文=佐保めぐみ 写真=鈴木栄一我慢の時期を乗り越えて、準備万端で日本代表に合流バスケットボール女子日本代表チームは、来年に迫った東京オリンピックを見据えつつ、今夏開催のアジアカップへ向けた強化合宿を行っている。今回の合宿から渡嘉敷来夢がチー…

文=佐保めぐみ 写真=鈴木栄一

我慢の時期を乗り越えて、準備万端で日本代表に合流

バスケットボール女子日本代表チームは、来年に迫った東京オリンピックを見据えつつ、今夏開催のアジアカップへ向けた強化合宿を行っている。今回の合宿から渡嘉敷来夢がチームに合流。リオ五輪で『日本のエース』として大活躍した渡嘉敷だが、その後はコンディション不良などの理由で、部分的に強化合宿には参加していたが、長く日本代表からは遠ざかっていた。

特に去年、ワールドカップの出場を見送ったのは渡嘉敷にとっては大きな決断だった。昨夏の代表活動を辞退して身体のメンテナンスを優先し、2020年のオリンピックを万全の状態で迎えられるようスケジュールを立てた。昨夏の時点で「痛くても出るからにはベストパフォーマンスをしなきゃいけない。それは疲労骨折で手術する前に経験したことなので、同じ思いはしたくなかったんです」と難しい決断を語っている。

もっとも、日本代表はトム・ホーバスの下、内海知秀が作り上げたリオ五輪のバスケットから発展的進化を続けてきた。ホーバスとも旧知の間柄とはいえ、新しいバスケットのスタイルに適応するのは簡単なことではない。同じ『リオ五輪組』でありJX-ENEOSサンフラワーズでも一緒にプレーしてきた宮澤夕貴は「やっぱり今回が初めてなので、タクさん(渡嘉敷)自身が迷っているところもあります。タクさんから『これでいいの?』と確認してくることもあるし、私も声を掛けるようにしています」と、まだまだ慣れている段階であることを説明する。

渡嘉敷自身も「今は本当にみんなに追いつくことにフォーカスしています」と、フォーメーションを覚えてチームに溶け込むのに必死だ。大変なのはホーバスが取り入れたスモールバスケット、緻密なパッシングのバスケットに慣れること。インサイドの選手でも3ポイントシュートを打つことが求められており、それは渡嘉敷も例外ではなく、「今はセンターが前のような感じではなく、3ポイントシュートを打たないといけません。それができなかったら代表には残れない」と覚悟を語る。

それでも、代表復帰のために身体のメンテナンスだけをやっていたわけではない。これまでの渡嘉敷の3ポイントシュートはシーズンを通して1本あるかないか、という程度だったが、昨シーズンは27本を放っている(うち9本成功)。得意とまではいかないものの、実戦で使えるレベルに仕上げ、ここからチームのスタイルに合わせればいい、というところまでは来ている。

「ブランクを感じさせないプレーでみんなを引っ張る」

新しい日本代表のバスケットへの適応に苦労はあるにせよ、渡嘉敷のサイズとパワー、技術が加わることは、言うまでもなく日本代表にとって大きなプラスとなる。それは彼女自身も自覚しており「いずれは自分がこのチームを引っ張っていかないといけないと感じています」と語る。

オリンピックまであと1年というタイミングでの代表復帰は、『ギリギリ間に合った』という感覚だろう。ただ、時間はかかったが準備はしっかりと整えてきた。「性格上、焦ってもしょうがないな、ってタイプなので」と笑う渡嘉敷は、すべてをポジティブに受け止めている。

「今、みんなとバスケットができるのが本当に幸せだと感じています。バスケが好きだ、バスケが楽しいと思えていて、こういう気持ち久々だなって。そうやって思っている時は一番伸びる時だと思っていて、これからまた自分は伸びるのかなと思いながら練習しています」

ここに来た以上はエースとしての役割が求められるし、『渡嘉敷ありき』のバスケットを作り込んでいく必要もある。ここから東京オリンピックまで、渡嘉敷は全力疾走するつもりだ。「もうここから一歩も戻ることなく、最後まで行きたいと考えています。もう代表からは抜けられないです。日本代表でもブランクがありますが、それを感じさせないぐらいのプレーだったり、声を出す、みんなを引っ張って行くというところは大事にしたいと思っています」

もともと渡嘉敷は、日本代表への気持ちは誰にも負けないと自負している。念願の代表復帰を果たしたことでモチベーションは十分。日本の女子バスケットが世界と渡り合うには、渡嘉敷のさらなる成長と、先頭に立ってチームを引っ張るパフォーマンスが不可欠となる。