第106回ツール・ド・フランスが現地7月6日、隣国ベルギーのブリュッセルで開幕した。 国際規定で定められた休息日2…
第106回ツール・ド・フランスが現地7月6日、隣国ベルギーのブリュッセルで開幕した。
国際規定で定められた休息日2日を含む全23日間の戦いは、初日からの10連続ステージが7月15日に終了。絶対的な存在がいない今回の大会だが、周到な作戦で絶好の位置につけて山岳ステージに備える有力選手がいる一方、注目選手が思いもよらぬ遅れによって窮地に立たされている。
最初の休息日を迎えたここまでの戦いぶりと、有力選手が暴れ始める後半戦の展望を現地から紹介したい。

ツール・ド・フランスはこれから険しい山岳ステージへと突入する
2年連続2度目の優勝を狙うチーム・イネオスのゲラント・トーマス(イギリス)は、若手の成長株エガン・ベルナル(コロンビア)とのツートップという布陣でスタートした。
個人としてはもちろん、自らが栄冠を手中にしたいだろうが、チームは「どちらかが優勝すればそれでよし」という考えだ。23日間の長丁場では、落車や不調など、さまざまなアクシデントに襲われることが多い。そのため、リスクを分散させることが、確実にマイヨ・ジョーヌを獲得するための正攻法だ。
大会2日目には、ブリュッセルでキーポイントとなるチームタイムトライアルが行なわれ、初日に首位に立ったマイク・テウニッセン(オランダ)を擁するチーム・ユンボ・ヴィスマが平均時速57.657kmのトップタイムで優勝。20秒遅れの2位にチーム・イネオスが入り、まずまずの位置につけた。
注目したいのが、21秒遅れの3位にドゥクーニンク・クイックステップが食い込んだことだ。チームには、前年の大会でステージ2勝と山岳賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス)がいる。チーム・イネオスにとっては要注意の存在である。
そのアラフィリップが続く第3ステージの終盤で独走を決めた。それによって、今年のツール・ド・フランスは動き始める。ステージ優勝はもちろんだが、前日まで31秒遅れの総合11位につけていたアラフィリップがここで首位に立った。
アラフィリップは過酷なコースで抜け出し、ゴールまで逃げ切るタイプの27歳。「フランス自転車界のロックスター」を標榜し、存在感あふれるアクションで人気上昇中の選手だ。
「このステージが僕に向いていることは把握していて、調子がよかったので思いきってアタックした。単独になるとは思っていなかったが、区間優勝ばかりかマイヨ・ジョーヌも獲得できて言葉がないよ」
アラフィリップはステージ優勝後にそう答えたが、そのあとにもうひと言、つけ加えた。
「選手のタイプとして、僕が総合優勝を期待されるのはどうかと思う」
このコメントの真意は定かではない。過去にはこうしてマイヨ・ジョーヌを着用したことで弾みがつき、自信をつけて最後まで総合優勝を争った選手は数多い。今大会は優勝候補の数人がケガにより欠場していることから、地元ファンは1985年以来34年ぶりとなるフランス人の総合優勝を期待している。そのプレッシャーから解放されるため、自ら口に出したコメントなのか。
そしてもうひとり、総合優勝を期待されているフランス人は、グルパマ・FDJのティボー・ピノだ。第9ステージを終えて首位はアラフィリップだが、ピノはトーマスやベルナルを上回る総合3位の位置につけた。
2014年、当時24歳だったピノはツールで総合3位と新人賞を獲得した実績がある。ところがその後、スピードに対する恐怖症に陥り、2016年、2017年は最終日にパリまでたどり着くことができなかった。そして2018年は、ついに欠場した。
「それでも、たくさんの人の支えと効果的なカウンセリングのおかげで、精神的な病を克服することができた」
29歳となった円熟期のピノに、フランス国民が期待しているのは言うまでもない。
ツール・ド・フランスは開幕から10日連続でレースをこなし、舞台は第10ステージへ。迎えた休日前日、このステージが大いに荒れた。
首位のアラフィリップは第1集団のなかでゴールし、マイヨ・ジョーヌを守った。だが、総合3位につけていたピノが、ここで後れを取ったのだ。トーマスやベルナルから1分40秒差。総合優勝争いから一気に後退した。
また、ピノだけでなく、総合2位につけていたトレック・セガフレードのジュリオ・チッコーネ(イタリア)など多くの主力も、第2集団に取り残された。どうしてなのか? それは、チーム・イネオスとドゥクーニンク・クイックステップが集団を分断させるために横風を利用し、ペースアップしてピノらを置き去りにしたからだ。
大会前半を終えて、マイヨ・ジョーヌはまさかのアラフィリップ。開幕時は「総合優勝なんて勘弁してくれ」というコメントだったが、今はちょっとニュアンスが変わってきた。
「マイヨ・ジョーヌを着用してツール・ド・フランスを走るのは特別だ。スタートからゴールまで、僕の名前を呼ぶ大歓声が耳に届く。この栄冠のジャージを守るために、全力で戦っていきたい。
チームは僕の走りをアシストする仕事をこなし、厳しい戦いではあるけど、リズムよく連日のレースを終わらせることができている。すばらしい日々を満喫しているよ」
アラフィリップに対抗するチーム・イネオス勢は、1分12秒遅れの2位にトーマス、同16秒遅れの3位にベルナル。ツートップが揃って上位を確保しているので、多様な作戦が取れるのが強みだ。
後半戦ではピレネー、そしてアルプスの山岳ステージが待ち構える。果たして、アラフィリップは地元フランスの期待に応えることができるのか。そして、首位を狙うチーム・イネオスのふたりはどんな役割分担を演じるのか。第106回ツール・ド・フランスは、後半戦も目が離せない。