綾部翔(あやべ・かける/DeNA)、根本薫(オリックス)、遠藤淳志(広島)と、2015年から3年続けて投手がプロ入…
綾部翔(あやべ・かける/DeNA)、根本薫(オリックス)、遠藤淳志(広島)と、2015年から3年続けて投手がプロ入りした霞ヶ浦高校(茨城)に、今夏もプロ注目の好投手がいる。
※根本は2018年より外野手登録
身長185センチの大型右腕・鈴木寛人(ひろと)だ。スカウトのなかには、すでに一軍登板を果たしている綾部や遠藤を上回る素材と評するなど、底知れぬ魅力に満ちている。

プロも注目する最速148キロの大型右腕、霞ヶ浦の鈴木寛人
これまで多くの好投手を育ててきた高橋祐二監督は「まじめな子。とくにこの冬は、ひとつひとつやるべきことをきっちりやっていました」と、鈴木の人間性を高く評価する。
技術的にも「スライダーが135キロ前後で、打者の手元で曲がります。フォークも130キロ前後でいいところに落ちます」と話すように、最速148キロのストレートに加え、実戦で使える変化球があることが大きな武器だという。
鈴木は小学2年で野球を始めた。父が身長175センチ、母が162センチと日本人の平均よりもやや高いほどだが、睡眠が成長の大きな源となった。
小学生時代は下校してすぐに寝るほどで、その昼寝を合わせたら1日に10時間は眠っていたという。中学に入っても7~8時間、現在も寮の消灯時間の23時から翌朝6時半の起床まで、最低でも7時間以上の睡眠を取っている。
肩やひじに大きな故障がなく、そこについては「痛いと言ったこともないほど」と高橋監督も鈴木の体の強さに舌を巻く。
中学時代は地元の筑西田宮ボーイズでプレー。全国大会出場こそなかったが、クセのないフォームが高橋監督の目に留まった。他校からも注目を集めていた鈴木だったが、霞ヶ浦の投手育成の実績や、ボーイズの先輩である飯村将太(現・桜美林大)から「練習メニューが充実している」との話を聞いて、入学を決めた。
鈴木は入学後からその練習メニューに真摯に取り組んできた。たとえば、30メートルの距離を取った投球練習では「球筋やボールの伸びを意識しています」と語り、70センチの細い棒を使ったシャドーピッチングでは「(股関節の使い方を意識することで)フォームが固まり、強く腕を振ることでボールにキレが出てきます」と、練習の意図を自らの言葉で説明できる。
また得意の変化球についても「スライダーは三振を狙うときとカウントを取るときで使い分け、フォークはベースの上に落とす意識で投げています」と、理路整然と語る姿が頼もしい。
自己分析に長けているがゆえに、現状で足りないもの、求められているものもしっかり認識している。それは「チームに勝利を呼び寄せる好投」だ。
1年秋の関東大会で、鈴木はそれまで県大会の登板すらなかったが、素質や直前の練習試合での好投を買われ、2試合に先発。だが、ともに結果を残すことができず、チームはセンバツ出場まであと一歩の8強で敗退した。
さらに翌年春には犠打を試みた際、ボールとバットの間に右手人さし指を挟み負傷。夏の大会までなんとか間に合わせ4試合にリリーフ登板したが、準決勝の土浦日大戦では2番手として登板するもダメ押しの一打を浴びて敗退。昨年秋も準決勝で藤代に2対3と惜敗したが、この時は同期のライバル・福浦太陽がエースナンバーをつけており、鈴木の出番はなかった。
それだけにこの冬はこれまでのトレーニングや走り込みに加え、「力みをなくすことを重点に置き、脱力してリリースの瞬間だけ力を入れるようにしました」(鈴木)とフォームを修正。それがうまくはまり、今年の春になって多くのスカウトが視察に訪れるまで成長を遂げた。
普通の高校生であれば舞い上がってもおかしくないが、この夏、鈴木が愚直に目指すのはチームの勝利のみ。
「注目されることはありがたいですが、チームが勝つためにやるべきことをしっかりやっていきたいです」
恵まれた体格と高い理解力。そしてなによりすばらしいボールのキレを武器に、今夏の茨城の主役を目指す。