試合終了間際に降りはじめた雨。 ホイッスルが鳴った瞬間の選手の表情は様々だった。3日に行われた天皇杯JFA全日本サッカー…
試合終了間際に降りはじめた雨。
ホイッスルが鳴った瞬間の選手の表情は様々だった。
3日に行われた天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会2回戦、明治大学は昨年と一昨年のJ1覇者川崎フロンターレと対戦した。明大は今季から遂行している3-2-3-2の布陣、部内での三原則と言われている球際、運動量、切り替えを大事に臆することなく真っ向からぶつかっていった。
GK加藤大智の再三のファインセーブ、後半終了間際には須貝英大がこの日最大の決定機を作るもののゴールネットを揺らすことはできず、前半15分に許したオウンゴールが決勝点となり1-0で敗れた。

この試合に向けて明大イレブンは「王者の壁を扉に変えろ」を合言葉にそれぞれが自らの人生を「掴みにいく」覚悟で等々力陸上競技場に乗り込んでいた。チームを指揮する栗田大輔監督はこの大一番に向け、「もし試合に勝つことができれば次の日から人生が変わるかもしれない。誰が見ているか分からない、これまでの全てを懸けても良いんじゃないか」と選手たちに意識づけてきた。

その言葉通り人生を懸けて戦ったからこそ、生まれた感情があった。
チームを引っ張ってきたキャプテンの佐藤亮(4年)は、FWとして結果で貢献できなかった悔しさ、もっとこうすれば良かったという後悔を感じる一方、今までとは違う気持ちがこみあげてきたという。
「もう1回このピッチに帰ってきたい」
4年生で就職活動をしていた中、すでに企業からの内定を得ている。今まではこのまま就職をしてもサッカーでいっても後悔はしないと思っていた、思っていたはずだった。しかし川崎との対戦を経て「このままじゃ終われない。J1のチームに負けてサッカー界を退くのは男として情けない。改めてプロの世界に飛び込みたい」と自らの夢を再確認したのだ。

4年生になって皆で掲げた目標は「天皇杯に出場してJ1を倒す」だった。目標としていたジャイアントキリングは叶わなかったものの佐藤にとって数年後、人生におけるターニングポイントはあの時の川崎戦だったという日が来るのかもしれない。
覚悟を持って戦った先に見えたもの。
大学年代の選手たちにとって天皇杯という舞台は、ただの経験だけではない。自らの現在地を知るとともに、新たな夢を教えてくれる場所。扉に変えた選手たちの表情は眩しいほど清々しかった。
