今年のインターハイ・ボクシングは、宮崎県の宮崎市総合体育館を舞台に、7月29日(月)から8月3日(土)の6日間で開催される。 プロボクシング界では現在、WBA・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋ジム)が快進撃を続けている。そしてイン…

今年のインターハイ・ボクシングは、宮崎県の宮崎市総合体育館を舞台に、7月29日(月)から8月3日(土)の6日間で開催される。

プロボクシング界では現在、WBA・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋ジム)が快進撃を続けている。そしてインターハイの歴史をさかのぼっても、井上が地元・神奈川県の相模原青陵(現・新磯)に進学した頃から選手育成の常識が覆り、競技レベルも飛躍的に向上したと言われている。

それ以前のインターハイは、高校進学後にボクシングを始めた選手たちが、2年半の短期育成のもとで競い合っていた。しかし2008年、小中学生を対象としたU-15全国ボクシング大会がスタート。中学2年生のとき、この第1回大会で優勝した井上は、2年後の2010年、高校進学からわずか4カ月でインターハイ優勝を果たした。

なお、2012年のロンドン・オリンピックで日本に48年ぶりのボクシング金メダルを獲得し、プロでも世界王者に輝いた村田諒太(南京都、現・京都廣学館/京都府)や、日本男子史上初の世界4階級制覇を果たした井岡一翔(興国/大阪府)の時代にも、ジュニアからの本格強化の予兆はあった。

昨年のインターハイでも、荒竹一真(鹿屋工業/鹿児島県)、梶原嵐(崇徳/広島県)、堤麗斗(習志野/千葉県)の3選手が1年生でインターハイを制した。彼らはその後、秋の国民体育大会、春の全国高校選抜大会でも優勝して「高校3冠」を制覇。希少価値の高かった4冠以上の覇者(4度以上の全国大会優勝)も、今や当たり前のように誕生している。今回、梶原は肉離れのアクシデントで予選敗退となったが、荒竹や堤、そして彼らに食らいつく他の都道府県の代表選手たちの奮闘にも注目だ。

3年生でも、ロシアの国際大会からユース(17~18歳対象)の金メダルを持ち帰った田中将吾(浪速/大阪府)ら将来の有望株は多い。一方、新1年生でも吉良大弥(王寺工業/奈良県)は先日、ハンガリーで行われた国際大会でジュニア(15~16歳対象)の金メダルを獲得し、才能を光らせている。

階級別で見ると、今年は60キロから64キロに区分されたライトウェルター級が “最激戦区” と見られており、 その中で田中空(武相/神奈川県)は、2017年にアジア・ジュニア選手権でも最優秀選手賞を獲得。海外の関係者からも大きな注目を集めた。昨年の国体王者・高橋麗斗(沼南/千葉県)も、中学時代から常に田中と甲乙つけがたい接戦を繰り広げており、直接対戦が注目される。

もう一つ、近年のインターハイでも忘れてはならないのが、高校進学後に競技を始めた選手の健闘だ。昨年、20年ぶり8度目の団体優勝を果たした栃木県の名門、作新学院も出場選手7人のうち、4人が高校からの経験者だった。

試合ルールはプロボクシングとも似た各ラウンド10点満点の採点方法だが、あくまでも有効なパンチのヒット数を競うのが特徴。2分・3ラウンド制で、ヘッドギアの着用が義務づけられている。

ボクシングにとってインターハイは学校対抗の様相が最も強い大会だ。各階級のトーナメントの結果を得点化した団体優勝争いは毎年様々なドラマを生んでいる。もちろん個人戦でも、かつての井上のような「怪物くん」の登場が期待される。今年も拳に青春をかけた高校生ボクサーたちの熱い闘いに注目したい。

記事提供:ベースボール・マガジン社『ボクシングマガジン』

写真提供:読売新聞社