「TRAIDOR」(裏切り者) ブラジル代表FWネイマールはスペイン語でそんな烙印を押された。 2017年8月、ネイ…

「TRAIDOR」(裏切り者)

 ブラジル代表FWネイマールはスペイン語でそんな烙印を押された。

 2017年8月、ネイマールは4シーズンを過ごしたバルセロナを未練なく捨て、好条件を提示したパリ・サンジェルマン(PSG)へあっさり鞍替えしている。移籍金は2億2200万ユーロ(約280億円)だった。「リオネル・メッシがいないチームでバロンドールを」という巨大なエゴが移籍の理由だったとも言われる。ともあれ、本人が希望した選択だった。

「裏切られた」

 彼を愛していたバルサのファンにとって、その憎しみが簡単に消えるはずはない。しかし、そのネイマールがバルサ復帰に本腰を入れて交渉を続けているという。



パリ・サンジェルマン退団、バルセロナ復帰が囁かれているネイマール

 ネイマールはPSGに移籍して2年、不本意なシーズンを過ごしている。バロンドール獲得どころではない。期待されたチャンピオンズリーグ(CL)では2年連続ベスト16止まり。昨季は右足中足骨のケガなどで、シーズンをフルに戦えていない。

 その間のロシアW杯では、触(さわ)られてもいないのに大袈裟に転がって”ダイバー”の誹(そし)りを受け、完全に悪役となってしまった。今や札付きのトラブルメーカー。昨シーズン終盤は、フランスカップ決勝のレンヌ戦で暴言を吐いたファンに怒って殴りつけ、インスタグラムではCLの判定を巡って審判を痛烈に批判し、処分を受けた。とどめは、コパ・アメリカ直前に性的暴行容疑で渦中の人になった。

 ネイマール本人には「こんなはずではない」という苛立ちがあるのだろう。PSGでのプレー自体に辟易しているように見受けられる。そもそもフランスリーグのレベルは、スペイン、イングランドなどに比べると明らかに落ちる。

「楽しかったスペインに戻りたい」

 それが本音だろう。

 実はPSGも、自分本位な言動が目立ち、パフォーマンスも低調なネイマールの扱いに手を焼いている。彼らにとっては、キリアン・ムバッペというエースのメドがついた。2億2200万ユーロの投資を回収できれば、売りに出したいところだ。

 その証拠に、PSGはスポーツディレクターのレオナルドが、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッドに売り込みをかけている。だが、色よい返事は得られていない。”物件”として、癖が強すぎるのだ。

<相手を挑発するために股抜きを仕掛け、一方で自分がされると怒って引き倒す。優等生ではないどころか、夜遊びを断ち切れず、不摂生な生活がケガにもつながっている。その言動は周りにも悪影響を及ぼす>

 ネイマールはすでにそんな悪評を背負っている。レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督はこの点を憂慮し、フロレンティーノ・ペレス会長に「決して獲得しないように」と、念を押したと言われる。

 にもかかわらず、バルセロナが交渉に乗り出したのは、ネイマールの”実力”を求めているからだ。

 ネイマールの技術レベルの高さは言うまでもない。自ら仕掛け、ゴールまで持ち込むことができる。バルサ在籍当時は、リオネル・メッシ、ルイス・スアレスと高次元で融合。「MSN」というトリオは、欧州を震え上がらせた。

 さらに付加価値として、ネイマールは人気面でも傑出している。客を呼べるし、スポンサーを集められる。嫌われ者である一方、世界中で関心が高い。たとえば、海外ツアーではチケットを売れるし、それに連なるスポンサーも取りやすくなる。単純にユニフォームやグッズの世界的販売促進につながる。いまだにサッカー界では、メッシ、クリスティアーノ・ロナウドの次に出てくるのは彼の名前だ。

 サッカーは愛憎劇でもある。憎まれる選手は、それだけ知名度も高い。その点でネイマールは、悪役であろうと極めて重要なキャストと言える。バルサが用意したと言われる移籍金は1億7000万ユーロ(約190億円)。もしくはフィリペ・コウチーニョ+サムエル・ウムティティとのトレードなど、さまざまな”条件”が取り沙汰されている。いずれにせよ相当な出費にはなるが、ビジネス面で見た場合、十分にもとが取れる。

 もっとも、現場の強化策としては疑問が残る。いくつもトラブルを抱え、ケガが多発し、2年前よりも力が落ちたネイマールを獲得すべきなのか。年俸も3000万ユーロ(約39億円)は下らないだろう。

 バルセロナは同じようなポジションに、アトレティコ・マドリードからフランス代表FWアントワーヌ・グリーズマンを獲得したばかり。その移籍金は1億2000万ユーロ(約150億円)。5年契約で年俸は2100万ユーロ(約27億円、年ごとの変動制を平均した金額)だ。22歳で覚醒の予感があるフランス代表FWウスマンヌ・デンベレもいる。

「3年ぶりにMSN再結成!」。それはロックバンドなら胸が躍る朗報だが、プロサッカーの世界では幻想に近い。

――ネイマールのバルサ復帰を願うか?

 スペインのスポーツ紙『エル・ムンド・デポルティボ』が、ウェブ上でそんなアンケートを行なった。過半数の68%が、残酷な「ノー」を突きつけている。