写真:加藤美優(日本ペイントホールディングス)/撮影:ラリーズ編集部

<T2ダイヤモンド2019マレーシア 2019年7月18日~7月21日>

白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。

今回はT2ダイヤモンド2019マレーシアで、加藤美優(7月世界ランキング22位・日本ペイントホールディングス)が世界ランク1位の陳夢(チェンムン・中国)を破った試合を振り返る。

2017年と2019年の世界選手権に出場していながらも、ワールドツアーでは中々上位に食い込むことがなかった加藤。伊藤美誠や平野美宇など、同世代の選手が熾烈な東京五輪出場権争いを繰り広げる中で、やや成績が劣っている印象を持つ人も多いだろう。

そんな加藤が今回、世界ランキング1位の陳夢に大金星を挙げたのは偶然ではない。そこには、陳夢の持ち味を封じた“クレバーな戦術”があった。

T2ダイヤモンド2019マレーシア準々決勝:加藤美優 VS 陳夢




写真:陳夢(中国)/撮影:ラリーズ編集部

<スコア>
○加藤美優 4-2 陳夢
11-4/11-9/4-11/11-6/2-5/5-4

1:巧みなサーブレシーブで常に先手を取り続ける

加藤は、独特のしゃがみ込みサーブと、逆チキータで先手を取り、ラリーの主導権を握るプレーが持ち味だ。この試合でもコートを広く使ってサーブを出し、多彩なレシーブを駆使して自身の強みを存分に発揮できたといえる。




写真:サーブを上手く散らし台を広く使う/画像:ラリーズ編集部

サーブでは、通常のバック側から出すフォアサーブに加えて、立ち位置をミドルやフォア側に変えてのしゃがみ込みサーブをうまく活用した。相手に的を絞らせない戦術が功を奏し、相手のレシーブを甘くし先手を取り続けることができた。




写真:徹底したレシーブでバック側にボールを集める/画像:ラリーズ編集部

また、レシーブではフォア前のサーブに対して逆チキータで、バック前のサーブ対してはチキータでの処理を徹底し、陳夢のバック側に集めた。逆チキータとチキータの回転を読み切れない陳夢を押し切り、加藤は1、2ゲーム目を連取した。

逆チキータを嫌った陳夢は2ゲーム目からフォア前のサーブを減らし、バック側へのロングサーブを増やしたが、加藤は打点を落とさず、質の高い返球をし、陳夢の3球目攻撃の威力を弱めて対応した。

2:台から離れず変化を付けたバックドライブで陳夢のフォアハンドを封じる




写真:バック対バックで緩急をつけ主導権を握る/画像:ラリーズ編集部

陳夢はフォアドライブが非常に強力な選手で、実際にラリー戦になりがちな女子卓球の中でもフォアドアライブで得点をもぎ取るなど、そのパワーは脅威だ。一方で、バックハンドについては威力はフォアハンドほどではなく、ミスも出やすい。

加藤は強みのサーブレシーブで1、2ゲーム目を連取したが、3ゲーム目からは陳夢に対応される。バック側へのロングサーブの対応に集中した加藤に対して、陳夢はフォア前に再びサーブを出し始めた。加藤にストップレシーブをさせると、台上プレーで先手を取り、ラリーも主導権を奪い返した。陳夢に先に攻められると守りに入った加藤は1ゲームを奪い返される。

ラリー戦にもつれることは避けられないと考えた加藤は、得意のバックハンドで打点の早いラリーを展開。陳夢のバック側に早い打点で緩急をつけながら、陳夢にフォアハンドを打つ隙を与えない戦術を徹底した。

陳夢は加藤のミドルにボールを送り、返球を甘くしようと狙うも、加藤は打点を落とさずバックで処理する。加えて変化が多いサーブによって、陳夢のレシーブを甘くさせ、ラリー戦でも先手を奪い、優位に進められるように徹底した。

そのため、陳夢はバック対バックでリスクを負った攻めを余儀なくされ、バッククロスへの強打のミスや、回り込んでフォアハンドを打とうとしてミスを重ねる場面が目立った。加藤の戦術が功を奏し、最後まで陳夢の持ち味を出させない試合展開となった。




写真:加藤美優(日本ペイントホールディングス)/撮影:ラリーズ編集部

サーブレシーブに対応され、先に攻められる展開が増えてからは、いかに相手の強みを封じるかを徹底した加藤のクレバーな戦術展開は素晴らしいものだった。弱気にならず自分の得意な土俵で勝負する作戦のおかげで、競った場面でも迷わずプレーすることができたのだ。

ゲームカウント3-1とリードしていたが、5セット目を奪われ、さらに6ゲーム目も1-4とリードを許した場面。ここでも気を引き締めて4点連取で逆転勝利を収めることができた。

「私は自分に自信がなくて、いつも(中国選手に勝つのは)難しいかなと思っていたけど、強い気持ちを持って試合をすれば強い選手にも勝てることがわかって自信になったので、また頑張っていきたいです」と試合後のインタビューに答えた加藤。この試合を機に彼女のさらなる飛躍が楽しみだ。

文:ラリーズ編集部