前WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳ジム)にとって、絶対に負けられない一戦が間近に迫っている。村田は7月12日、大阪でWBA世界ミドル級正規王者ロブ・ブラント(アメリカ)との再戦に臨む。 勝てば再びミドル級のメインストリームに戻る…

 前WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳ジム)にとって、絶対に負けられない一戦が間近に迫っている。村田は7月12日、大阪でWBA世界ミドル級正規王者ロブ・ブラント(アメリカ)との再戦に臨む。

 勝てば再びミドル級のメインストリームに戻ることができるが、負ければ”限界”や”引退”といった言葉が囁かれることは必至。昨年10月に、判定ながら完敗を喫した相手に、33歳になった元五輪金メダリストはリベンジを果たすことができるのか。ここ数年の村田のボクシングを熟知するスパーリングパートナー、パトリック・デイに話を聞き、現在の状態と勝機を分析してもらった。
●パトリック・デイ(WBC米大陸スーパーウェルター級王者)
1992年8月9日生まれ

 26歳
ニューヨーク州フリーポート出身
身長175cmのボクサータイプ。プロ戦績は17勝(6KO)3敗1分 。2017年5月20日に開催された村田諒太vsアッサン・エンダム(フランス) 戦前に初来日し、以降、村田の試合のたびにスパーリングパートナーを務めてきた。




ブラントとの再戦に向けて調整を行なう村田

——今回はどのくらい日本に滞在し、何ラウンドのスパーリングを行なったんですか?

「4月27日に来日し、5月18日まで東京に滞在しました。村田のトレーニングに約3週間帯同し、だいたい40ラウンドのスパーリングをこなしました」

——村田選手の状態をどう見ましたか?

「すばらしかったですよ。私が知っている中では最高の状態です。モチベーションが非常に高く、ハードな練習を積み重ねていました。単にハードワークを続けているだけではなく、スキルが向上しているのが目につきましたね。これまでの彼はやや単調で、動きが硬い傾向がありましたが、今回はリズムがあり、流れるような動きをしていました。その調子のよさに驚かされたほどです」

——具体的に、どのあたりがこれまでと違っていましたか?

「パワーに依存しなくなっていました。従来の村田は右の一発強打が魅力の選手。しかし今回手を合わせた村田は、多くのジャブを突き、スムーズに動き、ディフェンスに気を遣い、鮮やかなコンビネーションを繰り出していました。頭をよく振って足を動かすなど、まるで別人のようでしたね。ハイレベルな試合では、やはりワンパンチの威力だけでは勝てない時もありますが、その点を考慮して改善を進めたのでしょう」

——村田選手も33歳になり、「もうピークは過ぎた」という見方もありましたが、デイ選手はどう思いますか?

「そんな意見にはまったく同意できません。彼はまだ向上しています。確かに年齢は30を超えていますが、プロ転向が27歳でダメージの蓄積が少ない、いわば”ヤング33”です。向上に対する欲求さえ残っていれば、まだまだよくなる余地を残している選手だと思います」

——ブラント選手との第1戦の前に、村田選手は風邪をひいてしまい、満足のいく練習ができなかったという情報がありました。デイ選手も試合前に来日しながら、村田選手の状態が整わなかったためにスパーリング開始が遅れたという証言をしてくれましたね。その時と比べ、今回はよりコンディションがいいということですね。

「そのとおりです。第1戦前の村田は体調を崩し、ハードなトレーニングが積めず、力強さがありませんでした。十分なメニューをこなせなかったのだと思います。その時と比べ、今回の状態は申し分ないと言っていいでしょう。ただ、私は5月後半にはアメリカに戻ってきたので、その後のコンディションに関してはわかりませんが」

——あなたから見た王者ブラント選手の印象は?

「ブラントも非常に優れたボクサーであることは確かです。とてもハングリーで、適切な練習を積んでいる選手。それゆえに(村田との第1戦で)あれほどの手数を出すことが可能になったのでしょう。ただ、もともとの才能ではブラントは村田に劣ると思っています。村田は2012年のロンドン五輪金メダリストですからね。身長、パワーがあり、今回は先ほど話したとおりディフェンスも鍛えてきています」

——再戦の勝敗を分けるカギはどこにあると思いますか?

「村田がしっかり体をリカバリーさせて臨めるかどうかでしょう。見事なトレーニングを続け、すばらしいコンディションに仕上がっていましたから、あとは本番までに体をしっかり休められるか。それさえできれば、今回のリマッチでは村田に大きな勝機があると私は思っています」

——日本に滞在中、村田選手と交わした言葉の中で印象に残っているのはどんな話ですか?

「僕と村田は親しい友人同士になり、連絡を取ってきました。しかし、彼は自分の試合に関して話すのを好まない印象もあります。ボクシングをとても真剣に捉えていて、やるべきことをわかっている。ボクシングのことを誰よりも知り尽くしたミスター本田(本田明彦・帝拳ジム会長)が陣営にいて、アドバイスを受けることもできます。だから、他の人と試合について話す必要はない。僕とは日本のことや、帝拳ジムのこと、ブラントとの試合以外のことを話していましたね」

——最後に、試合の展開を予想してもらえますか?

「判定勝負になると思っています。ブラントもタフで、しっかり体を作ってくる選手なので、村田が彼をKOするのは難しいでしょう。ただ、今回の村田の出来であれば、116-112、あるいは117-111くらいのスコアで判定勝ちできると思っています。日本開催というのも、もちろん彼のアドバンテージになるでしょうね。(アメリカ東部の時間で)金曜日の朝、村田が再びチャンピオンになるのを楽しみにしています。王座を取り戻し、以前に話題になったゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との試合など、”ドリームプラン”を再び進めていってほしいですね」