トレーニングルームで、黙々とバーベルを持ち上げる男がいる。富田慎之介選手(青山学院大学)だ。浦和学院高時代から数々の大会に出場し、サブジュニア(18歳以下)の日本記録を打ち立ててきた。決して身体は大きくないが、凄まじいパワーを秘めており、名…

トレーニングルームで、黙々とバーベルを持ち上げる男がいる。富田慎之介選手(青山学院大学)だ。浦和学院高時代から数々の大会に出場し、サブジュニア(18歳以下)の日本記録を打ち立ててきた。決して身体は大きくないが、凄まじいパワーを秘めており、名門チームの大型ルーキーとして今後もさらなる活躍が期待される。

パワーリフティングとは、性別・体重・年齢でカテゴライズされた選手たちが、ラックにセットされたバーベルを肩に担いで屈伸する「スクワット」(トップ写真)、仰向けになりバーベルを胸につけて挙上する「ベンチプレス」、床に置かれたバーベルを引き上げる「デッドリフト」という順に試技を行っていく競技だ。大会では1種目につき3回の試技が認められ、3名の審判員のうち2名以上が認めた場合は成功となる。3種目それぞれの成功試技の最大重量を合計し競うが、同率で選手が並んだ場合は体重が軽い選手が勝利する。

※ベンチ台に仰向けになり、「ベンチプレス」の練習をする富田
※毎週土曜日に行われる部の全体練習で、「デッドリフト」に取り組む富田

パワーリフティングのうち特にデッドリフトについては、「駆け引きが面白い」と富田は語る。バーベルの重さはその場で申告することができ、対戦相手の重量を見てから調整することも可能だ。確実さを取るか、それとも賭けに出るか。単純なようだが、パワーリフティングは作戦次第で勝敗が大きく左右されるスポーツなのだ。

佐藤義宏監督は富田を「目標を自分で決めて、逆算して努力ができる選手」だと評価している。しかし、同時にそれは諸刃の剣でもあると感じている。自分を追い込み過ぎると、けがやスランプに陥ってしまうからだ。高校時代から残してきた実績に加え、休むことも意識しながら競技と向き合うことで、彼の競技人生は今後大きく飛躍することだろう。夢は、掴み取るだけのものじゃない。“持ち上げる”ことで手に入る夢もある。日本記録の次は世界記録。将来を見据えて目標の重みを増やしていく。

※大学アスリート1日密着動画「THE STARS」にて、富田選手を特集しています。
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富田慎之介(とみた・しんのすけ)
埼玉県出身。2001年2月19日生まれ。169センチ、85キロ。浦和学院高校を経て、現在は青山学院大学総合文化政策学部1年。早くから才能を開花させ、数々の83kg級サブジュニア日本記録を樹立してきた。大学入学後わずか1ヶ月でサブジュニア・ジュニア全日本パワーリフティング選手権サブジュニアの部男子83kg級を制しており、今後も世界を舞台に活躍が期待されている。