローの立場も分かります。だからこそ、王さんが本塁打記録を作った時のハンク・アーロンのように、ピートが対応できなかったことが残念ですね。

■新環境で成功するカギ「どうやって文化を受け入れ、馴染めるか」

ーー 日本でプレーした経験があるからこそ、新しい環境で成績を残す難しさも知っている…。

クロマティ:イチローは、日本にいる時からメジャーを目指していたから、ある程度準備ができていたんじゃないかと思います。プライベートでも、ヒップホップ系のストリート・ファッションを好んでいたしね(笑)。別の国でプレーする時の成功のカギは、どうやって文化を受け入れ、馴染めるかにあると思います。野球においてもプライベートにおいても、その場所のやり方や風習になれることは必須条件。アメリカから日本に来て結果を出せない選手は、それができないから。日本流を学ぼうとしないからです。唯一の黒人だったり、唯一のアメリカ人だったり、私の人生は適応することが全てでした。だからこそ、どこでも適応し、溶け込める自信はあります。

ーー 2020年の東京オリンピックでは、野球が正式種目に復活することになりました。

クロマティ:とても喜ばしいこと。そして、とても賢い選択だと思います。なぜなら、野球は日本の文化ですから。かつては五輪競技だった野球が、この日本で開催される五輪で復活するのは当然。開催時期が夏ということもあり、第一線で戦うメジャーリーガーの参加は難しいかもしれません。それでも野球で世界をつなぐためには、とても重要なことです。

ーー 日本をよく知るクロマティさんが、五輪の米国代表チームを率いたら面白いかもしれませんね。

クロマティ:監督とは言わなくても、コーチの要請がきたら喜んで受けたいですね。常々日本とアメリカ、あるいは日本とカナダをつなぐ活動をしたいと考えています。だからこそ、日本で開催される五輪の代表チームだったら最高の選択肢。もし声が掛かれば、是非やってみたいですね。

ーー 日本のファンも実現を楽しみにしていると思います。

クロマティ:また近々皆さんとお会いできるチャンスを楽しみにしています。