「これほどまでに良い試合をしながら負けてしまうなんて。本当に受け入れがたいよ」 コパ・アメリカ2019の準決勝で宿敵…
「これほどまでに良い試合をしながら負けてしまうなんて。本当に受け入れがたいよ」
コパ・アメリカ2019の準決勝で宿敵ブラジルに0-2で敗れた後、アルゼンチンの主将リオネル・メッシはそう言った。たしかにこの一戦で彼らは、リオネル・スカローニ監督体制で最高のパフォーマンスを披露した。いや、ここ4、5年でもベストの出来だったと言ってもいいだろう。

「アルゼンチンには明るい未来があることが示された」とメッシ photo by Watanabe Koji
前回のコラムでも書いたように、スカローニ監督はいわば、消去法によって選ばれた指揮官だ。ホルヘ・サンパオリ前監督のアシスタントを務めていた彼は、他に代表監督を引き受けようとする有力者がいなかったため、暫定監督に昇格。その後、正式な監督に任命されたが、この大会は彼にとってテストのようなものだった。つまり、スカローニが今後もこの座にとどまれるかどうかは、ブラジルで開催されているコパ・アメリカ2019での内容と成績にかかっていたわけだ。
結果は、なんとも判じかねるものとなった。コロンビアとの開幕戦はひどい内容の0-2だったが、そこから少しずつ改良を重ねていき、パラグアイと1-1のドロー、カタールには2-0の勝利。準々決勝のベネズエラ戦も2-0でモノにし、この日のブラジル戦を迎えた。つまり、チームは大会のなかで成長を遂げていたのだ。
ブラジル戦では、今大会で初めて2試合連続で同じ先発を並べた。前線にラウタロ・マルティネスとセルヒオ・アグエロ、メッシ、中盤に左からマルコス・アクーニャ、レアンドロ・パレデス、ロドリゴ・デ・パウル、守備陣は左からニコラス・タグリアフィコ、ニコラス・オタメンディ、ヘルマン・ペッセーラ、フアン・フォイ、GKにフランコ・アルマーニを配置。メッシは頻繁に中盤に下りて、ゲームメイクに加わった。
南米の両雄による熾烈な一戦は、序盤から一進一退の攻防が展開された。戦前の大方の予想では、開催国ブラジルが有利とされていたが、アルゼンチンも真っ向から勝負を挑み、惜しいシーンを創出。メッシと中盤の3人でボールを動かし、今大会で大きく名を挙げた21歳のマルティネスが果敢に勝負を挑む。アンカーを任された25歳のパレデスは要所を締めながら、強烈な惜しいミドルで可能性を感じさせた。
しかし19分に、ダニエウ・アウベスの洒脱なパスが右のロベルト・フィルミーノに渡り、そこからのグラウンダーのクロスをガブリエル・ジェズスが決めて、ブラジルが先制。逆にその10分後には、メッシのFKにアグエロが頭で合わせたが、ボールはクロスバーを叩いた。その5分後にも、メッシからの縦パスを受けたアグエロがシュートを放ったものの、DFのブロックに遭っている。
メッシは後半に入ると、自ら左足のボレーを打ったが、今度はポストに阻まれてしまった。またボックス付近からのFKは左のトップコーナーへ飛んだものの、GKアリソン・ベッカーにキャッチされた。そして71分にカウンターを受けて、ジェズスのお膳立てからフィルミーノに決められ、ブラジルに追加点を許してしまった。
「彼ら(ブラジル)が我々より優れていたわけではない」とメッシは敗戦後に言った。
「彼(審判)は相手寄りだった。微妙な場面では、必ずと言っていいほど、ブラジルに有利な判定が下された。何も言い訳をしているわけではない。この大会では数々のくだらないシーンのために、何度も笛が吹かれ、VARも採用されたというのに、今日の試合では必要な時にVARでチェックされることはなかった」
この意見に賛同するかどうかはともかく、アルゼンチンは最終的にチームとしての体を成すことはできた。それでも、またしてもタイトルには手が届かず、これで無冠は26年目だ。スカローニ監督は試合後の会見で、「後任に誰がなろうとも、この選手たちはチームにすべてを捧げる。それだけは知っておいてほしい」と、あたかも自身の続投の線が消えたような発言をしている。そしてメッシと同じように、「我々はブラジルよりも優れていた。決勝へ行くべきチームはアルゼンチンだった」と話した。
経験不足を露呈し、采配のミスも重ねた指揮官だが、パブロ・アイマールら有能なアシスタントの力もあって、アルゼンチンは短期間にまとまった。マルティネスやパレデス、タグリアフィコ、フォイら、今後の代表で主力を担うべき20代の選手たちも存在感を示した。散発的に輝いたパウロ・ディバラの奮起も期待できそうだ。サッカー協会がしっかり機能するようになるには、もう少し時間がかかりそうだが、少なくともピッチ上の未来には小さな光が見え始めている。
「アルゼンチンには明るい未来があることが示された」とメッシは前を向いた。「アルゼンチンには、新世代のすばらしい選手たちがいる。僕もまだまだ続けて、彼らと共に何かを手にしたい。自分にできることがあれば、代表のために尽くしたいと思う」
メッシが代表に関する事柄で、これほど明確な姿勢を打ち出すのは珍しい。試合前の国家も歌うようになった。バルセロナですべてを手にしてきた世界一のスーパースターは、アルゼンチン代表に重要なタイトルをもたらすことをキャリアの目標に掲げている。その気持ちを新たにしたのであれば、主要大会では15年ぶりとなる宿敵からの敗北の痛みも、少しは和らぐだろうか。
まずは来年、アルゼンチンとコロンビアで共催されるコパ・アメリカ2020(この年からW杯の2年後の4年周期開催になる)に期待したい。