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補強が思うように進まなかったチームに巻き返しの好機

サンダーはポール・ジョージの要求を受け入れ、クリッパーズとのトレードをまとめた。

もともと契約を1年残した状態で2017年にペイサーズからサンダーにやって来たジョージは、契約満了を待って地元ロサンゼルスのレイカーズに移籍すると見られていた。ところが昨夏、ジョージはどのチームと交渉することもなくサンダーと4年のマックス契約を結ぶ。そのことを発表したのはラッセル・ウェストブルックのホームパーティーの席。その後の取材で「ラスはハングリーで勝利に飢えている。僕も同じだ。この気持ちが僕らのデュオを特別なものにしている」と語っている。

それだけに、ジョージがカワイ・レナードの勧誘に乗ってクリッパーズへと移籍したのはサンダーにとって大きな衝撃だった。それはウェストブルックにとっても同じ。『ESPN』によればこのトレードが決まった後、ウェストブルックはサム・プレスティGMと自身のトレードも含めた今後について協議しているという。

『ミスター・トリプル・ダブル』ことウェストブルックは、NBAの勢力図を塗り替えるだけの力の持ち主。彼が移籍するとなれば、アンソニー・デイビス、カワイ・レナードに劣らない影響を及ぼすだろう。プレースタイルがセルフィッシュすぎるという見方もあるが、それはデュオを組んだジョージが明確に否定していたこと。「それが何であれ、ラスはチームが勝つために必要なことをする」と、ジョージはサンダーに所属した2年間を通じて繰り返し語っている。

ウェストブルックの移籍先として挙がるのはロケッツ、ピストンズ、ヒートといったところ。

ロケッツはエースのジェームズ・ハーデンとクリス・ポールに不仲説が浮上。そうでなくとも新シーズンは『ウォリアーズの壁』を乗り越える大きなチャンスで、ロスターをさらに強化しておきたい。逆に言えばクリッパーズやレイカーズの勢いに飲み込まれてしまう可能性も否定できず、このまま新シーズン開幕を迎えることには不安がある。

ピストンズはブレイク・グリフィンとデリック・ローズを擁するが、2人ともケガを抱えてエースの重責を担うには不安が残る。ウェストブルックを軸に、彼らベテランが支えるチームになれば、東カンファレンスで一気にジャンプアップできそうだ。ヒートは大物フリーエージェント選手の一人であるジミー・バトラーを獲得しており、ここにウェストブルックが加われば強烈なインパクトとなる。

大物フリーエージェントを取り逃し続けたニックスがウェストブルック獲得にチャレンジするかもしれないし、ジョン・ウォールに納得できていないウィザーズが動く可能性もある。この時期のNBAは何だって起こり得る。

サンダーへの愛着が誰よりも強いウェストブルックは、スタープレーヤーが自分一人であってもチームを勝たせると残留を決断するかもしれない。ただし、サンダーはポール・ジョージのトレードに合意した時点で、少なくともこの1、2年の優勝をあきらめたと受け止められても仕方がない。このトレードで大量の指名権を得たサンダーがチーム再編に舵を切れば、何年か後には将来性に満ちたチームの基盤を作ることができる。それでも、優勝を目指さないチームに4年1億7000万ドル(約180億円)の契約を残すウェストブルックは過ぎたタレントだし、彼自身もモチベーションを保てない。

サンダーはすでに一つの決断を下したと言える。次はウェストブルックの番だ。