金曜日の夕方、早稲田の8連覇がかかった早慶サッカー定期戦(早慶サッカー)の応援には、約1万3千人の観衆が集った。大音量のBGM、華やかなハーフタイムショーや観客の熱気など、スタジアムならではの特別感が早慶サッカーの魅力である。第70回目…

  金曜日の夕方、早稲田の8連覇がかかった早慶サッカー定期戦(早慶サッカー)の応援には、約1万3千人の観衆が集った。大音量のBGM、華やかなハーフタイムショーや観客の熱気など、スタジアムならではの特別感が早慶サッカーの魅力である。第70回目の早慶サッカーが行われたその日、スタジアムのひときわ目立つ所に、早稲田大学応援部の姿があった。早稲田大学ア式蹴球部サポーターグループ・ULTRAS WASEDAが選曲など応援を主導する。とはいえ、フィールド上での応援と楽器を使用しての演奏を担うのは応援部である。ハーフタイムショーでは、チアリーダーズの演技や、ファンキー加藤のステージが会場を沸かせた。

  観客席とフィールドでは、チアリーダーズが全力で観客を盛り上げた。応援の内容としては神宮球場での野球応援と類似しているが、より多くの観客を巻き込むために、周囲がどのくらい盛り上がっているかを観察した。その一方で、試合を楽しむことも意識したと黒澤真紀子副将・チアリーダーズ責任者(教4=埼玉・早大本庄)は話す。吹奏楽団は、観客席の一角から選手と観客に音を届けた。立ち上がり飛び跳ねる観客も多い中で、『Tifosi WASEDA』や『バモ早稲田』などの応援曲を演奏。より音を響かせるために1オクターブ上げるなどのアレンジを加え、演奏する曲名を叫び指揮者に助力する。得点の際には「ようやく入れてくれたなと、思いが伝わったかな」と春山尚輝副将・吹奏楽団責任者(創理4=茨城・江戸川)は感じたという。チアリーダーズと吹奏楽団による、サービス精神のあふれる応援は、観客を巻き込んでいった。試合終了1分前、FW加藤拓己(スポ2=山梨学院)のゴールで、早稲田側の応援の声は大きな歓声となる。吹奏楽団による『紺碧の空』がスタジアムに響きわたった。


吹奏楽団は休むことなく演奏を続けた

 リーダーは主に太鼓やフィールド上での応援を担った。早稲田側の観客席の前を全力で走り回り、観客と気合を交わして叫ぶ。太鼓を叩きたい、と上級生に名乗り出る下級生リーダーや、会場の熱気のためか頭から水をかぶる4年生リーダーの姿も見られる。ひとりひとりが持てる限りの力を出し切った。得点時の『跳ばない奴は慶應ボーイ』では、ULTRAS WASEDAの面々と共に喜びを爆発させた。


フィールド上での応援の様子

  気合にあふれる部内でも特に意気込みを見せたのは、リーダーの雲見恭光雲見恭光・学生誘導対策責任者(スポ4=茨城江戸川学園取手)である。サッカー早慶戦を応援するために応援部に入部したという雲見は、試合序盤からすさまじい緊張感をたたえていた。フィールドを走り回り叫びながらも、気持ちが高ぶるあまり、ゴール付近で仁王立ちになるシーンも。ハーフタイムには、昨年の早慶サッカーで得点を決めたア式蹴球部の武田太一に声をかけられた。「『去年俺が勝たせたんだから、今年はお前が勝たせろ』」(雲見)。得点時には、思わず崩れ落ちる。親友武田の言葉を実現した試合後の表情には、達成感がみなぎる。雲見にとって、4年生での早慶サッカー応援はまさに集大成であった。


大観衆を前に気合十分の雲見

 選手の入魂のパフォーマンスを一番近くで応援し、勝利の際には誰よりも喜ぶ。応援部3パートの個性や、幅広いレパートリーを持つ早稲田の応援から目が離せない。応援部の夏に向かって、最高の幕開けとなった。

(記事 馬塲貴子、写真 岡秀樹)

コメント

黒澤真紀子副将・チアリーダーズ責任者(教4=埼玉・早大本庄)

――サッカー早慶戦での応援では、野球応援と比べて若年層の観客が多い印象があります。いつもの応援と違う点はありましたか

観客の方から声を出して下さることがすごく多かったので、その方々と一緒に声を出して応援していく、という事は意識していました。

――チアリーダーズは観客席での応援もされていましたが、大変なことはありましたか

神宮球場(での応援)だと、お客さんの間に一列ごとに空列があってそこにチアリーダーズが入るんですけれども、本日は空列などが無くて通路で応援をするしかないので、その中でどのようにお客さんを巻き込んでいくかという点が難しかったです。それぞれが自分の出来ることをしっかりやっていくということを意識して行いました。

――得点時の心境はいかがでしたか

私は後ろにいた下級生と抱き合ったり、周囲の観客の方とハイタッチをしたり、というくらい、本当に嬉しかったです。一体感のある観客席が出来たと思います。

――試合後、ア式蹴球部の部員とはどのような言葉を交わされましたか

高校時代からの友人がメンバーとして出場していたのですが、その友人と「お疲れ様」という言葉を交わしました。

――早慶サッカーの応援を振り返っていかがですか

何よりも楽しむ、という事を意識して応援活動に臨んで、いつも神宮球場などでも観客の方を巻き込んで応援するというのは意識していたんですけれども、巻き込みながらも楽しんで応援する、ということが出来たと思うので満足しています。

春山尚輝副将・吹奏楽団責任者(創理4=茨城・江戸川)

――応援で使用した楽曲について教えてください

約10曲くらいの楽曲を使用していました。(譜面を)パッと1回見て、1回見れば吹けるようにしていました。

――サッカー早慶戦での応援では、野球応援と比べて若年層の観客が多い印象があります。いつもの応援と違う点はありましたか

いつもの応援は応援部主導でやることが多いのですが、今回はULTRAS WASEDAさんなどのサークルが主導で行います。ノリの良さとか観客が盛り上がっているかどうかを見て、応援部もそれに合わせて、楽しむ応援を目指そうかなと思ってやっていました。

――「合わせる」というのは、具体的にはどのようなことをされていましたか

そうですね。観客の方のテンションと合わせて吹かないと、例えば観客の方が乗っているのに結構遅いテンポで行ってしまうと、観客の方も乗りづらくなってしまいますし、テンションも下がってしまうじゃないですか。そのようなことがないように注意していました。

――吹奏楽団の応援席は観客席の中にありました。観客と物理的に距離が近い中で工夫された点があれば教えてください

いつもより観客の方が飛び跳ねていたりだとか、ずっと立っていたりだとかしたので、真ん中の方でULTRAS WASEDAの方の応援の指示が見えないことがありました。なので、できるだけ指揮をみんなでサポートしてちょっとでも曲の入りが聞こえたら、その曲名を叫んで、ちゃんとは入れるようにということを注意しました。

――3パートの中で、吹奏楽団だけ応援においての移動がありませんでした。そのような中で特に意識した点はありますか

今回は結構狭いところでやっていたんですけど、いつもはメンツを組んで行いますが、今回は来られる人は全員で応援しました。そのために、応援席は結構ぎゅうぎゅうになってしまったのですが、いつもより距離が近いので、周りの音を聞いて演奏するというのを心がけました。周りの音を聞かないとちょっとずつ音程がずれていったり、リズムがずれちゃったりすると、あまり一体感のない応援になってしまうので、それがないようにというのは注意していました。

――得点時の心境はいかがでしたか

ようやく入れてくれたなと、思いが伝わったかなと。選手の方も喜んでいましたし、同じ気持ちで『紺碧の空』を歌えるのが、光栄というか楽しいひと時でした。結構ずっと同じ曲を繰り返すんですが、その中でも早稲田の選手がいいところでボールをもらったりすると、吹奏楽団の中でも、「頑張れ頑張れ」と。あとは、1オクターブ音をあげると高い音になるんですけど、そうすることで響きやすくなるので、「上げるぞ上げるぞ」といったように、ちょっとした工夫もしていました。早稲田の選手にボールが回った時にそれをやっていて入ったので、していてよかったかなという感じですね。楽しかったです。

雲見恭光・学生誘導対策責任者(スポ4=茨城江戸川学園取手)

――ア式早慶戦の応援を振り返って、感想をお願いします

後半最後まで点が取れない状況で焦りがすごくあったんですけど、でもやっぱり最後までみんな声を出し続けてくれて、応援部員もそうですし、ULTRAS WASEDAもそうですし、スタジアムのみんなが声を出し続けてくれたので、最後ああやって劇的に勝てたのではないかと思っているので、言うことはないです。 最高です!

――サッカー早慶戦での応援では、野球応援と比べて若年層の観客が多い印象があります。いつもの応援と違う点はありましたか

早慶サッカーってすごい学生が来てくれるんですよ。その中で距離感は気合で盛り上げるぞといけば、みんなついてきてくれるので、いつも通りの気合をぶつければ、みんな声出してくれるので、気合をぶつけることを意識しました。

――「気合をぶつける」とは、具体的にはどのようなことをされましたか

例えば、サークルの人とかは、リーダーや応援部員が働きかけたらすごい乗ってくれるんですよ。なので、自分たちが声を出すのはもちろんですけど、それ以上にきょうは若い人たちに働きかけることをすごく意識しました。

――応援中にフィールドを見つめられていた場面が多くありました。その時の心境は

そうですね。応援したいという気持ちが大きすぎて試合を見ちゃうというか、頼むということで声を出すのを忘れちゃうくらい気持ちが入ってしまって…。直接気持ちを届けているときに見ている時がありましたね。

――いろいろな方から声を掛けられたと思うのですが、一番うれしかった言葉はありますか

「集大成だったね」と言う言葉ですかね。僕が1年生の時に(応援部に)入った理由が、早慶サッカーを応援したいということと、武田太一(スポ4=ガンバ大阪ユース)を応援して勝たせたいという2つの理由があったんです。2年生の時は部内で風邪が流行ってしまって、自分は当日に39度くらい(の熱が)出てしまい、先輩に帰れと言われて帰らされてしまったんです。その時は、来年こそは俺が応援して、当番として応援をまとめると決心しました。それで3年生の早慶サッカーで(武田に)、「お前は点を取ってくれ」と言ったんです。それで1点ビハインドの中、武田が2点を取ってくれて勝ったんです。今年、武田は膝を怪我して出られませんでしたけど、その分自分が戦おうと思ってやってきました。そうしたら、ハーフタイム中に武田が俺のところに来てくれて、「去年俺が勝たせたんだから、今年はお前が勝たせろ」と言われました。最後はずっと試合を観ていたんですけど、そしたら最後FW加藤拓己 (スポ2=山梨学院)君がヘディングして、ゴールキーパが触ったけどゴールに吸い込まれていった時には、もう崩れ落ちましたね。…崩れ落ちてね、もう最高ですね!ということで、集大成と言われたことがすごく嬉しかったですね。

――きょうのヘアスタイルはスペシャルバージョンですか

そうですね。きょうはスペシャルバージョンです。1週間前にパーマをかけて、早慶サッカーなのでカーブをかけていこうかなと思ったんです(笑)。きょうの午前中も1週間ぶりに床屋に行って横もバっと(笑)。早慶サッカーに向けて調整して気合入れていきました。