現地時間7月13日、WBC世界スーパーバンタム級暫定王者・亀田和毅(協栄ジム)が大一番を迎える。米カリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツ・パークで、同正規王者のレイ・バルガスと対戦する。これまでタイトルを4度防衛してきた、32勝全勝(22KO)という戦績を誇るメキシコ人王者は、群雄割拠のスーパーバンタム級でも”最強のひとり”と目される実力派だ。

 デビュー直後から大きな注目を浴びてきた亀田兄弟の三男は、どんな思いでこの一戦に臨み、どんなファイトプランを思い描いているのか。7月上旬、亀田とその陣営が渡米した翌日に、電話でじっくりと話を聞いた。




2018年11月にWBC世界スーパーバンタム級の暫定王座を獲得した亀田和毅

——バルガス戦に向けた調整は「完璧」と話されている報道を見ましたが、その後も順調にきていますか?

「そうですね、今回はフィジカルのほうは新しいトレーナーと取り組んで、いい結果が出ています。おかげで自信がついて、スパーリングもいい調子です。体はもう完璧なんで維持するだけ。あとは体重ですね」

——スパーリングは100ラウンドくらいこなされたそうですね。

「スパーリングは量より質なので、いつも数は気にしていません。内容を重視してやっていって、結果的に100回くらいになったかな、という感じですね」

——対戦相手のバルガスは非常にやりにくい相手で、亀田選手もアマチュア時代に敗れた経験があるそうですね。その”因縁の相手”と対戦が決まった経緯を教えてもらえますか?

「2、3年前くらいにバルガスがイギリスでチャンピオンになった時に、3回くらいオファーを出しているんですよ。それでも3回とも断られて、『やってくれへんのか』という感じでした。でも、バルガスがケガをしたことで俺が昨年の11月に(自分が)暫定王者になって、それでWBCのほうから『統一戦をやれ』という指示が出たわけです。一番やりたかった相手で、一番強いと思う相手。この試合を組んでもらえたことに関して、WBCの会長には感謝したいですね」

——相手がやりたがらなかった理由はどこにあると思いますか?

「メキシコ人の嫌いなスタイルは、スピードのある選手。自分はスピードがあるので、そこを嫌がっていたんじゃないですかね。今回の交渉の際も、『日本では絶対に試合をしたくない』という話でした。俺は日本でもアメリカでもメキシコでもどこでもやるよという気持ちでいたので、向こうの条件はすべて呑んで臨んでいます。それだけの自信はあります」

——具体的なファイトプランは明かしてもらえないとは思いますが、話せる範囲で、どういった戦い方をしたいと考えていますか?

「作戦の内容を言うことはできないです。いずれにしても、試合のリングに上がってみないとわからないですし。リングに上がってゴングが鳴ってみないと、作戦どおりにいくのか、相手がどう試合に入ってくるかもわからない。自分も38戦のキャリアがあるし、世界戦も何回もやっているんで、どうこようが対応はできると思っています」

——昨年11月のアビゲイル・メディナ(スペイン)戦では、途中からあえて接近戦をやったようにも見えました。さまざまな戦術が必要になりそうなバルガス戦のことも考えたのかな、と少し思ったんですが。

「試合でいろんなスタイルをやっていきたい、という意識はあります。前回はまず距離を取ったんですけど、みんな俺のことを『接近戦はできへんやろ』と考えているんで、接近戦もできるところを見せられたんじゃないですかね」 

——今回のバルガスとの試合が「これまでで一番大事な試合」とも話されていましたが。

「うーん・・・・・・実際には、一番大事だったのはやっぱり最初にフィリピンでチャンピオンになった試合(2013年8月のパウルス・アムブンダ戦:WBO世界バンタム級タイトルマッチ)ですかね。そこから2階級を制覇して、実力があるところは見せられているんで、あとは『アメリカで勝負したい』という気持ちがあります。俺の実力がどこまで通用するかを計りたい。そういった意味で、今回のこの試合はいいチャンスだと思っています」

——これまでのキャリアを少し振り返ると、亀田選手は10代でメキシコにわたり、現地の言葉もマスターし、世界王者にもなりました。そんな日本人ボクサーはなかなかいません。そのことがあまり日本のファンに伝わっていないことにフラストレーションは感じませんか?

「そういうのは全然ないです。自分がやりたいことをやって、それをどう評価してくれるかはお客さん次第なので。ちゃんと結果を出していって、もっともっと認めてもらえるような選手にならないといけない。それだけです」

——メキシコ、日本、アメリカで試合をしてきましたが、環境的にやりやすいと思ったのはどこですか?

「 やっぱりアメリカでやった時が一番興奮しました。(ラスベガスの)MGM(グランドガーデン・アリーナ)で試合をした時は、リングに上がる前も、上がった時も、楽しかったですね」

——2014年の防衛戦で、プンルアン・ソー・シンユー(タイ)をボディでKOした時ですね。

「そうですね。フィリピンなどでもリングに上がってきましたけど、やはりアメリカのリングは違うなと感じました。結果を出せば、強かったら認めてくれるというのが、シンプルで一番いいですね」

——アメリカのボクシングはスポーツエンターテイメントなので、ビジネス色が強くなるところもありますが。

「ボクシングはお客さんあってのもの。アメリカは試合前から”ショー”というか、エンターテイメント性を大事にしますよね。そういうのは日本もマネしていったほうがいいと思っています」

——亀田選手はまだ27歳ですが、大事な時期に、とくに2014年くらいから試合数が少なくなってしまったことへの悔しさはありますか?

「悔しいというのはないですけど、ちょっと焦りはありました。でも、それも勉強。時間ができたおかげで成長もできたと思っているので、マイナスの感情はなく、むしろプラスになったかなと感じています」

——これまでのボクシング人生を振り返って、どのくらい満足できていますか? 

「それなりに満足できています。自分がやりたい道で、やりたい場所で、やりたい選手と戦ってきた。一回も逃げたことはありません。アメリカで2回負けた時(2015年5月、9月のジェイミー・マクドネル戦:WBA世界バンタム級タイトルマッチ)も、自分がやりたかった相手に負けたので納得しています。ちゃんと挑戦を続けてこられたので悔いはない。もちろん、これからもっとやっていきたいという気持ちはありますけどね」

——今、話が出たマクドネル戦はどちらも接戦になり、個人的には1試合目は亀田選手が勝ったかなという試合でした。その試合も納得はできていますか?

「自分も『勝ったかな』と思いました。ただ、ジャッジの判定は変わらない。日本人がアメリカで試合をすると、判定になったら難しいということは、やる前からわかっていたこと。しょうがないことだったと思っています」

——今回の試合は、マクドネル戦以来のアメリカでの世界タイトル戦になります。先ほども話していたように、この試合に勝てばアメリカでの道が再び開けるという思いが強いのでしょうか? 

「そうですね。今回の相手はスーパーバンタム級で一番強い選手。メキシコでもアメリカでも、世界的な評価を受けている王者です。その選手とロサンゼルスでのメインイベントで試合ができるというのは、これ以上ないチャンス。これをものにして、次のビッグマッチにつなげていきたいと思います」

——大一番ですが、お兄さんたち、奥さんなど、ご家族も応援に来られるんですか?

「来る予定です。奥さんは練習のときからずっと一緒で、食事のほうも全部やってもらっています」

——現在のボクサーとしての目標を話してもらえますか?

「ずっと前から変わっていないです。世界で認めてもらえる、歴史に残るようなボクサーになりたいです」

——大事な試合前なので先のことは話したくないかもしれませんが、バルガスに勝てば指名挑戦者のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)、WBA、IBF王者のダニエル・ローマン(アメリカ)、WBO王者エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)といった選手たちとのアメリカでの対戦も見えてきますね。

「そうですが、やはりスーパーバンタム級で一番強いのはバルガスだと思っています。だから、この試合を勝たないことには先はありません。まずは今回の試合に集中し、勝ったらその先、フェザー級まで含めてチャンスは出てくると思っています」