2019年5月12日、日産スタジアムに集まった2万人を超える大観衆が熱狂した。世界リレー大会男子1600mリレー決勝。若林康太選手(駿河台大学)を含む日本代表の4選手が、世界屈指のスプリンターたちと互角に渡り合い、4位に堂々入賞を果たしたの…

2019年5月12日、日産スタジアムに集まった2万人を超える大観衆が熱狂した。世界リレー大会男子1600mリレー決勝。若林康太選手(駿河台大学)を含む日本代表の4選手が、世界屈指のスプリンターたちと互角に渡り合い、4位に堂々入賞を果たしたのだ。東京五輪での金メダル獲得も期待される男子400mリレーとは対照的に、1600mリレーは長く不遇の時期を過ごした。2004年アテネ五輪では4位と健闘したが、その後は低迷。五輪出場が危ぶまれるほど追い込まれていた。

敗退すれば五輪への道が絶たれる“背水の陣”で、アンカーとして力走した若林。しかし、「自分には人に優っている部分はない。身近にライバルを作らず、自分に勝つために走る」と、本人はいたって謙虚だ。持ち味は前半からの積極性。400m走は最後の100mが最もきついと言われるため、前半は体力を温存する選手も多い。その中で、あえて序盤から勝負を仕掛けていくのが彼のスタイルだ。177センチと大柄ではないが、動きが大きく伸びやかな走りで他の選手を圧倒している。

※邑木監督(写真左)と談笑する若林。日頃から身体の状態についてコミュニケーションを取り、練習メニューを決めている

駿河台大学に進学したことで、彼の環境はそれまでと大きく変わった。様々なところから集まってくる選手たちの層の厚さ、専門トレーナーから学ぶ身体の使い方。ある日突然頑張っても、脚は急に速くならない。1日1日と積み重ねていくことで、世界と戦えるレベルまで成長を遂げることができた。

「五輪出場がゴールではない」と、若林は言う。100m走に“10秒の壁”があるように、400m走にもすべての選手たちが目指す記録がある。それが“44秒”だ。日本人の44秒台を出した選手は、日本記録保持者・高野進氏のみ。日本人28年ぶりの“44秒台”、そして“日本新”を若林も当然狙う。今までは見る側だった世界の舞台で、今度は自分が躍動する番だ。

※大学アスリート1日密着動画「THE STARS」にて、若林選手を特集しています。
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若林康太(わかばやし・こうた)
新潟県柏崎市出身。1997年10月23日生まれ。177センチ、70キロ。新潟産業大学附属高を経て、現在は駿河台大学現代文化学部4年。2019年4月に行われたアジア陸上競技選手権大会男女混合1600mリレーで銅メダル、男子1600mリレーで金メダルを獲得。その翌月に開催された世界リレー大会では、1600mリレー日本代表のアンカーを務め、4位入賞。世界選手権ドーハ大会の代表候補にも挙がっている。